からだのノート おとなになるということ

おうちの方へ

まさに自然界の春のように、人間の中に不思議な力がはたらきはじめる「思春期」。からだが大きく変化し、精神面も不安定な時期を迎える子どもたちを見守るために、まずはおうちの方自身の心と知識の準備から始めてください。

女の子の成長、男の子の成長

女の子も男の子も、ふつう7歳くらいまでは同じように成長します。個人差はありますが、性的な発達はなく、外見的な違いは性器以外にはあまり見られません。
ところが、女の子は8~9歳くらいになると、だんだん胸がふくらみ始めて、腰のまわりやからだ全体が丸みを帯び、わきの下の毛や性毛なども生え始めます。
そうして、ほとんどの女の子が、10~15歳くらいの間に初経を迎えるのです。
男の子も、女の子とほぼ同じ頃から変化が始まります。わきの下の毛や性毛が発生するのは、女の子と同じですが、しだいにがっしりしたからだつきになってきて、ひげが生える、声変わりが始まる、のどぼとけが大きくなるなど、男の子特有の特徴があらわれます。
そして、女の子に初経が訪れるように、男の子には精通が訪れるのです。

第二次性徴とホルモン

このような女の子と男の子の第二次性徴の違いは、それぞれのからだに作用するホルモンの違いによるものです。
女の子も男の子も8~12歳くらいになると、脳下垂体の前葉部というところから「性腺刺激ホルモン」が分泌されます。この刺激を受けて、女の子は卵巣で「女性ホルモン」を、男の子は精巣で「男性ホルモン」をつくり始めるのです。
これらのホルモンは、血流にのってからだ中に運ばれ、少しずつからだを目覚めさせ、子どものからだをおとなへと成長させます。

女の子にとって、初経をどう迎えるかはとても重要な問題です。知識の不足から不安を抱かせたり、失敗で傷つくことがないように、十分な心配りと準備が必要です。
しかし、初経教育は、性に関することなど、さまざまなデリケートな問題を含んでいるだけに、教え方や伝えるタイミングなどで、みなさんが戸惑われることもあるのではないでしょうか。
おうちの方に、自信を持ってお子さんの初経教育に取り組んでいただくために、そのポイントをまとめてみました。
「誰が」「いつ」「何を」教えるか―――これが、初経教育の大事な3つのポイント。具体的な知識を確認するとともに、このポイントをしっかりつかんでおきたいですね。

初経教育は、いちばん身近な方が中心に

初経教育は、先ほどもふれたように、とてもデリケートな問題を抱えています。それだけに、子どもの発育や理解力に応じて、一人ひとりになされることが望ましいのです。
初経については、「学校で指導があるから家庭では簡単に」と、考えている方も少なくありません。でも学校での初経指導は、クラスや学年単位で一括して行われるうえ、時間的にも制限があるため、一人ひとりのきめ細かなケアまでは難しいのが現状です。
初経教育は、お子さんのすべてを誰よりもわかっている身近な方がするのがいちばんですし、お子さんにとって最も望ましいことなのです。

初経を迎えてからでは、遅すぎます

初経を迎える年齢は、平均で12歳、早い子だと10歳ぐらいです。突然の初経に驚くことがないように、事前にきちんと説明しておくことが大切。そのためには、日頃からよく注意して、お子さんのちょっとした変化を見逃さないようにしたいものです。
初経の前兆は、さまざまな形で現れます。身長や体重が急激に増加したり、胸がふくらんできたり、骨盤が発育して丸みを帯びてきたりします。また、おりものによる下着のよごれでもわかります。それらしい変化を認めたら、すぐにお子さんが納得のいくように説明しましょう。決してごまかさず、わかるまで繰り返し話すことを心がけてください。

女性のからだの素晴らしさを伝えましょう

初経教育とは、ただ単に手当ての方法や知識を教えることではありません。その日を晴れやかに迎えてもらうためにも、初経の意義をまず第一に伝えるべきではないでしょうか。
月経は、女性だけに与えられた、新しい“いのち”を産むことができる大切なからだのいとなみです。お子さんが産まれたときの、ご自身の感動などを話して、生命誕生の素晴らしさを教えてあげてください。
いま、さまざまな性情報が氾濫している中で、正しい知識を身につけさせることは大変です。ふだんから何でも話し合える関係をつくり、常にお子さんの心の状態を把握できるようにしておきたいものです。

生理用品は早めに準備しておきましょう

突然の初経にもあわてることがないように、生理用品は早めの準備をおすすめします。ナプキンや生理用ショーツを、かわいいポーチにセットして、お誕生日などにプレゼントしておくのもアイデアですね。

●ナプキン

ナプキンには、いろいろな種類がありますから、それぞれの特長を教え、好みや用途で使い分けさせます。最初に手渡すときに、実物を見せながら使い方を教えてあげると、いざ使うとき、子どもが戸惑わずにすみます。
おうちの方の確かな目で、品質のよいナプキンを選んであげてください。

●生理用ショーツ

生理用ショーツには、さまざまなタイプがあります。ナプキン同様に使い分けると便利です。夜用なども用意しておくと安心ですね。

●おりものシート

初経の1年くらい前から、おりものが気になるようになります。下着について不快な場合は、おりものシートを上手にご利用ください。使い方は、ナプキンと同じです。こまめに取り替えることが大切です。

月経が始まったら、ひとりの女性としてきちんと行動できるように、手当ての仕方だけでなく、ナプキンの後始末やトイレの使い方など、女性としてのマナーやエチケットも、きちんと話しておきたいですね。

男の子に話しておきたいこと

●男の子の生理を理解してあげましょう

思春期を境にして、一般的に男の子は性に対して積極的になっていきます。異性であるお母さんにとっては、女の子への対応以上に戸惑われることも多いでしょうが、エッチだとかいやらしいなどと片づけてしまわないで、男の子が男性へと成長する時期をあたたかく見守ってあげたいですね。
思春期になると、脳からの命令を受けて、精巣は毎日休むことなく生命のもとになる精子を作り始めます。作られた精子は、一定量たまると放出する必要に迫られます。それが「射精」で、初めての射精を「精通」と呼びます。
精通は、10~18歳くらいの間にほとんどの男の子が経験します。また、性的な夢を見て起こる「夢精」も知られています。朝、下着のよごれに悩むお子さんも多いようですが、夢精が自然な現象であることを説明し、この機会に自分の下着を洗たくすることや、汚れた部分を水洗いしてから洗たく機に入れるといったことを話してみてはいかがでしょうか。

●“自然の性”と“文化の性”について

ホルモン的にも性欲が高まるこの時期、女性への興味や関心が高まるのは当然のことです。ただし、精通とともに、男の子には生殖能力が備わることになります。子孫を残すための、いわゆる「自然の性」について教えると同時に、人間には、その上に築き上げられた「文化の性」があるということ、性行為は人間同士のコミュニケーションが前提になるということなども、折にふれ話すようにするといいですね。

からだが成長するのは、とても素敵なこと!

女の子の初経(以前は初潮と言っていました)年齢は、少しずつ早まっています。早いお子さんは9歳、小学校3年生というケースも見られます。
「性器から出血する」月経が、何にも知らないうちに始まったら、これは、とてもつらい経験になってしまうでしょう。ですから、できれば学校で一斉の初経教育が行われる前に、おうちの方から教えていただきたいのです。
昔、私たちが受けた初潮教育は、女の子だけ集められて、「男子には絶対に聞かせられないような恥ずかしい話を聞く」といった雰囲気でしたね。でも今は、社会も、そして皆さんの意識も、ずいぶん変わったと思います。からだが成長するということは、決して恥ずかしいことではなく、とても素敵なことなのですから、明るく、爽やかに伝えてあげたいですね。
子どもは、さまざまなことに興味や疑問を持ちます。月経のことを知ったお子さんは、さらに他の疑問を抱くでしょう。女性と男性のからだの違い、自分自身のからだや性に関すること、赤ちゃんはどうしてできるのか……?
そんなときこそ、チャンスです! 決して逃げないで、ごまかさないで、きちんとした姿勢で話してあげましょう。そうすれば、お子さんも、「これは、とても大切なことなのだな」と感じ取ってくれることでしょう。

生理用品の準備と、手当ての練習をしましょう

お話をしてあげたら、初経がいつ来ても大丈夫なように、早めに生理用品を準備しましょう。ナプキン、専用のポーチ、そして生理用ショーツは枚数を多めに。お子さんと一緒に、楽しみながらそろえていくのもいいですね。
共働きや単親の家庭の方は、おうちの方が家にいないときに月経が始まっても、ひとりで最低限の手当てはできるように、準備や練習が必要でしょう。
私も、娘が初経を迎えたときは病院で仕事中で、娘から電話がかかってきて、そのことを知りました。
「そう、良かったね。始まったんだね。で、大丈夫?ちゃんとできる?」と聞くと、「大丈夫。ちゃんと習ってるから」との返事で、ほっとしました。「じゃあ、きょうは早く帰るからね。お祝いしようね。お祝いは何がいい?」「えっとね、ケーキがいい!」
電話を切った後、じんわりと胸がいっぱいになってきました。そして、ちゃんと用意しておいて、本当によかったと思いました。

自分のからだを、自分で管理できる大人に

お子さんが初経を迎えた方々に、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。それは、「自分のからだは自分で管理できる大人になるように」子育てをしなければ、ということです。月経のカレンダーは、自分でつけさせましょう。もちろん、初めの何回かは、保護者の方も一緒に記録されるといいでしょう。でも、あくまでも、主体はお子さんです。
産婦人科で診療をしていると、月経不順や月経痛で来られる若い女性に、お母さんが付き添っていることがあります。そして、お嬢さんの月経について、すべてお母さんが手帳を見ながら話されるのです。お嬢さんが高校生でも、大学生でも、社会人でも、ときには結婚なさっていても!
「私があなたのからだの管理をしてあげます。それがいちばんいいことだから」……そんな子育てだと、お嬢さん自身に自己管理の力がつきません。将来のパートナーに対して、自分自身をきちんと主張できる大人になれるのか不安です。
大切なからだの情報については、どんどん伝え、「自分のからだをきちんと知りなさい。知ったうえで、自分で自分のからだの管理ができる、素敵な大人になってね」という子育てをしていただきたいのです。

子どもが困ったとき、相談できる存在でいてください

また、月経だけでなく、他に困ったことがあったら、何でも相談してほしいということも、しっかり伝えてあげてください。「私は、あなたが困ったときには、一緒に考えてあげることができると思うよ」と、日頃から、相談役としての門を開いておくことも、とても大切だと思います。
「親にだけは知られたくない」という気持ちが強かったために、かわいそうなことになってしまった女性たちを、私はたくさん見てきました。
人生は、いいことばかりではありません。失敗したり、つらい思いをしたりすることだってあるかもしれません。そんなとき、人生の先輩、そしていちばん身近な大人である保護者の方に、まっ先に相談してほしいですよね。

男女ともに、双方のからだを知ることは大切

男の子をお持ちの方は、男性のからだの発育と、そして女性のからだについても、しっかり話してあげることが大切だと思います。月経や妊娠、出産という役目を担う女性のからだに対して、いたわりの気持ちを育ててほしいのです。世の中には、間違った情報があふれています。それらの情報に接しても、それを見分ける力をつけておくことが必要です。
男の子も女の子も、「男性と女性双方のからだをちゃんと知る」。そして、「自立した素敵な大人になって、素敵なパートナーと素敵な人生が送れますように」……そんな願いを込めて、お子さんの成長を見守っていただきたいと思います。

からだのノート

Page Top