おむつ代を医療費控除!申請の手順とポイントをわかりやすく解説【専門家監修】

2025.3.31

介護に欠かせないおむつ代は、条件を満たせば医療費控除の対象となり税金を軽減できます。本記事では、おむつ代を含む介護にまつわる医療費控除について、はじめての人にも分かりやすく・詳しく解説します。 さらに専門家監修のもと、申請時の注意点やスムーズに手続きを進めるポイントも紹介しています。おむつ代の負担を減らしたい人や、今年から医療費控除をしてみようと考えている人はぜひ参考にしてみてください。

  • 監修した専門家

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ファイナンシャルプランナー
柳澤 美由紀 さん
(家計アイデア工房 代表)

おむつ代は条件を満たせば医療費控除が受けられる

介護にかかるおむつ代は、ある一定の条件を満たせば医療費控除という制度の対象になることがあります。医療費控除とは、手順に従って申請することで、額に応じて税金の一部が戻ってくるものです。
毎日使うおむつだからこそ、トータルではかなりの負担になりがちです。医療費控除について詳しく知り、賢く節約に役立てましょう。

医療費控除とは?

医療費控除とは、おむつ代に限らず1年間にかかった医療費や薬代その他の合計が一定額を超えた人を対象に、税金の一部を払い戻して負担を軽減する制度です。
医療費控除が受けられるのは、医療費や薬代その他の合計額が以下に当てはまる場合です。

医療費控除が受けられる基準

  • 医療費や薬代その他の合計が10万円を超えた場合
  • 所得が200万円以下の場合は所得の5%を超えた場合

1年間に支払った医療費の合計額(1~12月)-保険金などで補填される金額-10万円または総所得金額等の5%※いずれか少ないほう=医療費控除額(最高200万円)

また、医療費控除は個人単位の計算ではなく、生計を一にする家族全員(世帯)で合算が可能です。払い戻しを受けるためには申請が必要ですが、介護が必要な人や継続的な医療を受けている人が家族にいる場合などでは、上記の基準を簡単に超える場合が多くあります。
医療費控除の申請をしたことがない人も、試しに一度1年間にいくらかかっているのかざっくりとでも計算してみるとよいでしょう。

おむつ代を医療費控除するための条件

医療費控除の対象は医療費や薬代などですが、条件を満たせばおむつ代も申請の対象にすることができます。

おむつ代を医療費控除に含めるための条件は以下のとおりです。

  • おむつを使っている人が、病気やケガによって6カ月以上寝たきりである
  • 治療のためにおむつが必要と医師から認められている

これらを満たしていれば、入院中・施設入居中・在宅療養中のいずれでも医療費控除を受けることができます。

申請のためには、上記2点を満たしていることを証明するための書類が必要です。書類には2種類あり、

  • 主治医に「おむつ使用証明書」を記入してもらう
  • 市町村に「おむつ代の医療費控除に係る確認証明書」を発行してもらう

のどちらでも大丈夫です。なお、医師に依頼した場合の手数料は1,000~3,000円程度、市町村では無料(郵送代別)の場合が多いようです。

また、「完全に寝たきりかといわれると微妙」「寝たきりかどうかわからない」ような場合でも、まずは主治医に相談してみることが大切です。最終的に判断するのは医師のため、「多分寝たきりではないからおむつ代の医療費控除はムリ」と最初から自己判断してしまわないようにしましょう。

おむつ代を医療費控除するための
簡単4ステップ

おむつ代を医療費控除するためには確定申告が必要です。「大変そう」「手続きがよくわからない」という人も多いでしょうが、実はポイントを押さえればそう大変ではありません。
医療費控除申請の準備から確定申告までを簡単に4ステップにまとめました。ステップごとに気を付けることやポイントも紹介していきます。

①おむつ使用証明書もしくは市町村の証明書を入手する

まずは申請のために、おむつを使用していて条件を満たしているという証明書類を準備します。
書類には2種類あり、

  • 主治医が記入する「おむつ使用証明書」
  • 市町村が発行する「おむつ代の医療費控除に係る確認証明書」

のどちらかです。
市町村が発行するものは要介護認定を受けていることが前提になるため、そうでない場合は主治医に記入を依頼します。

おむつ使用証明書

主治医に記入を依頼する場合は、以下のボタンから「おむつ使用証明書」用紙をダウンロードしてください。

書類の記入や発行にはある程度の時間がかかるため、確定申告の時期になって慌てて準備しなくて済むよう余裕を持って取り寄せておきましょう。

②おむつ購入の領収書を保管する

おむつを使うようになったら、おむつ購入時の領収書を保管しましょう。

書類がまだ手元になくても、おむつを使用し始めた日からのおむつ代がさかのぼって申請可能なためです。
領収書は医療費控除の申請が終わっても5年間は保管義務があるため、整理して捨てないようにしておきましょう。

また、領収書はレシートで代用も可能です。一緒に購入したおむつ以外のものには横線を引くなどして消しておきましょう。

おむつを通販で購入している場合ももちろん申請可能です。各ECサイト上で領収書がダウンロードできる場合は保管しておきましょう。利用した ECサイトが領収書のダウンロードに対応していない場合は、支払いに利用したクレジットカードの利用明細書と、購入時に添付される納品書の両方を保管するようにしましょう。
代金引換やコンビニ払いなど、別の支払方法で通販を利用した場合でも、支払った時にもらえる控えが必要となります。捨てないように注意しましょう。

③医療費控除の明細書を作成する

領収書が集まってきたら、確定申告に備えて医療費控除の明細書の作成を始めましょう。

医療費控除の明細書とは、誰が・どこに・いくら・何の目的で医療費控除の対象となるお金を使ったのかをまとめたものです。
実際に確定申告の際に提出するのは、領収書ではなくこの明細書になります。

医療費控除の明細書

国税庁が提供している以下ファイルをダウンロードしてください。

手書きで明細書を作成したい人や税務署に行って確定申告をしたい人はPDFが、PCで明細書を作成したい人やオンラインで確定申告を済ませたい人はExcelが便利です。

医療費控除の明細書(Excel)記入例
※一部のみ

ダウンロードしたエクセルに入力、おむつ代は「その他医療費」で。

明細書には、おむつ代だけでなく1年間にかかった医療費控除の対象となるお金すべてを記入することができます。
確定申告の時期になって一気に記入するのは大変ですので、普段からこまめに入力しておくと後が楽です。

④確定申告する

申請の準備が整ったら、原則、毎年2月16日〜3月15日の間に確定申告を行います。ただし、医療費控除は過去5年分までさかのぼって申請が可能です。

確定申告とは、1年間に得た収入や支払った税金を計算し、正しく精算する手続きのことです。会社員は基本的に不要なため、今までしたことがないという人も多いかもしれませんが、さほど難しいものではありません。

確定申告に必要なものは以下のとおりです。

  • 確定申告書
    税務署で配布しています。オンラインで申請する場合はネット上で作成することができます。
  • 源泉徴収票(会社員の場合)
  • 医療費控除の明細書(③で作成したもの)
  • マイナンバーカード

また、申告方法には2通りあります。都合に合わせて便利な方を選びましょう。

  • 税務署に持参もしくは郵送する
  • e-Tax(オンライン申請)する

便利なのは自宅からできるe-Taxですが、手続きがわからない・不安で誰かに教えてほしい場合には必要書類を持参して税務署で相談しながら申告することもできます。その場合、予約制になっていることが多いため、税務署に確認するようにしましょう。

介活コラム

離れて住んでいても
医療費控除が可能なケースも

医療費控除は家族全員(世帯)分を合算することができますが、離れて住んでいる家族にかかった医療費やおむつ代も医療費控除の対象とできるケースがあります。
例えば、離れて住んでいる親に、子が通販でおむつを購入して送っているような場合です。

この場合、医療費控除の対象となるかどうかには以下の2点が重要になってきます。

  • おむつ代が医療費控除の対象となる条件を親が満たしているか
  • おむつ代を負担しているのが医療費控除を申請する子自身であるかどうか

この2点を満たせば、子の医療費控除に親のおむつ代を含めることができます。
ポイントはお金を誰が支払っているか、です。自分(子)が支払っている、ときちんと証明できるよう、必要な領収書などはしっかり集めておきましょう。

タクシー代も対象?!医療費控除の範囲は意外と広い

ここまで主におむつ代の医療費控除について解説してきましたが、医療費控除を受けられるお金はそれだけではありません。

病院等に支払った医療費はもちろんですが、意外なところでは通院のためのタクシー代も医療費控除の対象となります。
医療費控除は使った金額の合計が一定額以上にならないと受けることができません。何が医療費控除の対象になるのかを知り、賢く申請しましょう。

医療費控除の対象になるもの

  • 病院等に支払った医療費や薬代
  • 出産にかかわる費用(定期検診・分娩代等)
  • 歯科治療費
  • 入院中の食事代
  • 入院中の差額ベッド代
  • 通院のための交通費(タクシー、介護タクシーを含む)
  • 介護保険の介護サービス費の一部(訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ等)
  • 要件を満たしたおむつ代

医療費控除の対象にならないもの

  • 治療目的でない入院費(美容整形など)
  • サプリメントの購入費
  • 健康診断や人間ドックなどの健診費(健診の結果、治療となった場合は対象)
  • デイサービスや訪問介護などの介護サービス費

医療費控除はどのくらい得?実際に計算してみた

医療費控除は、一定の金額を超えてはじめて申請することができます。「詳しく計算していないけど、大変な思いをして申請してもたいして得にならない気がする」と思っている人も多いかもしれません。

しかし、家族に継続的な医療を必要としている人や、おむつを使用している人がいると意外と簡単に申請条件を満たすものです。
医療費は内容によって額の幅が大きいため一概には言えませんが、おむつ代はある程度計算が可能です。ここでは、家族におむつを使用している人がいる場合、1年間でどれくらいの金額が医療費控除の対象となるかを実際に計算してみます。

1日あたりのおむつ代

  • テープ式おむつ:
    1枚あたり約117円×1枚=117円
  • 尿取りパッド:
    1枚あたり約34円×5枚=170円

合計287円

  • いずれも花王リリーフ製品のMyKaoMallでの販売価格(2025年3月現在)を元に計算

1ヶ月あたりのおむつ代

287円×30日=8,610円

1年あたりのおむつ代

8,610円×12ヶ月=103,320円

おむつの値段や交換の頻度にもよりますが、このように意外とおむつ代だけで医療費控除のひとつの基準である10万円を満たす場合も多くあります。
さらにここに医療費などが加わると考えると、無視できない金額になってくるのではないでしょうか。ぜひ医療費控除の申請を行い、賢く節税しましょう。

医療費控除の対象となる介護用紙おむつ

紙おむつ、尿取りパッド、いずれも医療費控除の対象となります。

簡単!医療費控除申請はe-Taxがおすすめ!

医療費控除の申請は、自宅からできるe-Taxが便利です。e-Taxで医療費控除の申請を行うための手順を解説します。

①国税庁のサイトにアクセスする

ネットに繋がったPCから、国税庁の確定申告書等作成コーナー」にアクセスします。
トップページの右側にある「医療費集計フォーム」のボタンから、医療費控除の明細書のExcel版がダウンロードできますので、まだ入手・作成していない人はここからダウンロードしておきましょう。

②作成開始を選択する

トップページから、「作成開始」のボタンを選択します。指示に従って、マイナンバーカードの有無などを回答していきます。
e-Taxの申請にはマイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンまたはICカードリーダーが必要ですが、ここで対応機種などを確認することができます。
また、初めてe-Taxを利用する人は「利用者識別番号」が必要ですが、この流れで取得できます。

③医療費控除の入力をする

何の申告を行うかの選択画面まで進んだら、「所得税の確定申告書作成コーナー」を選択します。指示に従って入力を進めてください。
医療費の「入力方法選択」という画面まで進んだら、「医療費集計フォームに入力したデータを読み込む」を選択します。「参照」から、作成済みのファイルを選択すると自動的に読み込まれます。医療費集計フォームの読み込みができない場合は直接入力もできます。
あとは、最後まで指示に従って入力を進めれば完了です。

e-Taxでの医療費控除申請は、対応しているスマートフォンがあればさほど難しくありません。
「申請が難しそうだから諦めている」「やり方がわからないから手が出せない」などの人も、これを機にe-Taxでの医療費控除申請にトライしてみてはいかがでしょうか。

介活コラム

e-Tax申請の
メリット・デメリット

自宅で便利にできるe-Taxでの医療費控除申請ですが、メリットが多い一方でデメリットも存在します。ここでは、e-Taxのメリット・デメリットとその対処法を解説します。

e-Tax申請のメリット

  • 税務署に行かなくて済む
    確定申告の時期、税務署は大変混雑します。混雑を避け、自宅で手続きが完結することが最大のメリットと言ってもよいでしょう。
  • 還付が早い
    e-Taxは、申請の結果お金が戻ってくるまでの時間が短いのが特徴です。早ければ2〜3週間で戻ってくることもあります。
  • マイナポータルとの連携で入力が簡素化できる
    医療費などの情報が参照できるマイナポータルとの連携で、入力が簡素化できます。

e-Tax申請のデメリット

  • PCスキルがない人には難しい
    e-Taxでの申請はスマホやPCを使う作業が多くあります。
    操作に慣れない人の場合は申請が難しい場合があるでしょう。
    その場合には、税務署でアドバイスを受けながら申請を行うのがおすすめです。初めての人でも間違いがなく申請することができます。税務署での相談は予約制(入場予約券が必要)になっている場合が多いため、あらかじめ税務署に確認しておきましょう。

【監修・執筆 プロフィール】 ファイナンシャル・プランナー
柳澤 美由紀 さん
家計アイデア工房 代表

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「専門知識と真心で、日本の家計を元気にする」を使命に活動するファイナンシャル・プランナー(FP)。1997年よりFP活動を開始し、個人コンサルティング業務を主軸に、労働組合や企業が主催する研修講師等も手掛ける。相談件数は1,000件以上。ファミリー層の相談だけでなく、シングルの老後対策、働けない子どもや病気の家族を抱える家庭のライフプラン、高齢の親に関する相談など、幅広くアドバイスをしている。

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