達人コラム

スタイリスト 地曳いく子さん
私たちが目指すのは「経年美化」

2016.10.12 | おとなの女性

【達人コラム】スタイリスト 地曳いく子さん

女性の50代は、お肌ならぬ、髪の曲がり角ともいうべき、髪にも大きな変化のある時。ご自身の数々の著書でも「50代からのおしゃれ」について提案をされている、スタイリストの地曳いく子さんに、大人のおしゃれな髪とファッションの秘訣や、目指すべき美しさについてうかがいました。

今どきの50代は、「変化にあらがい、あきらめない」特別な世代

くらしの現場レポート:ありたい自分に近づくために マチュア世代の髪へのおしゃれエネルギー』で、50代の女性が髪にとても気を使い、時間をかけて工夫している様子にあらためて感心しました。若い頃がバブル期とちょうど重なったこの世代は、雑誌の中のファッションリーダーを参考に、当時からファッションやおしゃれにもまじめで、とても勉強熱心でした。今では、ネットの情報が加わって、よりいっそうテクニックや商品を研究しているようですね。昔の50代と比べて、一世代違うような、10歳くらい若いと思います。いろいろな化粧品やヘアケア品が生まれたことも背景にあって、まるで魔法使いのようです。自分のキレイにかける熱意や、「いつまでも女でありたい」という気持ちの強い、変化にあらがう世代、あきらめない世代なんですね。今までにはない、特別な世代だと思います。

地曳いく子さん

美しさを維持したい女心は素敵。でも、魔法は続かないことも心得て

新著の「大人のおしゃれ Do! & Don't」にも書きましたが、「髪は、見た目の7割を占める」と言ってもいいほど、大切な要素だと思います。レポートの女性たちのように、伸びたら染めるの繰り返しやボリュームダウンした髪を立ち上げるなど、工夫しているのはとてもいいことだと思います。現状維持のための努力や、その女心は同年代なので理解できます。私自身も、もうこの先一生セミロングはできないかもしれないと思い、伸ばしたいと思ったこともありました。維持できる間は維持して、おしゃれを楽しむのも素敵なことだと思います。でも、いずれは自分の実年齢との落差に愕然とするときが心配です。魔法はいつまでも使えないので、今のうちに、その先の自分のことも考えながら、というのを一言加えておきます。

髪はアップデートが大事。全身写メでバランスチェック

流行りの洋服を着ても、髪型がおしゃれでないと、古い印象になってしまい、逆に、洋服はベーシックでも、髪型がおしゃれだと、垢ぬけて、カッコ良く見えます。カッコよさの基準は髪と言ってもいいほど、それくらい大事。髪型もある程度アップデートすることをおすすめします。同じセミロングでも昔と今のは違いますよね。できれば、大人世代の髪の悩みもわかる、大人の髪が得意な美容院を選べるといいですね。

もう一つ大切なのは、全身のバランスを引いて見ることです。鏡を見るとき、ヘアスタイルは首から上だけ、ファッションは、首から下だけとなってしまいがちなので、全身写メを毎日とりあえず撮っておくこと。それをあとで時間をおいて見ると、痩せて見える服や、太って見える服がわかったり、髪の長さのバランスなどが、冷静に判断できるんです。

また、きちんと靴を履いて全身コーディネートするのもおすすめ。高いヒールを履けた頃と、50代になって、あまり履かなくなった今では、似合う髪の長さはだいぶ変わります。顔には合っているけど、全体のバランスから見ると、この髪は私には重いな、とか、おしゃれが一歩進みます。以前、パリやNYで髪を切ってもらった時は、全身鏡で髪の長さを決めて、切った後も、全身のバランスを見て微調整を入れていたんです。座ったままで終わらせるなんてとんでもないというように。自分の姿を客観的にみて、似合うものを選ぶ目をもつことが大切だと思います。

地曳いく子さん

年を経た美しさを作っていく、なりたい自分は自分の中に

講演などで、50代以上の方々から、「おばさんに見られたくない」というご相談をよく受けます。アンチエイジングの努力が、気がつかないうちに「イタい若作り」になってしまうことを避けるためにも、年齢2割引きまで若く見せるのはOKと答えています。そうすると、「誰を目標にしたらいいかわからない」と、おっしゃる方も多いので、私からは、「もう誰かを追うのではなく、この際、あなた方ご自身が自分の目標になるしかないんじゃないですか?」とご提案しているんです。

洋服で例えると、ずっと似合っていたワンピースが、「あれ、似合わなくなってる!?」、ということはありませんか?60代、70代と年を重ねていく間に、そうした変化がいくつもあると思いますが、そんなときは、現実に目をつぶらず、でも、片目だけで見ておく感じがいいと思います。魔法が使えているうちは良かったけれど、かぼちゃの馬車に戻ってしまった!とならないように、今までの髪型が顔とあわなくなってきたと思ったら、なじませ方を研究する。まずは、なりたい自分をもう一回整理してみましょう。その中でベストな髪型、手間や時間を減らしてもできる髪型を60歳になる前に考えておくのはいかがでしょうか?

私たち50代が、この先、目指すのは、「経年美化」だと思っています。「美しく老いる」ということ。昔に戻るのではなく、年を経た美しさを作っていく世代であって欲しいです。「すてきなおばさん」になって、若い世代に、おばさんになるのもいいなって、思わせるような。「アンチエイジング」の「アンチ」は時代遅れになっていくかもしれませんね。年を重ねるたびに、「美しさを重ねていくんだ」という意識で。今の50代はあきらめない世代だと思いますが、何かをあきらめると、何かが逆に手に入るということもありますよね。変化に悲しむのではなくて、新しいことを考える勇気をもって、次々に新しい扉を開いていきましょう。私たち50代ならそれができるはず!だと思います。

Profile

スタイリスト 地曳いく子(じびきいくこ)さん

スタイリスト
地曳いく子(じびきいくこ)さん

1959年東京生まれ。数々のファッション誌で30年以上のキャリアを誇り、数多くの女優のスタイリングも手がける、”大人の女性”の服選びの第一人者。スタイリングのみならず、洋服のプロデュースからTV、ラジオと幅広く活躍中。主な著書に『50歳、おしゃれ元年。』『服を買うなら、捨てなさい』『大人のおしゃれ Do! & Don't ババア上等! 余計なルールの捨て方』ほか。

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