みなさんは、「子宮頸(けい)がん」をご存知ですか? 10代、20代女性の間で、今とても発生率が高まっているがんの一種ですが、唯一予防ができるがんでもあります。ところが、世界の中でも日本人女性の子宮頸がんに対する危機感はとっても低いのです。さらに、子宮頸がんの発生率が高まる18歳〜26歳の女性を対象としたアンケート調査によると、アメリカでは72%の人が検診を受けているのに、日本で受診したことがある人はたったの9%。この数字に、ドキッとした人も多いのではないでしょうか。
「私はきっと大丈夫……」なんて思わずに、まずは全ての女性たちに「子宮頸がん」についてよく知ってほしい。そんな想いからロリエは、ジュノ ウィミンズ・ウェルネス銀座産院 銀座健康院 院長 対馬ルリ子先生を講師にお招きし、子宮頸がんをはじめとした女性特有の病気やその予防法についてのセミナーを開催しました。
参加してくれたのは、「ハレ女委員会」のみなさん。彼女たちは、「社会の中で『自分がキラキラできる場所』を持つステキな女性」=『ハレ女』を目指して活動中の都内大学に通う女子大生です。さまざまな経験を通じて自分たちの可能性を広げるべく、多方面で活動し、その様子は女性ファッション誌『JJ』にも連載されています。
「いつもおしゃれに、毎日を楽しい“ハレ”の日にしたい」と心がけている彼女たちは、対馬先生の話に真剣に聞き入っていました。
<資料の出典元>
ティール&ホワイトリボンプロジェクト
2008年子宮頸がん予防の会 記者発表資料
女性のからだは初経を迎えた後、18~45歳くらいまで、いつでも子どもを産める準備が整った性成熟期に入り、やがて、更年期、老年期へと移っていきます。この「ライフサイクル」はいつの時代も変わりませんが、「ライフスタイル」は時代とともにすっかり変化しました。充分な栄養がとれ、衛生状態がよくなったことで初経を迎える年齢が早くなり、さらに、男性と同様に仕事を持って、社会で活躍するようになったために出産回数がグンと減少。その結果、月経の回数が増加し、女性特有の病気にかかる人がとても増えてしまったのです。出産回数が少なく、月経回数が多いと、月経痛や月経前症候群といった女性特有のからだのトラブルが深刻化するだけでなく、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮体がん、乳がんなどのリスクが高まります。また、性行動を開始すると、子宮頸がん発症の可能性が!そして、このリスクが急激に高まるといわれているのが、なんと20歳前後。「まだ若いから」なんて安心してはいられないのです。
女性ホルモンは卵巣で作られます。男性と大きく違うのは、女性ホルモンには排卵までの期間に増加する「エストロゲン」と、排卵時から増加する「プロゲステロン」の2種類があるということ。これらが交替で大きく増減するのが特徴です。だからこそ、何らかの異常が起こったとしても、突然大病に陥ることのないよう女性のからだは強く守られています。しかし、女性ホルモンはストレスや体重変化に影響されやすく、働きが不安定になるとからだの機能が低下。自律神経失調症状などが起こりやすくなります。女性にはからだ・こころ・生活の複合的な失調が多いのです。現代では多くの女性が男性と変わらずに社会で活躍し、ゆえに抱えるストレスも少なくありません。そのため、不調に悩む女性たちも増えているはず……。
そこで、有効なのがピル。服用することで、この2種類の女性ホルモンを安定供給し、排卵を休ませるため、避妊効果はもちろんのこと、月経前症候群や月経痛の緩和、子宮内膜症の治療や卵巣がん、子宮体がんの予防効果も得られます。充分な知識がないために、ピルの服用や婦人科検診に抵抗があるという人が多いと思いますが、実はピルこそ、女性のQOL(Quarity Of Life)の改善にとても有効なので、一人で悩む前に、ぜひ専門医へご相談されることをおすすめします。
女性のライフスタイルが変化したことで、女性の乳がん、子宮がん(子宮頸がんと子宮体がん)の発病率は急激に増えています。中でも、若年層に増えているのが、子宮の入口(膣部)に発生する「子宮頸がん」で、セックスによるHPV(ヒトパピローマウィルス)というウィルスの持続的感染により発生します。このHPVはどこにでもいる、ごくありふれたウィルス。セックスの経験が一度でもあれば、だれでも感染する可能性があり、女性の約80%は感染を経験するといわれています。人に感染する型は100種類以上ありますが、その中で発がん性のものは約15種類。さらに、子宮頸がんの原因として検出頻度が高いものは16型、18型と呼ばれる2種類です。
実は多くの女性が発がん性のあるHPVに感染するものの、発がん性HPVの感染からがんになるまでは約10年かかるので、ほとんどの場合はその人の免疫力によって自然治癒されます。また、自然治癒ができなくても、がん細胞になる前段階の「前がん状態」で発見できれば、15分程度の簡単な手術で除去が可能。子宮を残し、妊娠や出産に影響なく治療が行えます。
●子宮頚部(膣部)に発生 ●HPV(ヒトパピローマウィルス)16型・18型による ●前がん=異型上皮 9割が自然治癒 ●細胞診(Pap. Smear)で容易に発見される ●日本では20歳から公費検診あり
国立がんセンター がん対策情報センター 人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部)より作成
しかし、ほとんどの20代女性にとって、こんなに若い自分が「がん」にかかるなんて思いもよらないこと。そのため残念なことに、進行がんになってしまってから発覚するケースがとても多いのです。しかも、子宮頸がんは進行がんに進むまではずっと無症状。不正出血やおりもの異常などの症状が出たら、それはすでに進行がんになっているサインかもしれません。もし進行がんになってしまったら、大きな手術は避けられません。では、そんなことにならないためにはどうすればよいのでしょう。
実はこの子宮頸がんには大きな特徴があります。それは、「唯一予防できるがん」だということです。予防の手段は、定期がん検診を受けること。
とにかく子宮頸がんは早期予防、早期発見が大切です。自分の人生を自分らしく生きるため、自分自身で大切なからだを守ってくださいね。
対馬ルリ子先生
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 院長 産婦人科医 医学博士
1984年、弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室入局、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年にウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック(現:対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座)を開院。2003年には女性の心とからだ、社会とのかかわりを総合的に捉え、健康維持を助ける医療(女性外来)をすすめる会「女性医療ネットワーク」を設立、全国600名の女性医師・女性医療者と連携して活動している。女性の生涯にわたる健康のためにさまざまな情報提供、啓発活動を行っており、著書に『キレイな〔からだ・心・肌〕女性ホルモン塾』(小学館、共著)、『「女性検診」がよくわかる本』(小学館)などがある。NHK「きょうの健康」「すくすく子育て」、日本テレビ「世界一受けたい授業」、テレビ朝日「徹子の部屋」、LaLaTV「LaLa女性外来」、BS トゥエルビ「からだ*サラダ」などに出演。東京大学大学院講師。