2022.08.09

空前の値上げラッシュを乗り越える!
2022年の生活防衛意識

新型コロナウイルス流行から三度目の夏。いまだに感染状況に翻弄される日常が続く中、今年に入ってからは、ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響などから、今までにない「物価高騰」に見舞われています。賃金据え置きのまま、くらしの中のあらゆるものの度重なる値上げラッシュに家計が圧迫され、人々の意識や行動はどう変わってきたか、また、どのように家計をやりくりしているのかを、首都圏在住の生活者の最新調査からお伝えします。

感染症予防の定番化、高まる外出意欲

新型コロナウイルス流行から三年目の夏を迎え、2022年7月の感染症対策の実施率は「外出時のマスク」(95%)、「帰宅後の手洗い」(87%)、「外出時の手指消毒」(72%)と高いまま継続している一方で、「人が多い場所への外出を控える」は50%まで下がり、2020年5月以降、最も低い水準となりました。また「外出する抵抗感が減ってきた」「外出頻度を増やしたい」と思う人も5月には半数を超えてきており、感染症対策は当たり前のこととして続けながらも外出意欲は高まりつつあります。

この1カ月間におこなった感染症対策のグラフ 首都圏在住20~60代 既婚女性 各回500人(花王 生活者情報開発部調べ)(複数回答)

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外出に対する意識の表 2022年1月〜7月 首都圏在住 20~60代既婚女性 各回500人(花王 生活者情報開発部 調べ)

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その背景には、2022年3月から新規感染者数が落ち着き、ワクチン接種も浸透し、「いつコロナに感染するか気が気でない」と感じる割合は7月には半数にまで減少、「もし感染しても、自分は重症化しないと思う」割合も約4割程度と維持していることから、新型コロナウイルス感染への不安や警戒感が徐々に低下してきたことが理由として挙げられます。

新型コロナウイルス感染に関する意識のグラフ 2020年4月〜2022年7月 首都圏在住20~60代 既婚女性 各回500人(花王 生活者情報開発部調べ)(複数回答)

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特に2022年5月の大型連休では、新型コロナウイルス流行以降、2年ぶりの「移動制限のない長期休暇」になったこともあり、新型コロナウイルス流行前ほどではありませんが、家族との外食、日帰りレジャー、宿泊旅行・帰省、友人・同僚との会食など、「密を避け」、「近場」、「限られたメンバー」と外出を楽しむ生活者が増えました。
しかし、7月に入ってから、急激に新型コロナウイルス感染が再拡大し始め、国の観光支援策「全国旅行支援」の延期などもあり、外出意欲の高まりとは裏腹に、移動を伴うレジャーや宿泊旅行などは少し低下し、今後の変化には注目が必要と考えます。

最近1カ月間の外出状況のグラフ 2021年10月〜2022年7月 首都圏在住20~60代 既婚女性 各回500人(花王 生活者情報開発部調べ)

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値上げに敏感に反応する生活者

一方で、2022年になって生活周りの商品・サービスの値上がりが続いており、食品主要105社では、年内中の「値上げ」は1.5万品目を突破(2022年6月 帝国データバンク調べ*)し、大手電力会社10社のうち7社が3月に続き、7月にも家庭用電気料金を値上げしています。

連日のように繰り返される値上げ報道に、生活者は、自分の暮らしにとって使用頻度が高い、必要不可欠な商品の値上げに敏感に反応しており、5月に比べ多くの商品・サービスにおいて値上げの認知率は上がっています。しかし、7月時点で『値段が高くなった』と実感している商品やサービスとしては、「電気料金・ガス料金」(56%)、「ガソリン」(48%)、「食用油」(38%)、「食パン・菓子パン」(36%)、「小麦粉」(33%)、とまだ限定的で、店頭価格での実感には少しタイムラグがあるのかもしれません。

項目別値上げの認知のグラフ 2022年5月、2022年7月 上位10項目抜粋 首都圏在住20~60代 既婚女性 各回500人(花王 生活者情報開発部調べ)(複数回答)

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値上がりを実感している商品・サービスのグラフ 上位10項目抜粋 首都圏在住20~60代 既婚女性 500人(花王 生活者情報開発部調べ)(複数回答)

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生協の個配のチラシを見てると値段の変化がわかる。「次回から値上がりします」の食品がすごく増えた。 (30代女性)

電気・ガス料金は多い月でも2万円台だったのが値上げで3万になった。有料放送の料金も上がった。 (50代女性)

ガソリンや食品の値上がりが目に付くようになった。買い物も車で遠出せずに近くで安い食品を買うようにしている。  (60代女性)

家計のやりくり・引き締め

2022年7月の『家計のやりくり意識』の調査では、「苦しい(苦しい+やや苦しい)」と感じる生活者が32%にのぼっています。

新型コロナウイルスが流行した2020年5月は、新しい生活様式に対応するための支出が増えたり、働き方が変わり収入が一時的に減額したりした世帯もあったためか、「苦しい」と感じる割合は37%でした。しかし、その後徐々に回復し、2022年2月には26%となり一旦落ち着く気配があったものの、さまざまな値上がりによって、やりくりが「苦しい」と感じる生活者が増加に転じました。

また、『家計の引き締め意識』も同様に、2022年7月には、「引き締めている(かなり引き締めている+やや引き締めている)」が52%となり、物価高から家計は厳しさを増しています。

家計のやりくり意識のグラフ 2020年5月〜2022年7月 首都圏在住20~60代 既婚女性 各回500人(花王 生活者情報開発部調べ)

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家計の引き締め意識のグラフ 2020年5月〜2022年7月 首都圏在住20~60代 既婚女性 各回500人(花王 生活者情報開発部調べ)

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減らしたい支出、増やしたい支出

今後『減らしたい支出』としては、度重なる値上げに加え、この夏はさらに『電力需給ひっ迫注意報』の発令などの影響から節電意識が高まった「光熱費」(69%)、そして「水道代」(64%)など公共料金や、支出金額の大きい「通信費」(56%)や「食料品」(48%)、その他「衣類・服飾品」(50%)、「ガソリン代」(47%)などが挙がっています。

項目別支出を減らしたい(節約したい)のグラフ 上位6項目抜粋 首都圏在住20~60代 既婚女性 500人(2022年7月 花王 生活者情報開発部調べ)

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食費などできるだけ節約をしつつ、電気はもっとお得な電力会社とかないか調べている。  (30代女性)

電気はこまめに消す、風呂は家族続けて入る、食材は使い切るなど気を付けている。   (60代女性)

収入も減り、生活費を下げるように努力している。携帯電話とWi-Fiの契約を見直した。  (30代女性)

一方で今後『増やしたい支出』としては「貯蓄・投資」(25%)の他に、「旅行・レジャー」(14%)、「趣味・娯楽」(7%)など、新型コロナウイルスの流行から今まで自粛・我慢してきた生活の反動から、将来やいざという時にための貯蓄や投資だけでなく、旅行や趣味・娯楽など生活を楽しむことに関わる支出を増やしたいと思う生活者も少なくないようです。

項目別増やしたい支出のグラフ 上位6項目抜粋 首都圏在住 20~60代既婚女性 500人(2022年7月 花王 生活者情報開発部調べ)

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なるべくポイントや還元を利用しようと思うようになった。 ポイントを貯めて少額投資を始めた。  (30代女性)

子どもがそろそろ1歳になる、これからは、いろいろな場所に連れて行って、色々見せてあげたい。   (40代女性)

無駄な外出は避ける。普段の生活と旅行など非日常をメリハリをつけて楽しむことにしている。  (60代女性)

ふだんの買い物では「お得」「ポイント活用」で節約

減らしたい支出の中で、公共料金、通信費の次に抑えたいのが、ふだんの買い物で購入することが多い食料品です。このふだんの買い物での節約や工夫として、2020年5月から2022年7月の約2年で大きく増加したのが「アプリでクーポンを入手して買い物」(55%→79%)、そして「『ポイント〇倍デー』の時はつい多めに購入」(43%→50%)、「日用品はネットで購入することが多い」(27%→34%)という購買行動です。

これは、2019年10月の消費増税をきっかけに「ふだんの買い物でカードや電子マネーによる支払い(キャッシュレス)」(72%)が定着し、さらにさまざまなアプリによるポイント還元、メーカーや店舗と共同の割引キャンペーン等が増加したことで、効率的にポイントを貯めてうまく使う「ポイ活」へとつながっています。日用品のネット購入は、定番の日用品であれば定期購入利用による割引に加え、買い物の手間や時間、在庫管理も不要という利便性もあるためと推察します。

また、新型コロナウイルスの感染症対策の1つとして定着した「まとめ買い」も、買い物頻度を抑えることで余計なものを買わない工夫として、現在も継続されています。いまや、消費増税やコロナ禍を経て、購買行動は大きく変化し、ふだんの買い物での「キャッシュレス」「ポイント」「クーポン」の活用、「ネット購入」は、世代を問わず生活者の間に広く定着してきています。

ふだんの買い物行動の変化のグラフ 2019年4月〜2022年7月 首都圏在住 20~60代既婚女性 各回500人(花王 生活者情報開発部調べ)

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ポイントはなるべく二重三重取りを目標にしている。 クーポンや還元が多い店でいつも買う。  (20代女性)

夫婦で同じポイントを貯めて投資して増やし、色々な買い物に使うようにしている。  (40代女性)

お店のクーポンやポイントは忘れずに使う。買い物はQRコード支払いが当たり前になった。  (60代女性)

くらしの中のあらゆるものが値上がりし、家計に厳しい状況が続いている中、生活者たちは、今、何を優先して、どう暮らしていきたいかを再確認しながら、新しいマネーツールの活用やさまざまな節約の情報をどん欲に取り入れ、よりよく暮らそうと懸命に努力している様子が調査からうかがえました。

今後も、新型コロナウイルス感染の状況や世界規模の社会変動によって、生活を変えることを余儀なくされると思いますが、今までも幾度となく訪れた逆境を乗り越えてきた経験が今後の力になると私たちは信じています。

調査概要

「生活者の意識と行動に関する調査」
◎2020年5月・7月・9月・11月、2021年1月・3月・7月・10月、2022年1月・2月・4月・5月・7月/インターネット調査/首都圏在住20~60代既婚女性 各回500人

「ふだんの買い物や暮らしについての調査」
◎2022年5月/オンラインインタビュー調査/30~60代既婚女性6人

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