汗をかく動物は、じつはそんなに多くありません。
しかも暑いときや運動したときに大量に汗をかくのは、ヒトとウマくらいのものなのだそうです。
ヒトは何のために、どのようにして汗をカラダに備えたのでしょうか?
汗をコントロールする仕組みとともに、ヒトの進化と切リ離すことができない、汗の機能について解説していきます。
汗をかく機能がカラダに備わったのは、サルからヒトに進化する過程でのこと。
地球環境のサバンナ化によって森から草原に出てきたヒトの祖先は、食べ物を求めて広い大地を長時間歩いたり、狩りをして走り回ったりするようになりました。
運動量が増えると、体温はどんどん上がっていきますが、あまりに熱くなると、特に熱に弱い脳をはじめ、カラダの組織がもちません。
そこで、ほかの動物よりも効率的に熱を下げる仕組みが必要になったのです。
サルなど動物の全身をおおう体毛には、保温効果や細菌・紫外線など外部の刺激から肌を守る役目がありますが、体温が上がりすぎる危険が常につきまといます。
ヒトにとって体毛はむしろ邪魔なモノとなって退化し、熱を外に逃がす効果にすぐれた「発汗」という仕組みが発達したのです。
ヒトは、トレーニングを積めば、夏の暑い日でも2~3時間のマラソンを走ることができます。
しかし、他の動物、たとえば犬などは、真夏にマラソンと同じスピードで走ると、15分くらいしかもちません。
ヒトが長時間運動できる能力を身につけたのは、発汗という体温調節機能が備わったおかげといってもいいでしょう。
外の気温が上昇したときや運動をしたときは、体温や肌表面の温度が上がります。
体温調節を担っているのは、脳の視床下部という部位。
これが体温上昇の情報をキャッチすると、汗腺に「汗を出して!」という命令を出します。
これ以外にも、汗により血液が濃くなる(血液の浸透圧が上昇する)と汗が抑制されますし、
運動をしたときは、筋肉の中で疲労を感知するセンサーが働いて、これも発汗調節に関わります。
緊張や興奮といった精神的なものがきっかけとなって、汗が出ることがあります。
この場合は、おもに足のうらやワキでどっと汗が出るのが特徴です。
また、すでに汗をかいている場合、精神的な要因によってさらに全身の汗が増えることも。
いずれの汗も脳が指令を出すため、自分の意志で汗をコントロールすることはできません。