がんは、若い世代には関係ないと 思っていませんか?
じつは、20~30代の若い女性に 急増しているのが、子宮頸がんです。※1
監修:対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座理事長 対馬ルリ子先生
※1 厚生労働省 平成29年報告 全国がん登録 罹患数・率
(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000624853.pdf)
● 子宮頸がんって、どんな病気?
子宮がんには2つの種類のがんがあります。子宮の奥(体部)にできるのが子宮体がんで、子宮の入口(頸部)にできるのが子宮頸がんです。
● 子宮頸がんの原因は、ごくありふれたウィルス
子宮頸がんの原因は、性交渉によって感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)という、ごくありふれたウィルス。性交渉の経験が一度でもあれば、だれでも感染する可能性があり、女性の約80%は感染を経験するといわれています。ただし、ほとんどは自己の免疫力によってウィルスを排除できるため、2~3年以内に感染が自然消滅します。しかし、ごく一部で感染が持続してしまい、数年~10数年という長い時間を経て、感染した細胞が子宮頸がんへと進行してしまいます。※2
※2 国立がん研究センターがん情報サービス 子宮頸がん検診について
(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/cervix_uteri.html)
● 自覚症状がないから気づけない
HPV感染を経て子宮頸がんを発症しても、初期には自覚症状が出ないことがほとんどです。そのため、なかなか自分で気づくことができません。不正出血やおりものの増加、性交時の出血などの異常に気づいたときには、がんが、かなり進行してしまっていることがあります。
● 早期であれば、簡単な手術で治療が可能
子宮頸がんは、長い時間をかけて進行するので、早期発見・治療できれば、決して怖い病気ではありません。たとえHPVに持続感染してしまったとしても、がん細胞になる前段階の「前がん状態」で発見できれば、15分程度の簡単な手術で根治(根本治療)が可能です。子宮を残し、妊娠や出産に影響なく治療が行えます。
● 子宮頸がんは、「早期予防」「早期発見」が何より大切
子宮頸がんは「唯一予防できるがん」であり、2年に1回の定期検診が予防の役割をはたしてくれます。ところが、世界の中でも日本人女性の危機感は、とても低いのが現状です。子宮頸がんの発生率が高まる18~26歳の女性を対象としたアンケート調査でも、アメリカでは72%の人が子宮頸がんの検診を受けているのに、日本の検診受診率は、わずか9%となっています。
<資料の出典元>
ティール&ホワイトリボンプロジェクト
2008年子宮頸がん予防の会 記者発表資料
<調査実施概要>
対象国:日本、米国、豪州
対象者:18〜26歳の女性(学生および社会人)
サンプル数:
米国・豪州 各100サンプル(学生50社会人50)
日本 1,241サンプル
※米国、豪州のサンプル数にあわせるためウェイト値をかけて調整
調査方法:インターネット調査
調査実施期間:
日本 2008年1月18日(金)〜1月23日(水)
米国・豪州 2008年6月6日(金)〜6月12日(木)
※日本については2008年1月18日(金)〜1月23日(水)に18歳〜26歳の女性を対象にインターネット調査にて実施
● かけがえのない人生を、あなたらしく生きていくために
ほとんどの20~30代女性にとって、自分が「がん」にかかるなんて思いもよらないこと。検診を受けず、進行がんになってしまってから発覚するケースがとても多くなっています。子宮頸がんは、進行がんに進むまでは無症状です。不正出血やおりもの異常などの症状が出たら、それはすでに進行がんになっているサインかもしれません。そして、もし進行がんになってしまったら、大きな手術を避けられなくなってしまいます。
かけがえのないあなたの人生を、あなたらしく健やかに生きるために。
20歳になったら少なくとも2年に1回の定期検診で、あなたの大切なからだ、守ってくださいね。
Q検診は痛いですか? A個人差はありますが、痛みを感じないことがほとんどです。子宮頸部の表面をこすって細胞を採取して、細胞に何らかの異常がないかを検査します。
Q検診ってどこで受けられ、いくらくらいかかりますか? A加入されている健康保険組合や自治体で子宮頸がん検診を受けることが可能です。ご自身やご家族が加入している健康保険組合や自治体などによっても異なりますが、検診費用の補助もありますので比較的安く受診することができます。(対象となる年齢や実施時期にも制限がありますが無料の場合もあります。各自治体にお問い合わせください。)お近くのクリニックで自費で受けた場合でも、費用は数千円程度です。
Q検診は1回受けたら、今後は受けなくても大丈夫ですか? A原因となるHPVに感染すると、数年から10数年という長い年月を経て、子宮頸がんに進行します。早期に発見し、経過観察や負担の少ない治療を行うためにも、少なくとも2年に1度、できれば1年に1度定期的に検診を受けることをおすすめします。 あるいはHPV(子宮頸がんを発症させるウイルス)との併用検診を3〜5年に1回受けましょう。
検診は予約が必要な場合がほとんどで、事前に医療機関に連絡してみましょう。生理中は原則として避けた方が良いので重ならない日を選んでください。
はじめに待合室で問診票を記入します。主な内容は月経痛や不正出血がないか、性交渉の経験があるか、妊娠したことがあるかなどです。あらかじめ最終月経日や気になる症状をメモしておくと良いでしょう。看護師さんに呼ばれたら診察室に入り、医師の問診を受けます。
記入した問診票の内容をもとに、医師が質問しますので、正直に答えていきましょう。
● 子宮頸がん検診の問診で聞かれる主な内容
月経の周期や状況
□最終月経はいつですか
□月経周期は何日ですか
□月経は順調ですか
□月経痛はありますか
□月経量は多いと感じていますか
不正出血やその他の気がかり
□これまでに婦人科の病気にかかったことがありますか
□月経以外の出血はありますか
妊娠・出産の有無
□性交渉の経験はありますか
□結婚していますか
□妊娠したことはありますか
□出産したことはありますか
□流産や中絶の経験はありますか
検診の記録
□これまで検診を受けたことはありますか
□受けた場合、その結果に異常がみられましたか
検査のためにストッキングとショーツと下着を脱いで内診台に座ります。ゆったりとしたスカートなら穿いたままで大丈夫。ゆっくり深呼吸をして、リラックスして臨みましょう。
● 検査方法には、「細胞診」と「HPV検査」の2種類があります。
細胞診
子宮の入り口の細胞を採取し、顕微鏡で調べます。がん細胞の有無だけでなく、がんになる前の細胞異常のある異形成を見つけることができます。
専用のブラシや綿棒で子宮頸部を軽くこすり細胞を採取します。基本的に痛みはなく、30秒〜1分ほどで終わります。
HPV検査
子宮頸がんの原因となるHPVに感染しているかを調べる検査です。約15種類の発がん性HPVのハイリスク型に感染しているか否か、またどのタイプに感染しているかをしらべることができます。
細胞診と同じ方法で細胞を採取。細胞診と併用することで、異形成やがんを見逃される可能性がとても低くなります。
検査結果は約2〜3週間でわかります。検査の結果が「陽性」であっても、イコール子宮頸がんということではありません。あわてずに精密検査を必ず受けてください。また、検査の結果が「陰性」であっても、HPVは誰でも感染する可能性があります。がんも初期の段階ではほとんど無症状であるため、定期的に検診を受けることが大切です。
対馬ルリ子 女性ライフクリニック銀座・新宿理事長
対馬ルリ子先生
Ruriko Tsushima
弘前大学医学部、1984年卒。医学博士
卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年に「ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック(現 女性ライフクリニック銀座)」を開院。