達人コラム

月刊ソトコト編集長 指出一正さん
まちづくり、地域にかかわるってかなり面白い

2016.11.15 | 若者、グローカル

【達人コラム】月刊ソトコト編集長 指出一正さん

地元に残って家を継ぐと決めた若者がいて、一方で、その土地に魅力を感じ、都会から移住して新しい仕事や暮らしを始めた若者がいて…。今、地方では、小さくても力強い変化が起きているようです。雑誌編集の仕事を通して、各地の地域づくりに携わる指出一正さんに、「地方の今」についてお話をうかがいました。

つながりや、受け継ぐものがあることは幸せなこと

くらしの現場レポート:「見えるつながり」を大切に 家族と地域のおもいを引き継ぐ学生たち』で地方の若者たちが「見えるつながり」を大切にしているという話があったように、都会では薄れてきている、例えばお盆のようなその土地ならではの風習が連綿と受け継がれている、そういうものが地方にはまだ残っているのは幸せなことですね。親との関係も、親というより地域の大人として見ているのが地方じゃないでしょうか。例えば、消防団に入っている父親を、地域の中の要として働く先輩として見ることができる。自分の祖父や父が社会の中でどんな立ち位置なのかがわかること、それはすごく大事なことです。そして、自分もまたそれを受け継いで、続いていくわけです。

東日本大震災以降「豊かな暮らし」の価値観が変わった

2008年のリーマンショックと2011年の東日本大震災以降、豊かな暮らしとは、消費から得るものだけでなく、もしかしたら持続可能な暮らしこそが豊かなのではないか、と感じた人たちが振り向いたのが地方でした。3世代が残っていて、共働きの文化もあり、そこで育った若者が地元の大学に進んでも、東京に出てきても、地方の価値観をまだ持っているんです。親子3世代で支えあう、本当に豊かな暮らしがそこにあるのでは、と気づき始めたのだと思います。

実は昔からあるものなのに、気づかなかったものって新しく感じるんですね。例えば、音楽フェスが楽しいって感じた若い世代が、今度は何を発見したかというと、日本に昔からある祭りです。今まで近くにあったけれども、見落とされていた祭りが再評価される機会になっている。地域の魅力に気づく若者が増えているんです。

指出一正さん

地方発祥の近くて見える経済が、今、広がり始めている

消費・経済の話でも、全国的にご近所経済や友達経済という価値観が増え始めています。例えば、今私が着ているこの服は、友達が作っていて、その友達に代金を支払います。これが友達経済。お隣で柿渋の塗料を作っているから、家のリノベーションをやるときはそれを買おう、これがご近所経済。お金が見える回り方をしているんです。経済っていうのは遠くではなくて、実は近いところにあるもの、そう気づき始めている人たちが増えているのも確かです。

レポートの中でも「見える安心感」とありましたが、経済も見える安心感の中で回したいっていう、今まで地方にしかなかった価値観が、地方で再解釈されて、若い人たちの中で広まって東京でも始まってる。同じお金を払うんだったら、作り手の顔が見える野菜と顔が見える友達の料理のほうがカッコイイとなってきている気がします。地方の仕事って中小企業がメインだから、今、自分がやっていることがダイレクトにわかりやすいんだと思います。仕事場で、何が起きているのかという、ざらっとした手触りがある仕事というのかな。それに安心感を感じているのが、今の地方移住とか、地方に残って地域のよさを感じている若い世代という気がします。

地方ってカッコイイ、まちにかかわるって面白い

今、若い世代は地方ってカッコイイっていう意識をもっているんですよね。ローカルにかかわるのはとてもカッコイイと。自分がかかわれる地域を探すのはとても大事なことです。若い世代にこそ、地方に行ってもらいたいです。イベントを開催すると、地方の学生は、何か地域づくりって面白いな、自分も何かできないかなって自然となってくるんです。みんな漠然とこのまま自分のことだけ考えていていいのか、そのよりどころを探しているタイミングで、「地域づくりは本当に面白いからかかわるべきだよ」って伝えると、すごく素直にかかわってくれる。そこから、また何か違う関係性が生まれて、若い人たちが増えていくっていうのは好循環ですよね。

また、逆に都会の人たちにとっても、大きな企業に就職するというような流れがある一方で、地方とかかわって、誰かの役に立っていることを肌で感じ、学べるというのは大事なことだと思います。自分の名前がフルネームで呼ばれる関係性に魅力を感じる人は増えていると思います。地方の側でも、今、すごくいいタイミングで、新しく来てくれる人を迎え入れる土壌が着実に整ってきているので、日本の地方はより住みやすくなると思います。若い世代には、今から地方と関係を持って、地方ならではの豊かな暮らしというのを感じてもらいたいと思っています。

月刊ソトコト

Profile

月刊ソトコト編集長 指出一正(さしでかずまさ)さん

月刊ソトコト編集長
指出一正(さしでかずまさ)さん

1969年群馬県生まれ。雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現『ソトコト』編集長。趣味はフライフィッシング。島根県「しまコトアカデミー」メイン講師。広島県「ひろしま里山ウェーブ拡大プロジェクト」全体統括メンター。高知県文化広報誌『とさぶし』編集委員。ソーシャルスタートアップ・アクセラレータープログラム「SUSANOO」メンター。久米島町アドバイザー。

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