達人コラム

医学博士/体臭・多汗研究所所長 五味常明先生
ニオイを抑えるためにも「いい汗」をかこう!

2016.09.05 | 生活スタイル

【達人コラム】医学博士/体臭・多汗研究所所長 五味常明先生

気になるニオイの原因となる汗は、「できればかきたくない」と思われがち。けれども、汗には、脳が発達した人間ならではの重要な役割があります。今回は、汗やニオイで悩む多くの人たちの相談にのっている体臭・多汗研究所の五味常明先生に、汗のニオイの原因や、におわない「いい汗」のかき方についてお話をうかがいました。

汗をかくのは脳を熱から守るため。汗をかくことは大切

くらしの現場レポート:気になる衣類のニオイを解消 毎日の洗濯で、家族を応援!』で、皆さんが衣類の汗のニオイを気にかけている様子が伝わってきました。今、ニオイの問題も含め、汗をかくこと自体を嫌がる傾向にあります。でも、汗をかくことは人間にとってとても大切な生理現象です。汗の一番の役割は、蒸発する時の気化熱によって体温上昇を防いで、一定に保つこと。体温調節をするのは、体内の細胞や器官、特に、脳を熱から守るためです。脳は熱に弱いので、暑さを感じると体に汗をかかせて体温調節をして熱くなりすぎないように守ります。人間は脳が発達したからこそ、他の動物よりも汗をかくための機能、汗腺も発達したのです。人間にとって汗をかくことはとても大切なことです。

汗には「いい汗」と「悪い汗」がある

汗の原料は血液です。汗腺は血液の血球を除いた血しょうをくみ取って汗として排出します。この時、汗腺のろ過機能が働いて、汗から塩分やミネラルなど体に必要な成分が排出されすぎないように、体に再吸収される仕組みになっています。ここが重要なポイントで、しっかりろ過されれば残りはほとんど水分で、サラサラとした「いい汗」が出ます。汗は時間がたつと、皮膚の雑菌などによってニオイが発生しますが、かきたての「いい汗」は無臭なんです。

けれども、汗腺のろ過機能がうまく働かないと、血しょうの成分が残ったままの濃いベタベタした「悪い汗」になります。「悪い汗」は水分が蒸発しにくく、体温も下げにくいことから、熱中症の予防に良くありません。しかも、「悪い汗」は含まれる成分に雑菌などが繁殖しやすくなることから、かいた直後からニオイが発生するのです。

汗をかいて汗腺を鍛え、いい汗をかける体になろう

ベタベタの悪い汗になる原因は、汗腺が正しく機能していないためです。汗腺は、比較的新しい器官なので使わなければすぐに機能が衰えてしまいます。日頃からエアコンのきいた室内でばかり過ごしていたり、運動不足などで汗をかく機会が減れば、汗腺の機能も低下しやすくなります。

人の体の中には生まれたときには500万個くらいの汗腺があるのですが、実はそのうち汗を出す「能動汗腺」は、日本人の平均で230万個くらい。つまり半分以上が休眠状態なのです。汗をかく機会が少なければ、汗腺の働きは低下してしまいます。ちなみに、能動汗腺の数は3歳くらいまででほぼ決まってしまうので、赤ちゃんの頃から汗をかかないエアコン生活をしていると、汗腺の発達の妨げになります。

汗のニオイを抑えるためには、汗腺の機能をしっかり働かせて、いい汗をたくさんかくことが大切。衰えてしまった汗腺は、「汗腺トレーニング」をすることである程度回復させることができます。トレーニング方法は、42〜43℃のやや熱めのお湯を浴槽に少なめに張り、ひじから下とひざから下だけを15分くらいつけて温めます。そうすれば、5分くらいで大量の汗が出てくるはずです。出てきた汗は風やうちわなどで蒸発させて、自然に体温を下げるようにしてください。これをくり返すことで、汗腺の機能が徐々に高まって、いい汗がかけるようになっていきます。

五味常明先生

汗のニオイが健康のバロメーターになることも

男性ホルモンの関係で皮脂腺の分泌がさかんなこともあって、男性の汗のニオイがより気になるということは確かにあると思います。男の子も思春期になれば男性ホルモンの分泌が増えますし、くわえて、エアコン生活などで汗腺機能が低下していれば、ベタベタの汗になりニオイが強くなります。

ストレスや緊張から汗をかきやすくなったり、疲れるとアンモニアがたまって疲労臭が出やすくなります。だから、帰宅後のダンナさんの汗のニオイは、仕事をがんばっている証でもあるのです。また、汗のニオイも含めて、中高年の加齢臭と言われる体臭の原因は皮脂腺の酸化です。中には「メタボ臭」と言われるものもあり、体内のコレステロールなどが酸化して、生活習慣病のリスクが高まっている可能性もあります。汗のニオイや体臭が強くなったら健康が損なわれているという可能性もあります。汗も健康のバロメーターなので、「クサイ」で片づけずに気にかけてください。

衣類は第二の皮膚。服を着ることでニオイを抑える消臭効果も!

汗をはじめ体のニオイの悩みは、人間関係の問題においても大きいと思います。自分だけならたいして気にならないけれど、社会に出ると、相手に迷惑をかけていないか、嫌われるんじゃないかと気になるのです。ニオイには「イメージ臭」という側面もあり、例えば、見た目がヨレヨレの服を着ていると、においそうに感じるけれど、清潔な洋服を着ているだけでも印象は変わります。昔は、「白=清潔」というイメージでしたが、今では「ニオイ=不潔」に清潔意識が変化しました。だから、レポートにあった、洗濯に消臭や除菌を求めているという報告はすごく納得できます。

人間は「裸のサル」と言われますが、裸で人前に出ることはまずありません。相手が嗅ぐニオイは服を通して感じるもの。つまり、衣類は人にとっての「第二の皮膚」であり、体のニオイが外にもれるのを抑えるものだと私は考えています。私の所には多汗や体臭を気にしてたくさんの方が相談に来られますが、ニオイの問題は自己否定感を伴うもので、自信喪失にもつながります。そういう人には、衣類に消臭剤をスプレーしたり、衣類に消臭機能をもたせることで、体から出るニオイを衣類で消臭する方法を私はおすすめしています。これを「経衣類消臭法」と名付けていますが、「衣類の消臭」または「衣類で消臭」することが、効果的な消臭法であると言えます。消臭・除菌効果のある洗濯洗剤は今後ますます求められてくるでしょう。
衣類の汗のニオイを抑えるためには、衣類用の消臭剤や洗濯で上手に消臭しながら、とにかくサラサラのいい汗をたくさんかくこと、これに尽きると思います。

Profile

体臭・多汗研究所所長、五味クリニック院長/医学博士 五味常明(ごみつねあき)先生

医学博士/体臭・多汗研究所所長、五味クリニック院長
五味常明(ごみつねあき)先生

1949年長野県生まれ。一橋大学商学部、昭和大学医学部卒業。形成外科学、精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら、外科的手法を組み合わせる「診療外科」を新しい医学分野として提唱、体臭・多汗治療の現場で実践。主な著書に『新・もう汗で悩まない』『デオドラント革命』『体臭恐怖』『読むだけで汗が少なくなる本』ほか。

Page Top