達人コラム

2022.06.07

NPO法人ちぇぶら代表理事 永田京子さん
更年期を「後半の人生を元気にするチャンス」に!

「更年期」とは、女性の場合、閉経の前後5年、45~55歳頃を指します。人生100年時代においては、ちょうど人生の折り返し地点ともいえ、更年期の過ごし方がその後の人生に与える影響ははかりしれません。更年期の知識と対策ケアの普及活動をされている永田京子さんに、更年期を「これからの人生を元気に生きるためのチャンス」に変える視点についてうかがいました。

意外と知らない!?更年期の本当のこと

今では「更年期」という言葉が市民権を得て、情報もたくさんあります。しかし、本当に更年期のことをちゃんと知っているか?というと、現状そうではないようです。

意外と知られていない更年期の真実の1つが、更年期はホルモンの大変動期だということです。35歳頃から女性ホルモンは徐々に低下し、45歳頃からストーンと急降下。さらに、女性ホルモンが分泌されないことにより、脳がパニックを起こし、自律神経まで乱れてしまいます。そのため、この時期、およそ9割の女性が心身の不調を感じます。更年期の不調は自然なことで、決して本人の我慢が足りないせいではありません。 そして、覚えておいてほしいのは、更年期による不調には終わりがあるということです。閉経後しばらくしてホルモンが激減した状況に体が慣れ、自律神経が安定すれば、それまでの不調がうそのように消えるでしょう。

生活者レポート『え?これも更年期不調? 「正しく知る」「わかってもらう」で更年期を乗り越える』では、「更年期の予習ができていない」「仕事に影響するような不調を抱えていると、働き続ける自信がなくなる」といった、更年期に悩む女性の姿が浮き彫りになっていました。更年期を少しでもラクに乗りきり、その後の人生を元気に生きるためには、女性自身が更年期について正しく知ることはもちろんのこと、周りの人たちも更年期や更年期不調を理解することが大事です。

更年期症状に悩む女性たちの声でもっとも多いのは、「理解してほしい」という声です。特別扱いしてほしいというよりは、当事者だけでなく、パートナーや職場の同僚、上司が「更年期」について共に学び、共通理解の上で、更年期について自然に会話できる環境が求められます。

更年期は様々な危機が訪れやすい時期

更年期は、更年期症状と呼ばれる不調以外にも、女性ホルモンが低下することで、生活習慣病や骨粗しょう症などのリスクも上がり始めます。また、乳がんも この世代から罹患率が上がります。そのため、健康な人でも、女性ホルモンの下降が始まる35歳頃からこれから来る更年期を意識して、自分の心と体に向き合うことが大切です。

一方、すでに更年期に入り、何らかの不調が出てきた人は、否応なしに自分の体と向き合わざるを得ない状況になります。この不調は、「これまでと同じ生活をしていると危ないですよ」というアラームともいえます。不調をきっかけに、健康になるための情報収集をして実践したり、食事・運動・睡眠といった生活習慣を見直したりしてみましょう。
講座でも、筋力バランスチェックや、椅子に座りながら簡単にできるような体操をしてもらうと、自分の運動不足を痛感する人は多くいます。 この時期の対策が、更年期以降の健康にも役立つはずです。

人生の転機。大事な決断は体調がいいときに

更年期症状が原因で離職する人は、決して少なくありません。しかし、更年期で判断力の低下や気持ちの落ち込みがあるときに、大事な決断をするのは得策とは言えません。大きな決断は、体調がいいときに!をおすすめします。

更年期の自分をご機嫌にする方法を見つけよう!

自分の健康と向き合うということは、自分をご機嫌に保つためのセルフメンテナンス法を見つけるということ。私たちが提唱している「ちぇぶら体操」もその1つ。日常生活のすきま時間を利用してできる体操です。

運動は体を鍛え、代謝を促すだけでなく、自律神経を整えるのにもとても役立ちます。さらに、筋トレをすると、テストステロンという男性ホルモンが分泌されるというメリットも。テストステロンには、気持ちを明るくし、やる気を出させる働きがあります。これらの効果から、短時間の体操だけでも心身共に調子がよくなることがわかっています。

なかなか運動を習慣にできないという人は、「迷ったら体を動かすほうを選ぶ」を意識するだけでも運動量は増やせます。エスカレーターより階段、車よりは自転車というように、試してみてください。

セルフメンテナンス法は、運動に限ったことではありません。気持ちを落ち着かせる呼吸法や、好きなアロマを利用するといった方法もあるでしょう。「自分は、これをするとリラックスできて、心身が整う」といった方法を探してみてください。
更年期に身につけたセルフメンテナンス法は、更年期を過ぎても役立ち、人生後半を素敵なものに変えてくれるでしょう。

おすすめ!気軽にできるセルフメンテナンス法

【自律神経を整える呼吸法】

脳から背中に伸びている中枢神経。この中枢神経から枝分かれする末梢神経に自律神経もあります。呼吸と連動させて首の付け根を動かすことで、自律神経の副交感神経が刺激され、短時間で質の高いリラックス効果が得られます。不眠に悩まされる人にもおすすめ。

① ゆっくり鼻で息を吸いながら、おなかをふくらませ、上を向く

② 口から息を細く長く吐き出しながら、あごを引く

【活力がわく!スクワット】

太ももは、全身でもっとも筋肉量の多い部位。更年期以降、急速に減る筋肉を保持するのにおすすめの運動です。活力や元気を生むホルモン、テストステロンの分泌も促します。

① 足は肩幅に開き、脚の付け根から上体を前に倒す

② 太ももが床と水平になるように、ゆっくり腰をしずめる

このとき、ひざに負担をかけないように、ひざがつま先より前に出ないように注意する。
※痛みのある場合は控え、無理のない範囲で行いましょう。

スクワットのイメージ写真。ゆったりとした動きでも効果的。股関節から折れるイメージ、ひざがつま先より前に出ないことがポイント。

これって更年期の症状?何か変?と思ったら、婦人科へ

更年期の症状は実に様々です。よく挙げられるのは、急に顔が熱くなったりするホットフラッシュですが、それ以外にも、目やのどなど粘膜の乾き、物忘れなど、一見更年期とは関係のないように思える症状もたくさんあります。
また、症状の感じ方も個人差が大きく、「何となく不調」程度の人もいれば、「起き上がるとめまいや吐き気に襲われて、3年間ずっと寝たきり」という人もいます。

自分で「これは更年期症状」と判断するのは、なかなか難しいものがあります。だからこそ、40代以降で何か1つでも不調を感じたら、我慢せずに病院を受診しましょう。その際、最初はドライアイなら眼科といった具合に、症状が出ている部位が専門の科を受診します。そこで改善しなければ、次に婦人科を受診してみてください。
また、更年期症状かどうか迷って受診に踏み切れない場合は、更年期症状を客観的に自己チェックできる簡易チェック票を活用するのもいいでしょう。合計得点50点以上が、婦人科受診の目安になります。

婦人科受診のコツ3か条

更年期のつらい症状は「更年期障害」として治療の対象となります。
スムーズな治療につなげるため、受診にもコツがあります。

1.困っている症状をメモしていく
緊張して伝え忘れがないように、あらかじめポイントをメモして持参しましょう。

2.お薬手帳を持参する
受診歴と服薬歴を把握することで、薬の副作用の影響を排除し、ダブル処方にしないなど、医師は治療方針を立てやすくなります。

3.月経周期・量・最終月経日をメモしていく
婦人科では必ず聞かれることなので、すぐに答えられるようにしておきましょう。

更年期についてもっとフラットに話そう

「更年期」といういと、日本ではまだまだネガティブなイメージを持たれがちで、地域によっては公言するのも恥ずかしいといった雰囲気もあります。しかし、欧米では、もっとポジティブに捉えています。なぜなら、閉経には、うれしい面もたくさんあるからです。
2018年、私はカナダで開催された「国際閉経学会」に参加しましたが、「更年期は女性たちが心と体と向き合って、より元気に生きるための進化の期間!」といった明るい雰囲気で学会が始まったのが、とても印象的でした。

閉経でこんないいことがある!

・月経時は避けていた白い服などいつでも着られる。
・いつでも運動、スイミング、温泉旅行などが楽しめる。
・PMS(月経前症候群)のつらさがなくなる。
・妊娠のリスクから解放される。
・子宮筋腫が小さくなる。

更年期についての講演会や講座を行うと、「自分の体のことなのに、初めて知りました」とか「今までこんなことを学ぶ機会がなかった」といった声をよく聞きます。
また、更年期の不調で悩んでいた人からは、「(会社が講座を企画してくれたことで)私はこのまま働き続けていいんだ、と思えるようになった」という声もありました。
男性社員や、男性管理職も一緒に講演会を聞くことで、「更年期の認識を共有でき、職場で話題にしやすくなった」との声もあります。

2030年には世界中で12億人の女性が更年期を迎えると試算されています。同時に、平均寿命は延びて人生100年時代といわれる昨今。「更年期をどうやり過ごすか」だけでなく、「更年期の先に続く人生の後半を、いかに快適に健康に過ごすか」に焦点を当てて、よりフラットな話題として更年期が語られることが増えていくでしょう。そうなれば、つらさを共有し、サポートを受けやすい、優しい社会になっていくように感じています。

Profile

NPO法人ちぇぶら代表理事 ながたきょうこさんのお写真

NPO法人ちぇぶら代表理事
永田京子(ながた きょうこ)さん

演劇活動後、ピラティスや整体・経絡などを学ぶ。インストラクターとして活動する中で、40歳前後の女性たちの声や、自身の母が更年期障害でうつになった経験から、更年期を迎える女性の健康サポートを目的とした「ちぇぶら」を設立。1,000名を超える女性たちの調査や医師の協力を経て “更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。企業や医療機関などで講演を行い、国内外で述べ3万人以上が受講している。著書に『女40代の体にミラクルが起こる!ちぇぶら体操』、『はじめまして更年期♡』。更年期トータルケアインストラクター。メノポーズカウンセラー。

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