要介護になる3大原因!認知症、脳卒中、転倒・骨折…親が70歳を超えたら備えたいアレコレ

2023.12.22

【監修・執筆】
高齢者の介護と暮らしアドバイザー/
浅井 郁子さん

人生100年時代を迎え、誰もが介護する側にも介護される側にもなる可能性があります。介護を上手に乗り切るには、さまざまな側面から介護について考えることが大切です。いずれ始まるかもしれない親の介護では、自分の仕事と生活を守りながら、親も守りたい。そんな介護をするために知っておきたいこと、備えたいことについてお話しましょう。

親の介護は突然始まるとは限らない。

日本の高齢者のうち、要支援または要介護認定を受けている割合は、年齢層別に見ると70代までは10%ほどですが、80代に入ると増え始め、85歳を超えたら約半数になります。では、介護が必要になる原因は何が多いのでしょう。
厚生労働省の「介護が必要となった主な原因」の最新版(2022年)によると、要支援・要介護の総数で第1位は認知症です。第2位は脳血管疾患(脳卒中)、第3位は骨折・転倒と続きます。

介護が必要となった主な原因 上位3位(2022年)

介護が必要となった主な原因 上位3位(2022年)

介護が必要となった主な原因 上位3位(2022年)

出典:厚生労働省2022年国民生活基礎調査より

「親の介護は突然始まる」とよく言われます。ある日突然、病院から連絡が入って親の入院を知らされ、「退院後は介護が必要です」と告げられたら介護が突然始まった!と思うでしょう。でも、介護の原因1位の認知症はどうでしょうか。認知症は進行性の病気です。通常は徐々に症状が悪化していきます。その間に何も対策を講じなければ、ぎりぎりの状態になってから慌ててしまい、介護が突然始まる!という印象になるでしょう。加齢とともに機能が低下していく関節疾患や高齢による衰弱の場合も同様です。

介護とは、その人ができていたことが、さまざまな原因によってできなくなってきたときに、今まで通りの暮らしを維持するために、できることは本人にしてもらいながら、できないことを手助けすることです。と考えると、家族は“親の変化に気づいたときから介護は始まっている”と捉え、少しずつ手助けを工夫する。そのほうが慌てずに済むと思います。多くの高齢の親はいきなり介護状態になるわけではないのです。

住み慣れた自宅が実は危ない?!自宅の安全性をチェックしよう

介護が必要になった原因3位の骨折・転倒は年々増えています。10年以上前は5位でしたが昨年ついに3位になりました。
高齢者の転倒は外出時に起こりやすいというイメージをもたれる人は多いかもしれません。しかし、多くの高齢者は住み慣れた自宅内で転んでいます。
外出中は気をつけて歩きますが、住み慣れた家の中ではあまり意識せず、長年の感覚で足を持ち上げています。ある日、畳部屋に上がる小さな段差で足が持ち上がっていないことに気づかず、躓いてしまうのです。

厚生労働省の調査では、高齢者の不慮の事故のほとんどは自宅内で起こっています。事故件数が多い順に、転倒・転落、誤嚥等による窒息、不慮の溺死・溺水となっていて、いずれも運動機能の低下によるものと考えていいでしょう。
親が住み慣れた家に住み続けられるよう自宅の安全性をチェックしましょう。

  • 電源コードに引っかからない工夫をする
  • 床に新聞紙などを置かないように片づける
  • 夜中の動線で暗い足元に灯りを取り付ける
  • 段差のあるところや階段には手すりのとりつけを検討する
  • 浴室の床や階段に滑りやすい箇所がないか確認する

離れて暮らす家族が準備しておきたい緊急連絡リスト

親と離れて暮らしていると、何かあった時にすぐに駆け付けられない心配があると思います。安否確認のお願いや、いざというときに救急車の手配をしてもらえる「緊急連絡先」を準備しておきましょう。
まず、緊急連絡先になる人がいるかどうかを親に確認しましょう。普段親しくしている近所の人に頼めると心強いです。

親が介護や福祉のサービスを利用している場合は、ケアマネジャーや福祉サービスの担当者は連絡先になりますが、夜間や休日には地域にいないため連絡が取れないこともあります。そんなときのために、地域で高齢者見守りをしている民生委員の存在を親に確認してみましょう。もしかしたら普段から見守り訪問をしてくれているかもしれません。

次に、親と相談しながら「緊急連絡先リスト」を作成します。家族や親族をはじめ、親しい隣近所の人、友人、ケアマネジャー、管轄の地域包括支援センター、利用中の介護や福祉サービスの担当者、かかりつけ医、かかりつけ薬局、管轄の警察署、定期通院中の病院、新聞・生協などの配達利用中のサービス事業者、行きつけの店などを記入しておくと便利です。既に親が同様のものを作成しているかもしれません。コピーして同じリストを持っておきましょう。

特に緊急時にお願いしたい連絡先には、離れて暮らす家族の存在を伝えて、緊急時に連絡してもらえるようにこちらの連絡先を教えておくと安心です。 なお、各市区町村には「救急医療情報キット」または「緊急連絡カード」というものがあります。駆け付けた救急車の隊員がそこに書かれている連絡先や医療情報を活用するものです。作成は任意ですが、作っておくことをおすすめします。

親の“今”を知るために、親の情報をまとめておく

“親の変化に気づいたときから介護は始まっている”と先ほど書きましたが、そのためには現在の親のことを知ることが大切です。
知りたい内容は大きく分けて二つ。一つは親が現在どんな生活をしているかを知ることです。健康状態、食生活、定期的に外出しているか、趣味や生きがい、交友関係、通院中の医療機関、地域とのつながりなどについて、困っていることはないかと気にかけながら会話しましょう。

もう一つは親の個人情報です。健康保険証や介護保険証等公的証明書の一覧、病歴(既往歴)やおくすり情報、親の経歴、食べ物の好き嫌い、苦手なことなどで、入院時や介護サービス利用時にも必要な情報です。親が元気なうちに医療情報あたりから少しずつ教えてもらいましょう。質問攻めにならないように注意してください。 親の個人情報を共有しておくことは、親にとっても家族にとっても最上位の“備えあれば患いなし”になると思います。

介活コラム

親と一緒に。
フレイル予防は50代から?!

80代後半の高齢者の半数以上が介護認定を受けていますが、そのうち介護度が高い要介護3以上の人は31%です。一方、30%の人は要支援です。家事支援や運動教室などの介護予防サービスを利用しながら、自立した生活を続けているのだと思います。

介護状態になりそうな前段階の虚弱な状態を「フレイル」と言います。栄養や体力を改善するフレイル予防に取り組むことで、要介護状態にならない生活を長く続けられる可能性が高くなります。

50代の子世代の人の中にも筋力の低下を感じ始めている人は少なくないでしょう。親の介護は“将来の自分事”。親子でフレイル予防に取り組みながらコミュニケーションを深める方法はいかがでしょう。

【監修・執筆 プロフィール】浅井 郁子さん

高齢者の介護と暮らしアドバイザー、介護・福祉系ライター。40代後半に実父の介護が始まり一旦離職。実父の看取り後はライターに復帰し、2021年 「介護する家族のための介護手帳 ケアダイアリー」発売。介護保険制度を扱う書籍の編集協力の他、新聞、雑誌、Webに介護・福祉関連の記事を幅広く執筆している。著書に『突然の介護で困らない!親の介護がすべてわかる本』。ホームヘルパー2級課程修了、高齢者住まいアドバイザー、民生委員。

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