2016.05.26
厚生労働省の調査によると、青森県の平均寿命は、男女ともに全都道府県中47位(*1)。平均寿命は年々延びているものの、最下位の状況は続き、全国との格差が依然としてあることが課題となっています(*2)。
青森県はこの結果を改善すべく、「今を変えれば!未来は変わる!!」というスローガンのもと「健康長寿県」の実現をめざす「健康あおもり21」活動を積極的に展開。自治体はもちろん、医療、大学、企業などが一丸となって健康づくりに取り組んでいます。
花王は2015年から、青森県の寿命革命に取り組む弘前大学COI(Center of Innovation)の研究活動を通じて青森県の取り組みへの協力を開始。その一環として、2016年1月5日と6日の2日間、青森県内の大型ショッピングモールで「内臓脂肪みえる化ステーション」を開催しました。この記事では、セミナーを担当した花王研究所員の想いを中心にご紹介します。
「内臓脂肪みえる化ステーション」は、青森県の健康状態と内臓脂肪の関係についてご説明するセミナーと、実際にご自分の内臓脂肪を知っていただく測定体験の2部構成。お正月気分が抜けない時季の開催にもかかわらず、セミナーに166名、内臓脂肪測定には352名の方が参加してくださいました。
セミナーの担当者である花王ヒューマンヘルスケア研究センターヘルスケア食品研究所主任研究員の柳沢佳子は、「イベントには幅広い年代の方が来られました」と振り返ります。
どの年代の人にも健康の心配があると注意を喚起した後は、青森県のがん、心臓病、脳卒中、腎臓病、糖尿病などによる死亡率を、青森県と同じ雪国でりんごの名産地でもある長野県の順位と比較。気候や環境が似ていても、生活習慣が違うと病気による死亡率が大きく異なることを知っていただきました。喫煙、深酒など、さまざまな生活習慣で両県には違いがありますが、「肥満」もその一つです。
「いくら重大な疾病でも、名前を羅列するだけでは、まだその病気や予備群になっていない人にとっては現実味がありません。それらの多くの病気のスタートが『肥満』であると説明しました」。
「皆さん、『たかが肥満』と思われていませんか?」と問いかけながら柳沢が示したのは、30代に肥満が始まった2人の例。肥満を放置するうち、中性脂肪や血圧、コレステロールなどの値が悪化し、やがて脳や心臓の血管の病気が重症化した結果、50代で亡くなったり、寝たきりになったりしたというケースです。
30代で始まった肥満が20年かかって重大な病気になっていく…。この事例を紹介すると、30代の方は「自分のこの肥満が将来の重病の原因になる」と危機感を抱き、50代の方は「自分も今50代だ…」と実感するなど、「決して自分と無縁の出来事ではない」と感じてくださるようです。
初めてお会いした参加者の皆さんに説明を懸命に続けていた柳沢が、小さな手応えを感じたのはこの瞬間。「肥満が自分の将来の健康を左右するものだと理解され、『自分ごと』になると、皆さんの表情が変わるんです」。
「肥満は侮れない」ことをお伝えした柳沢は、話題を内臓脂肪へと移します。「今お話ししたように、命にかかわる病気につながりやすい肥満、それが内臓脂肪肥満なんです」。
次に、「ところで、ご自分の内臓脂肪を見たことはありますか?」と聞くと、参加者の皆さんの中には、お腹のぜい肉をつまもうとする人の姿もちらほら…。しかし 「実は内臓脂肪に触ることはできないんです」と明かします。
そして、年齢とともに内臓脂肪が溜まっていく理由を、子どもと大人の基礎代謝量を挙げて説明します。40歳女性の基礎代謝量は小学校4年生と同じ程度(*4)。ですが、小学生のように動き回っている大人はほとんどいません。40歳になると筋肉量も減っているので、内臓脂肪が溜まっていく一方…。
元気に走り回る小学生の姿を思い浮かべ、内臓脂肪を減らす努力をしなければと感じ始めている皆さんに、柳沢がこう続けます。「でも大丈夫。内臓脂肪は『測って、知って、減らす』ことができます」。
ここでいよいよ、花王が開発した技術から生まれた内臓脂肪測定器が登場します。
名前は知ってはいたけれど詳しくは知らない…。そんな謎の存在だった内臓脂肪への理解を深め、関心も高まった参加者の皆さん。今度は特設スペースに移動して内臓脂肪を計測します。
内臓脂肪計測会で使われた「内臓脂肪計」は、花王が体脂肪や栄養代謝の研究を進める中で開発した医療機器。お腹にベルト型の電極を巻くだけというとても簡単な方法で、X線を使わずに内臓脂肪を正確に測ることができます。
見ることも触ることもできない自分の内臓脂肪を初めて正確に測った方からは「こんなに大変なことになっていたとは!」「みんなと同じくらいだろうと思っていた」「思っていたより少なくてほっとした」などという感想が口々に飛び出します。
「私がこんな数値だということは、同じ食事をとっている家族もきっと…」と話す女性には、同じ肉でも部位や調理法を変えるだけで内臓脂肪のたまり方を変えられることなどを、柳沢が伝えました。
「特にお腹が出ているわけでもないし」「太ってないから大丈夫」と安心していた方の衝撃はとりわけ大きく、「食生活に気をつけなければ」「また測りたい」と内臓脂肪についての意識を強めたようです。3月に予定している次回のイベントへの参加意欲をみせてくださった方もたくさんいらっしゃいました。
内臓脂肪は、心臓病や脳卒中、糖尿病との関連が知られている「健康のバロメーター」。同時に、一人ひとりの生活習慣によって増えたり減ったりする「生活習慣を映す鏡」でもあります。柳沢は「今日の計測で、内臓脂肪が多いとわかった人は、小さなことからでよいので、生活を見直すきっかけにしてください」と話します。
見直すべき生活習慣の2本柱は、食事と運動。「花王では、食べる質や時間、食べ方などに注意するとともに、今よりも1日10分多く体を動かすよう心がけることをおすすめします」。
最後に、セミナーを通して青森県の皆さんにお会いした感想を柳沢はこう語りました。「私はもともと、この計測機器の開発にかかわり、測定方法などを研究していました。研究職は、どうしても自分のテーマや技術そのものへのこだわりが強くなりがちですが、こうして多くの皆さんにお会いできたことによって、『なぜ自分がこの技術を磨こうと思ったか』という原点を思い起こす機会となりました。この技術によって健康への気付きを持ってくれる方が一人でもいてくだされば…。改めてそう思います」。
※花王では、今後も「内臓脂肪みえる化ステーション」を各地で開催する予定です。あなたの街にお邪魔する際には、ぜひご参加ください。