赤ちゃんとママ・パパのための情報
「バイバイ」と言って手を振るとしぐさをまねたり、名前を呼んで「ハーイ」と手を上げて促すと同じようなしぐさをしたり…。上手にできると、何だかとっても知恵がついたような気がします。でも、パターン化したこのようなしぐさは、言葉の意味を理解して起こす行動ではありません。その証拠に、バイバイと手を振っていても、お母さんの姿が実際に見えなくなったりすれば後を追って泣くこともあるでしょう。違った名前を呼んでも「ハーイ」と聞くと反射的に手を上げることもあるかもしれません。
そんなもので、言葉はよくありませんが「赤ちゃん芸」にすぎないのです。
そうであっても、教えたり教えてできたことを喜ぶのはかまわないのですが、できなくてもがっかりしないでください。赤ちゃんは猿回しの猿ではないのですから、無理に仕込んでまねをさせる必要はないと思います。決まったパターンの芸を仕込むより、むしろ日常生活の中で自然に大人のしぐさを見て、興味を持って自発的にまねることのほうが、ずっと意味があります。子どもは興味のないことは真似をしません。
そんな視点で赤ちゃんのしぐさを見てみましょう。本当に何もまねをしませんか? 1歳では、まだそんなに目立たないかもしれませんが、よく観察していると、お母さんの様子を見てまねてブラシを頭に当てていたり、ティッシュをさかんに引き出していたりと、一人前のしぐさをしていることに気づくはずです。いたずらのように見えるこんなことも、まねで覚えた知恵です。そして、教えられたことでないだけに価値があります。
日常生活での行動をまねで覚えさせたいのなら、ふだんから「おはよう」「こんにちは」とあいさつで頭を下げたり、いただきますと手をあわせたりという自然なふるまいを見せるほうがずっと効果的であり、言葉の意味と動作が結びつきます。
医学博士、日本小児科学会認定医、子どもの心相談医。1987年筑波大学卒。1994年筑波大学大学院博士課程修了筑波大附属病院、(株)日立製作所水戸総合病院、茨城県立こども病院で研修。1996年4月より現職。
手を振ってバイバイとか、ほっぺをたたいて「おいしい、おいしい」とか、繰り返し教えていますが全然しません。
(NONKO 1歳)