赤ちゃんとママ・パパのための情報
医学博士、日本小児科学会認定医、子どもの心相談医。1987年筑波大学卒。1994年筑波大学大学院博士課程修了筑波大附属病院、(株)日立製作所水戸総合病院、茨城県立こども病院で研修。1996年4月より現職。
頭蓋骨は、前頭骨、頭頂骨、後頭骨などいくつかの骨が組み合わさって形をなしていて、大人ではこれらの骨がしっかりと結合しています。ところが、赤ちゃんの場合、骨と骨の間に骨化していない結合組織の部分(すき間)があります。これが、お母さんのおっしゃる「頭の軟らかいところ」です。
いちばん大きなすき間は、おでこの上の前頭部中央にあり「大泉門(だいせんもん)」と呼ばれます。ひし形をしていて触るとプヨプヨとしているのがわかるでしょう。そのほかにも何カ所かあり、これらのすき間は、出産時にお母さんの産道を通るとき、頭が圧迫されて変形するゆがみを吸収する役割を果たすと考えられています。また、どんどん大きくなる脳の成長を妨げないためにも、骨と骨の間にゆとりが必要なのですね。
これらのすき間は月齢があがるにつれて自然に閉じ、いちばん大きな「大泉門」も1歳半から2歳ごろまでには閉じて、手で触れられなくなります。
ところで、骨にすき間があるといっても脳は丈夫な筋膜でおおわれています。多少触れたくらいで傷つくようなことはありません。手のひらでやさしくシャンプーしたり、やわらかいブラシで髪をとかすといった日常的な動作であれば、まったく心配ないので安心してください。
ただ、めったにないことですが、嘔吐とともに「大泉門」が腫れてきたときは、脳圧が上がっていることを示し「髄膜炎」という病気の恐れがあります。さらに、激しい嘔吐や下痢とともに「大泉門」がへこんできたときは「脱水症」が疑われます。こうした異常に気づいたときは、大至急受診しましょう。
また、別の意味で赤ちゃんの頭については注意が必要です。赤ちゃんの頭蓋骨と脳の間は、大人に比べてかなりのすき間があり、脳は頭の中でちょうど水に浮いたような状態になっています。首がすわるまでの時期はもちろん、それ以降も、激しく揺さぶられたり強い衝撃を受けると、まれに「頭蓋内出血」を起こすことがあります。抱っこするときはしっかり首を支え、無用な衝撃をかけないようにしましょう。
赤ちゃんの頭の軟らかいところについての質問です。まだ骨がついていないために軟らかいことは知っていましたが、先日、友人から「頭の触り方に注意しないと障害が起きてしまう」と聞きました。シャンプーするとき、ふつうにゴシゴシ洗っていましたが大丈夫でしょうか。
(2カ月 新米ママ)