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お悩み相談室
投稿日:2024年8月9日
40代後半になってから、くしゃみをしたときなどに、時々、尿もれをするようになりました。毎日というわけではないのですが、外出のときは不安で憂うつです。尿もれをなくすことはできますか?(40代女性)
<回答した専門医>
女性泌尿器科医師 佐藤亜耶先生
40代後半というと、多くの女性が更年期に突入する時期。更年期は、女性ホルモンが急激に減少するため、体にさまざまな変化が現れやすくなります。その1つが、骨盤底筋のゆるみです。骨盤底筋は、膀胱・子宮・直腸といった内臓を下から支え、尿道や肛門を締めたりゆるめたりする筋肉です。骨盤底筋がゆるむと、くしゃみなどで腹圧がかかった拍子に、尿もれが起こりやすくなります。このような尿もれを「腹圧性尿失禁」といいます。
また、女性ホルモンが低下することで、尿道の機能が衰えることも原因のひとつです。お腹に軽く力が加わっただけで、尿道が開きやすくなり尿もれを起こしてしまうのです。
腹圧性尿失禁では、肥満も尿もれの要因になります。更年期は代謝が落ちるので、太りやすい時期。腹部の脂肪が増えると、その重みで骨盤底筋に大きな負荷がかかり、ますます骨盤底筋がゆるんでしまうといった悪循環になりやすいのです。「体重が増えたら、急に尿もれするようになった」という女性は少なくありません。
ゆるんだ骨盤底筋は、骨盤底筋トレーニングで鍛え直すことができます。やり方は、骨盤底筋を意識しながら、腟と肛門を「締める」「ゆるめる」を繰り返すというもの。コツをつかんで正しくトレーニングを続ければ、1か月程度で効果を実感できる人もいます。ただし、効果を期待するのであれば、毎日の継続が大切です。
体格指数BMI(ボディマス指数※)が25以上の人は、肥満が骨盤底筋のゆるみを助長している可能性があります。減量のために食事の質・量を見直すとともに、筋肉を維持する適度な運動も心がけましょう。また、自律神経を整えることで代謝が促され、減量につながることもあるので、良質な睡眠をとり、ストレスをためないことも大切です。 利尿作用のあるアルコールやカフェインのとりすぎにも注意しましょう。
尿もれが気になって、外出が憂うつになるのであれば、尿もれ・吸水ケア専用品を試してみてはどうでしょうか。吸水パッド(吸水ライナー・吸水ナプキン)、吸水ショーツといった尿もれ・吸水ケア専用品は、尿もれの程度やシーンに応じて選べるように、さまざまな種類が揃っています。
生理用ナプキンで代用している人もいるようですが、それはおすすめできません。経血と尿では成分、粘度などの性質がまったく違い、においの種類も異なるからです。適切な吸水量の専用品を選び、吸水したらこまめに交換しましょう。
尿もれ症状が深刻で、セルフケアでも改善しない場合は、医療機関の受診がおすすめです。尿のトラブルに関する診療は、泌尿器科になります。最近は、女性専用の泌尿器科(女性泌尿器科)や、泌尿器科と婦人科の境界領域を診療するウロギネ外来などもあります。また、更年期症状が疑われる場合は、女性ヘルスケアに力を入れている婦人科を受診するのもいいでしょう。
女性泌尿器科医師
佐藤 亜耶 先生
自由が丘ウロケアクリニック院長
自由が丘ウロケアクリニック院長。日本泌尿器科学会認定専門医、医学博士。日本大学医学部卒業後、研修医を経て同大学泌尿器科に入局。以降、関連病院で診療経験を積み、2019年に女性泌尿器科・小児泌尿器科に特化した自由が丘ウロケアクリニック開院。日本泌尿器科学会、小児泌尿器科学会、女性骨盤底医学学会、日本夜尿症学会所属。女性と子供に特化した専門クリニックには、遠方からも相談に来られる患者さんが多い。