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お悩み相談室
投稿日:2025年8月7日
30分ほど前にトイレに行ったのに、急な尿意に襲われることがあります。急いでトイレに向かうのですが、便座に座ろうとしたとたん、モレてしまったことも…。いつ尿意が来るかわからず不安なので、外出時はトイレを見たらとりあえず行っておくようにしています。このような頻尿を治すことはできますか?(50代女性)
<回答した専門医>
女性泌尿器科医師 佐藤亜耶先生
「頻尿」とは排尿が1日に8回以上ある状態を指します。我慢できないほどの激しい尿意に襲われて排尿回数が増えているのであれば、過活動膀胱が原因だと考えられます。過活動膀胱がひどくなると、尿がモレてしまうことも。これを「切迫性尿失禁」と言います。
過活動膀胱は薬で改善することができるので、泌尿器科の受診をおすすめします。また、骨盤底筋トレーニングや、頻尿を軽減するための生活習慣(冷やさない、利尿作用のあるものを避けるなど)もあわせて行うことで、改善が期待できます。
「頻尿」には2つのタイプがあります。1つは、「我慢できるけど、心配だから、とりあえずトイレに行っておこう」でトイレの回数が増えているケース。もう1つが、「我慢できなくて、行かないとモレてしまう」からトイレの回数が増えているケースです。
我慢できる場合は、過活動膀胱が原因ではなく、習慣による頻尿だと考えられます。すぐにトイレへ行かずに少し我慢してみましょう。こまめにトイレへ行くことがクセになると、膀胱の尿をためる機能がどんどん衰えてしまうので、ますます頻尿になってしまいます。我慢することを意識するようになったら、自然にトイレの回数が減ることが多いようです。
一方、我慢できないほどの尿意に襲われてトイレの回数が増えている場合は、その原因として「過活動膀胱」が考えられます。過活動膀胱は、文字通り、膀胱が活動しすぎること。激しい尿意切迫感があり、その結果として頻尿になり、ときにはトイレに間に合わず尿もれすること(切迫性尿失禁)もあります。また、ちょっとした刺激がきっかけで尿意切迫感が起こりやすいのも、過活動膀胱の特徴です。
過活動膀胱の人によくある光景
過活動膀胱には、膀胱の過剰な収縮を抑える薬(β刺激薬や抗コリン薬など)で治療するのが一般的ですが、患者さんの意向をくみながら「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」といった漢方薬を処方することもあります。どちらの漢方薬にも、体を温め、膀胱機能を改善する働きがあり、牛車腎気丸には体のむくみを取る働きもあります。
過活動膀胱の改善には、薬による治療と併行して骨盤底筋トレーニング(セルフケア)を行うことが不可欠です。さらに、膀胱の柔軟性を回復させるための「膀胱訓練※」を指導することもあります。
骨盤底筋トレーニングは、過活動膀胱に限らず、頻尿や尿もれに悩む人すべてにおすすめの対策です。骨盤底筋トレーニングを習慣にすることで、尿道の開閉をコントロールする骨盤底筋を鍛えることができます。さらに、骨盤の中におさまっている臓器の血の巡りをよくすることで、冷え改善や膀胱機能の働きをよくする効果も期待できます。
骨盤底筋トレーニングは、腟と肛門をしめることを意識してみましょう。ティッシュを体の中に引き上げるようなイメージで、「3秒引き上げ、3秒ゆるめる」のを10回で1セット。1日に5~10セット行ってみてください。
トイレの回数を減らすためには、体を冷やさない、利尿作用のあるものを控えるなどの工夫も必要です。
自分でできる頻尿対策
少し前にトイレに行ったのに、どうしてもトイレが気になるときは、スマホの画面など、ほかのことに意識をそらしたりすると、尿意が遠ざかりやすくなります。
また、頻尿が改善するまでは、我慢できないときの尿もれに備えて、尿もれケア専用の吸水ナプキンを利用するのもいいでしょう。
その際、注意したいのは、吸水ナプキンを使用するのは、外出時など尿もれすると困るときだけにするなど、メリハリのある使い方をすること。吸水ナプキンに頼りすぎると、尿意を我慢することを意識しなくなる人もいるでしょう。そうなると、膀胱機能の改善を妨げることにもなりかねません。不安な時だけお守り代わりに使うのがおすすめです。
不安な時だけなど、メリハリのある使い方をすることが大切です
女性泌尿器科医師
佐藤 亜耶 先生
自由が丘ウロケアクリニック院長
自由が丘ウロケアクリニック院長。日本泌尿器科学会認定専門医、医学博士。日本大学医学部卒業後、研修医を経て同大学泌尿器科に入局。以降、関連病院で診療経験を積み、2019年に女性泌尿器科・小児泌尿器科に特化した自由が丘ウロケアクリニック開院。日本泌尿器科学会、小児泌尿器科学会、女性骨盤底医学学会、日本夜尿症学会所属。女性と子供に特化した専門クリニックには、遠方からも相談に来られる患者さんが多い。