達人コラム

生活・料理研究家 門倉多仁亜さん
居心地のよい家族の空間の作り方

2014.11.05 | 生活スタイル

【達人コラム】生活・料理研究家 門倉多仁亜さん

今回の「達人コラム」はスペシャル版として、ドイツ人のお母様から受け継いだドイツ流シンプルな暮らしを提案する、生活・料理研究家の門倉多仁亜さんのお話を2回にわたって紹介します。前編のテーマは、「片づけ・インテリア」。家族が快適に過ごせるように、室内はいつもきれいにしていたいけど、ものがあふれて雑然となったり、片づいてはいるけれどなんとなく殺風景になってしまったり、空間づくりを難しいと感じている人は多いようです。そこで、限られた空間でも工夫しながら楽しむ収納術や、居心地のよい空間づくりについてお話を伺いました。

人生の半分は整理整頓。「指定席」を決めて戻すこと

ドイツ人は、家にいる時間をとても大切にしています。仕事が終わったら外に飲みに行くよりも、早く家に帰ってくつろぎたいという気持ちが強い。当然、室内がきれいになっていた方がくつろげますから、散らかさないようにみんなが心がけます。
また、外で友達と会うよりもお互いの家を行き来して会うことが多く、家族以外の人に部屋を見られる機会が多いので、突然の来客にも応対できるように室内をいつもきれいにしておくことがどの家庭でも習慣になっています。

ドイツには、「人生の半分は整理整頓」ということわざがあります。これは、日頃から整理整頓をしておけば、探しものに無駄な時間を費やすことはないという意味です。ものには指定席があり、出したものはまたそこに戻す。私も子どもの頃からそう教えられてきたので、それは今でも習慣になっています。ものを出したら指定席に戻すことを家族一人ひとりの習慣にすることで、自然と部屋は片づいてくるものです。

ものを出したら戻すことを実践し、すっきりと片づいている門倉家のリビング。シンプルな白壁のモダンなマンションの一室が、植物や絵画を効果的に飾ることで温かみのある空間に。

ものを出したら戻すことを実践し、すっきりと片づいている門倉家のリビング。シンプルな白壁のモダンなマンションの一室が、植物や絵画を効果的に飾ることで温かみのある空間に。

今必要なもの、気に入ったものだけ、手元に残す

部屋をすっきりと片づけるには、必要なものだけを選択して持つということも大切です。家という箱の大きさは決まっているのだから、物理的にその中に収まる分量しか持てない。収まらなくなったら、見直し・整理する必要があります。
私は今年5月に引っ越しをしてキッチンが狭くなったので、コーヒーメーカーと電子レンジを処分しました。電子レンジがなくても鍋でなんとかなるし、コーヒーメーカーは来客用で頻繁に使うものではなかったので、なくても困りません。食器もカジュアルなものと少しエレガントなものがあれば雰囲気はつくれるので、この2種類を残してかなり整理しました。

持ちものの見直しが必要になったとき、処分する基準は「場所に収まらなくなったもの」「なくても代用できるもの」「使う頻度の少ないもの」としています。私にとって必要でなくなったもの、使わないものは、とりあえず「処分かご」に入れて、いっぱいになったらその都度リサイクルショップに送っています。まだ使えるものを捨ててしまうのは心苦しいけれど、だれかの役に立つかもしれないと考えれば思いきって手放すことができるので、処分先を決めておくのもよいと思います。

  • コンパクトながら使い勝手がよさそうな多仁亜さんのキッチン。掃除のしやすさも考えてカウンターにはなるべくものを置かないようにしているとのこと。

    コンパクトながら使い勝手がよさそうな多仁亜さんのキッチン。掃除のしやすさも考えてカウンターにはなるべくものを置かないようにしているとのこと。

  • 一時保管の「処分かご」。いずれは家から出て行くものなので、出しやすいように玄関の近くに置いておく。

    一時保管の「処分かご」。いずれは家から出て行くものなので、出しやすいように玄関の近くに置いておく。

一緒に使うものはまとめて。「隠す収納」で見た目もすっきり

私はどちらかといえば大ざっぱな性格なので、「見せる収納」は性に合いません。ものをきれいに並べて飾ることは私にとってはストレス。だから、私の場合は「隠す収納」です。食器はガラス扉の食器棚ではなく、アンティークの帳場だんすや着物だんすの引き出しの中に仕切りをつけて収納し、一緒に使うもの、似たようなものは、なんとなく1カ所にまとめて整理しておきます。分類の仕方も大ざっぱですが、その方が使いやすいので私は満足しています。

パンチボウルやピッチャーなどは、たんすの上や部屋の片隅などにさりげなく「出しっ放し収納」。もともとは引き出しに収納しきれなくて置いたのですが、なんとなくきれいで雰囲気があるので、これはこれでインテリアとして「あり」かなと楽しんでいます。

着物だんすの引き出しを開けると、グラスや食器がずらり。こんなふうに自由な発想でアレンジを楽しむのも多仁亜さん流。

着物だんすの引き出しを開けると、グラスや食器がずらり。こんなふうに自由な発想でアレンジを楽しむのも多仁亜さん流。

  • すぐに使うものはまとめて出しておけば、段取りもいい。これは翌日のクリスマス用の撮影のために準備したもの。食器を乗せている木箱はご主人の実家のある鹿児島でよく使われるモロブタ(つきたての餅や蕎麦を並べる木箱)。ここにも遊び心がたっぷり。

    すぐに使うものはまとめて出しておけば、段取りもいい。これは翌日のクリスマス用の撮影のために準備したもの。食器を乗せている木箱はご主人の実家のある鹿児島でよく使われるモロブタ(つきたての餅や蕎麦を並べる木箱)。ここにも遊び心がたっぷり。

自分の好きなものばかりだから、長く付き合っていける

ドイツ人は小さい頃から、自分が好きなもの嫌いなもの、その理由を考える機会が多いため、自分の好みやスタイルがはっきりしています。自分のスタイルが見つかると、流行に左右されることもなくなって、ものの選択がずいぶんラクになります。不要な買い物も減るので、結果、手元にあるのは本当に好きなものばかりになり、長く付き合っていくことができます。

この部屋も私が好きなもの、大切にしているもので満たされています。傷つけてはいけないような繊細な家具では気を遣ってストレスになるので、家具もジーンズのようにラフに扱えて、傷や汚れが風合いになるものを選んでいます。気に入っているのはアンティークの家具。マンションは壁が白いので殺風景になりがちですが、年季の入っているものがあると温かみがプラスされます。高価なものよりも好きなものに囲まれていることが、わが家にとっては居心地のよい空間なのです。

  • 古い帳場だんす。温かみがあるうえ、和だんすは奥行きがあってものがたくさん入るところもお気に入りポイント。

    古い帳場だんす。温かみがあるうえ、和だんすは奥行きがあってものがたくさん入るところもお気に入りポイント。

  • 同じ材質よりも、金属、ガラス、陶器、布、グリーンなど異なる材質のものをミックスして並べたほうがまとまり感が出てきれいに見える。

    同じ材質よりも、金属、ガラス、陶器、布、グリーンなど異なる材質のものをミックスして並べたほうがまとまり感が出てきれいに見える。

居心地のよい空間は、家族みんなで考え、築いていく

殺風景でない空間づくりのアイデアとして、みんなの視線がぱっと集まる部屋の中心になる場所「フォーカルポイント」をつくるのもよいと思います。昔の日本だったら床の間、ドイツなら暖炉がその役割ですが、今は無機質で大きなテレビがドーンとリビングの中心に来ているお宅が多いのではないでしょうか。絵や花、グリーンなどを飾ってフォーカルポイントをつくると、空間の印象がずいぶんと変わってきます。

くらしの現場レポート:大掃除は慣例から1年のけじめへ 若年主婦は普段軽め、年末「まとめて」が掃除スタイル』で、皆さんが家族のための居心地のよい空間づくりに前向きだという報告を聞き、それはとても素敵なことだと感じました。それならばぜひ、リビングでどんなふうに過ごしたいのかを家族みんなで考えて意識してみてはいかがでしょうか。思い描く居心地のよさは、それぞれ少しずつ違うかもしれないので、主婦だけががんばるのではなくて、みんなで協力してつくっていくのが理想的。家族の空間づくりには、インテリアだけでなくコミュニケーションも大切です。家族みんなにとって居心地のよい場所になれば、気持ちよく過ごすためにきれいな状態をキープしよう、片づけようと、一人ひとりの行動につながっていくのではないでしょうか。

  • 玄関からリビングへの入口にまず1つめのフォーカルポイント。鮮やかな花と絵が温かく迎えてくれる。

    玄関からリビングへの入口にまず1つめのフォーカルポイント。鮮やかな花と絵が温かく迎えてくれる。

  • リビングのフォーカルポイントは存在感のある着物だんすを中心に、大きめの絵や自然の息吹が感じられる観葉植物で構成。

    リビングのフォーカルポイントは存在感のある着物だんすを中心に、大きめの絵や自然の息吹が感じられる観葉植物で構成。

Profile

生活・料理研究 門倉多仁亜(かどくらたにあ)さん

生活・料理研究家
門倉多仁亜(かどくらたにあ)さん

1966年神戸生まれ。ドイツ人の母、日本人の父を持つ。父の転勤などで、日本、ドイツ、アメリカで育つ。幼い頃、ドイツ人の祖父母と暮らす中で自然と家事が身につく。国際基督教大学を卒業後、外資系証券会社に勤務。結婚後、夫とともにロンドンへ行き、「ル・コルドン・ブルー」にて料理を学ぶ。帰国後は料理教室のほか、雑誌やテレビなどでドイツのライフスタイル全般を紹介する仕事をしている。著書に『タニアのドイツ式整理術完全版』、『ドイツ式暮らしがシンプルになる習慣』『タニアのドイツ式部屋作り』ほか。

Page Top