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さらピュア お悩み相談室
投稿日:2024年8月9日
排尿しても尿を出しきっていない感覚があり、下腹部がムズムズします。さっきトイレに行ったばかりなのに、またすぐ行きたくなります。でも、おしっこは少ししか出ません。これって頻尿なのでしょうか?何かよい解消法はありますか? (40代女性)
<回答した専門医>
女性泌尿器科医師 佐藤亜耶先生
ムズムズしてトイレにすぐ行きたくなる、排尿しても残尿感がある、というのは頻尿症状です。とはいえ、考えられる原因はいろいろ。まずは、その症状が最近急に始まったのか?それとも若いころからずっと繰り返しているのか?に注目してみましょう。
頻尿症状が急に出てきた場合は、大腸菌などの細菌感染によるもののことが多いです。排尿時のふき方(おさえるだけ!)や温水洗浄便座で洗いすぎるなどが原因になるので注意を。
40~50代の更年期世代であれば、GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)の可能性も。女性ホルモンが減少して腟が乾燥・萎縮すると、陰部のムズムズ感や不快感が出やすくなり、頻尿につながることもあります。
一方、若いころからずっと頻尿だという場合は、習慣でトイレが近くなっているのかもしれません。子どものころ親に、「今のうちにトイレに行っておきなさい」などと言われていませんでしたか? “とりあえずトイレ行っておこう”という習慣が続くと、膀胱に溜められる尿の量が減り、頻尿になってしまうことがあります。
ところで、頻尿で受診した患者さんから、「私、過活動膀胱ですよね?」と聞かれることもありますが、過活動膀胱が当てはまるのは「トイレに行きたい!モレちゃう!」といった尿意切迫感がある人。尿が十分に溜まっていないのに膀胱が勝手に収縮してしまうのです。その場合は、薬を使用しながらの治療になることが多いです。残尿感やムズムズするといった症状だけなら、過活動膀胱の可能性は低いと思われます。
膀胱炎は、細菌が尿道から膀胱に入り、炎症が起きる病気です。女性は尿道が短いので、膀胱炎になりやすく、過労やストレスなどによる免疫力の低下などがきっかけになり、何度も繰り返す人もいます。軽症のうちは頻尿症状だけですが、さらに症状が重くなると、排尿時に痛みが出たり、尿が濁ったり血尿が出たりすることもあります。
ごく軽症のうちは市販の漢方薬(五淋散、腎仙散、猪苓湯など)で症状が改善することもありますが、確実に治すには、泌尿器科を受診しましょう。抗生剤を服用すれば、3日~1週間程度で治すことができます。私のクリニックでは、抗生剤と共に漢方薬を処方することもあります。抗生剤で細菌を殺しても、膀胱粘膜に炎症が残っていると不快感が続いてしまうこともあるからです。
また、患者さんには、「細菌を洗い流すために、お水をどんどん飲んでください」とも言っています。頻尿だと、水分摂取を控えてしまいがちですが、それは逆効果。しっかり水分を摂るようにしましょう。
加齢とともに腟のうるおいが失われて乾燥すると、腟が萎縮し、不快感を覚えることがあります。その上、デリケートゾーンの自浄作用が低下するので、細菌の繁殖や炎症が起こりやすくなります。こうしたことから、陰部の不快感が原因で頻尿になる人も。更年期世代である40代、50代で頻尿になった人はGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)も疑ってみましょう。
対策としては、ムズムズするからといって陰部を石けんなどでゴシゴシ洗わないこと。これだと、細菌から守ってくれる善玉菌まで洗い流してしまうし、ますます乾燥してしまいます。陰部は弱酸性の専用ソープや専用オイルでやさしく洗って。何よりも大事なのは、保湿をしっかりすることです。洗った後は専用のローションやオイルでしっかり保湿を。
保湿の際にマッサージも行うと、より効果的です。マッサージは、清潔な指で保湿剤を塗り込みながら、腟まわりをほぐしなでるように行います。こうすることで、保湿と共に血行を促すことができ、うるおいとハリがよみがえります。
デリケートゾーン専用品には、便利な優しい泡タイプの洗浄料(弱酸性)もあります。
GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)とは閉経関連尿路生殖器症候群のこと。女性ホルモンが著しく減少する更年期に主にデリケートゾーンに現れる症状で、慢性かつ進行性の疾患です。うるおいホルモンともいえる女性ホルモンのエストロゲンが減少すると、デリケートゾーンは乾燥と萎縮が起こりやすくなります。その上、おりものが減ることで自浄作用も弱まるので、細菌の繁殖や炎症を起こしやすい状態になるのです。こうした身体の変化とそれに伴う不快症状が、GSMです。「40代以降の女性の約半数がGSMを発症している」という調査報告※も。萎縮性腟炎(老人性腟炎)と診断される場合もあります。
「とりあえずトイレ行っておこう」と早め早めにトイレにいく習慣がついてしまうと、溜められる尿量がだんだん少なくなり、頻尿を悪化させてしまいます。トイレに行っても少ししか尿が出ないのは、そのためです。こうした患者さんには「トイレに行くのを、ちょっと我慢してください」と声を掛けています。
とくに寒い季節は、体が冷えてトイレに行きたい感覚になりやすいのですが、ある程度、尿がたまってからトイレに行くようにしましょう。どうしてもトイレが気になってしまう…という人は、「2時間おきに行く」など時間を決めてみるのもおすすめです。
泌尿器科で行う治療法には、「膀胱訓練(膀胱トレーニング)」と呼ばれるものもあります。その名の通り、尿にためられる量を増やすための訓練で、患者さんに排尿日誌をつけてもらいながら、医師が指導・治療していくこともあります。100円ショップなどで売っている調理用計量カップを使えば、どれくらい尿が溜まっているのか自分で簡単に計れます。生活に支障が出るほど頻尿で悩んでいる方は、泌尿器科でしっかり治療を受けることをおすすめします。
女性泌尿器科医師
佐藤 亜耶 先生
自由が丘ウロケアクリニック院長
自由が丘ウロケアクリニック院長。日本泌尿器科学会認定専門医、医学博士。日本大学医学部卒業後、研修医を経て同大学泌尿器科に入局。以降、関連病院で診療経験を積み、2019年に女性泌尿器科・小児泌尿器科に特化した自由が丘ウロケアクリニック開院。日本泌尿器科学会、小児泌尿器科学会、女性骨盤底医学学会、日本夜尿症学会所属。女性と子供に特化した専門クリニックには、遠方からも相談に来られる患者さんが多い。