達人コラム

2022.10.04

男性美容研究家 藤村岳さん
メンズメイクは、好感度UPの次の一手

男性のスキンケアが定着しつつある今、話題は男性のメイクへと広がっています。今の男子大学生の中には、コンビニに行くにもスッピンだと恥ずかしい人もいるのだとか。変わりゆく男性のスキンケア・メイク意識について、男性美容研究家の藤村岳さんにお話をうかがいました。​

男性にとっても、メイクは自己表現の一つ

メイクをする男性が増えてきたのは、自己表現の一つの手段として認識されたからでしょう。今までは「服をどうする」「生き方をどうする」だったのが、メイクでも自分を主張できると気づいたのだと思います。

メイクをしてメディアに出てくる先駆けの人たちが増えてきたのをきっかけに、自分を表現できるSNSでつながってコミュニティを作れたり、情報インフラが整ったりしたのが大きいと思いますね。自分一人じゃなくて、同じような考えの人と横でつながれる環境も大きいと思います。

生活者レポート『メンズメイクで自己表現 きれいな肌になりたい20代の美容男子』でも、自分がメイクをしていると周囲に知られても、気にしない若い人たちがいました。就活生と話をしていると、メイクをしている人もいますし、眉毛をしっかり整えるくらいはもう普通のことになっているなと感じます。

「キレイ」の背景にある、社会的な価値

メイクに関しては、若い人であればあるほど韓流の影響を受けていると思います。BTSのように、みんなヒゲをはじめとして、体毛が薄くてツルっとしていますね。毛がないとメンテナンスも楽だし、肌がそれだけできれいに見える。白くて透明感のある陶器のような肌に憧れているようです。

韓国では、お金に余裕があると親が高校入学など人生の節目に美容整形をプレゼントすることも。最近は男子にもです 。学歴重視に加え、見た目の良さが出世に影響したりする。韓国で肌や見た目を整えるのは、成功するための生存戦略の一つの手段なんです。

アメリカでいうと歯並びですね。歯並びを見たら、出身のレベルがある程度推測できてしまうから、まず歯をきちんと矯正する。日本人はそこまでルッキズムというか、見た目の差別は少ないですけれども、やはり汚いよりはきれいな方が好かれやすい。見た目を良くすることは、余計な障壁を取り除いてくれる一つの手段なのだと思います。人間って生理的に嫌いとなると、挽回するのはなかなか難しいので、それをケアするリスクヘッジみたいなものだと思います。

初心者は、まず「ヒゲ」を出発点に

スキンケアに関しては、世代による意識の違いはあまりないですね。みんな冬カサカサして、かゆいから何か塗ろう、から始まって、塗らないと夏でも調子悪い……とか。

スキンケアは、ヒゲ剃りの有り・無しによって変わってきます。どういう風に剃っているのか、いつ剃るか、洗面台かお風呂か。ヒゲ剃りが適切でないと、どんなにスキンケアを頑張っても肌荒れは起こるし、スキンケアがきちんとしてないとヒゲが剃りにくくなる。

スキンケアの基本は、きちんと洗って、適切に保湿をして、UVやその他の刺激から適切に肌を守ること!それに尽きます。ミドルエイジで多いのは、若い頃と同じものをずっと使っていてアップデートしていないケース。年齢やライフスタイルの変化によって、アイテムを変えることは必要だと思います。

またヒゲは、ベースメイクとも、とても関係があります。ヒゲが濃いか薄いか。どこまで隠したいのか、全く無くしてしまいたいのか。自分の求める見た目とヒゲの特性によって、ベースメイクの方向性が変わってくる。

若ければ若いほど、剃ると肌が荒れると言ってヒゲを完全脱毛したがる人が最近は多いんです。ただ、年を重ねた男性が見た目の印象を変える時に、ヒゲはすごく便利です。

僕はヒゲでフェイスラインをしっかりとって、ちょっとでも小顔に見せようと(笑)。童顔の人は口ヒゲでちょっと貫禄が出ますしね。安易に脱毛をすすめませんが、ヒゲと脱毛、メイクの関係はすごく深いんです。

ベースメイクは、印象を変える大きな鍵

僕自身、スキンケアはもう歯磨きと同じ意識ですが、メイクは仕事のイメージですね。普段から色を入れたりはしませんが、ベースを整えることはしています。メイクに興味があるなら、やっぱりベースメイクから入るのがいいと思います。本当にベースメイクって、初心者でも成功しやすくてイメージがガラッと変えられます。でも失敗するとそれが如実に表れるので難しいところ。ただ、経験を重ねてそれを乗り越えてベースメイクがうまくできると、本当に印象を自分で操作できるんです。

アイテムは、初心者はまずBBクリームなどのオールインワン型。朝ヒゲを剃って夕方ちょっと青みが強くなってきたかなという頃に色を選ぶと、自分が思った通りの見た目になりやすく、一日しっかりカバーできると思います。色合わせが難しければ、肌の色に左右されないクリアタイプもあります。

眉は一度、行きつけのヘアサロンや眉専用のサロンに相談することをおすすめします。最初に自分の骨格と、見せたい印象を伝え、第三者の目で総合的に判断してもらいましょう。それをキープするためにシェーバーやアイブロウを揃えてみる。ちょっとプラスすることで目がとっても印象的になるのはアイラインですね。今はマスク生活なので、口元よりもやはり目元をどういう風に作るか、ということがポイントです。

新しい洋服に袖を通すようなワクワクを、メイクで手に入れる

メンズメイクは、する自由もあればしない自由もあるので、メイクする人を責める必要はないし、寛容に見て欲しいなと思います。メイクは、すごく安全に楽しくできると思うんですよ、変身をね。初期投資としては高くないので手軽だし、うまくいかなければすぐになかったことにできるとても気楽なもの。新しい洋服に袖を通して自分が素敵に思えるような感覚が、自分の顔で味わえる。新しい趣味を見つけるよりも、メイクを趣味にしてみるのも、ちょっと楽しい人生を彩ることが出来るかなと思います。

コロナになり、リモートでの会議を経験して、「え?こんなに老けてたの?」と危機感を募らせるミドルエイジ以降の男性も増えています。そういう方達にも知ってもらえたら。メンズメイクは、ローリスクハイリターンですので(笑)。

若い女性の多くは男子のメイクに対して肯定的です。一緒の趣味ができて楽しい!という風に思ってくれる人たちがいて、うれしいですね。これからも良き応援団で、良き理解者で、一緒に楽しめる探究者であってほしいです。ただ、中にはその価値観を受け入れ難い女性もいます。わりと年齢を重ねた女性に多いのですけれど、男性のスキンケアさえ否定されることも。

もし周りの人が興味をもってやってみようかなと言った時は、それが旦那さんでも息子さんでも同僚でも友人でも、頭ごなしに否定せず、どうぞ優しい目で見守ってあげてください。

Profile

男性美容研究家ふじむらがくさんのお写真

男性美容研究家
藤村岳(ふじむらがく)さん

男性美容研究家/美容コンサルタント。1973年、東京生まれ。大学卒業後、植物関連の雑誌・書籍の編集を行った後、料理、健康などの生活情報誌に携わる。男性が読む美容記事を女性が書くことに違和感を覚え、独立。以後、テレビ、雑誌、ウェブなどで男性美容の啓発に努め、男性用コスメの開発やコンサルティングなども行っている。「DANBIKEN」主宰、総合情報サイト『All About』にて「メンズコスメ」のガイドも担当。

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