知りたい!教えて! 内臓脂肪!

Q若くても油断禁物!?

A

若いころの肥満は将来のリスクを高めます。油断は禁物です。

男女別にBMI25以上の肥満の割合を年齢ごとに見てみると、男性は20代から30代にかけて、女性は50代以降で肥満の割合が急増しています。しかも、男性ではその90%以上が内臓脂肪型肥満で、女性でも中高年齢者では内臓脂肪型肥満の割合が高まっています。
結婚する、子供が生まれる、仕事で夜遅くの食事が増える、デスクワークやリモートワークが増えるなど、生活環境の変化が要因として考えられます。今、内臓脂肪が多くないからと言って、同じ生活を続けていると、将来、内臓脂肪が蓄積してしまうかもしれません。内臓脂肪は、あなたの生活習慣を反映して変化するので、内臓脂肪のケアを早くから始めることが大切です。

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Q痩せていても危険!?

A

はい。痩せていても、内臓脂肪が多い人はいるんです。
たとえば、ラグビー選手とメタボ気味のサラリーマンを比べると、体の大きなイメージのあるラグビー選手の方が内臓脂肪が多いと思われがちですが、そうでないケースもあるんです。

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※BMI(Body mass index)は、身長の二乗に対する体重の比で体格を表す指数です。BMI=体重(kg)÷身長(m)2

ラグビー選手は筋肉が多く、内臓脂肪面積は85cm2というケースがある一方、メタボ気味のサラリーマンは……おなかの断面で一目瞭然ですが、体重が少なくても内臓脂肪面積が125cm2というケースがあります。この場合、メタボ気味のサラリーマンの内臓脂肪は、ラグビー選手と比べてもかなり多いことが分かりますね。
サラリーマンよりもBMIが約6高いラグビー選手の方が、内臓脂肪が少ないということから「内臓脂肪量は、見た目の“太っている、やせている”だけでは判断できない」ということがわかりますね。
ラグビー選手はたくさんの量を食べますが、日々トレーニングで身体を鍛えています。それに比べてメタボ気味のサラリーマンは、食べる量は普通か、ちょっと食べすぎ程度でも、運動はほぼゼロ……のような生活を送っているのでは?! その生活習慣が、内臓脂肪量の差となるんですね。

Q男性の肥満の9割が「内臓脂肪型肥満」!?

A

そうなんです。男性の肥満の9割以上は内臓脂肪型肥満といわれています。女性の場合は、更年期以降には内臓脂肪型肥満の方が多くなります。
男女別にBMI25以上の肥満の方の中で、内臓脂肪型と皮下脂肪型の割合をみると、男性の9割以上はどの年代でも内臓脂肪型肥満ということが分かります。女性は、女性ホルモンの影響で、内臓脂肪より皮下脂肪がつきやすいのですが、更年期以降は女性ホルモンが減少して内臓脂肪がつきやすくなります。

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Q更年期以降は太りやすくなる!?

A

女性ホルモンが影響しています。年齢とともに基礎代謝が低下するだけでなく、女性は特に、更年期に差し掛かると、ホルモンバランスの乱れも生じてきて、太りやすい体質になってしまいます。
「最近太りやすくなっちゃって。それに、コレステロールも高くなってねぇ…」とは、閉経を迎える女性によく聞かれる話ですが、それはいったいなぜでしょう?
大きな原因としては、「女性ホルモン量の変化」が挙げられます。女性ホルモンには、内臓脂肪より皮下脂肪をつきやすくする作用があります。更年期以降は、その働きを行っている女性ホルモンが激減するために、内臓脂肪型肥満の割合が増加してしまうのです。
また、女性ホルモンには悪玉コレステロールの上昇を抑える作用もありますので、更年期以降は悪玉(LDL)コレステロールが増加しやすい、すなわち脂質異常症にもなりやすいのです。
となればより一層、食事に注意し、運動する習慣を継続しないといけません。脂質異常症は自覚症状がないため、血液検査で定期的に状態を調べておくことも大切です。また、若いうちから内臓脂肪がつきにくい生活習慣を身につけておくことが、閉経後に急に脂肪を増やさないための予防にもつながります。

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※BMI(Body mass index)は、身長の二乗に対する体重の比で体格を表す指数です。BMI=体重(kg)÷身長(m)2

Q男女で腹囲の基準が違うのはなぜ?

A

男女で皮下脂肪のつきやすさが違うからです。
メタボリックシンドロームの診断基準は、内臓脂肪面積100cm2に相当する腹囲です。100cm2に相当する腹囲は、男性では85cm、女性では90cmと、女性の方が5cm長くなっています。
これは、女性は皮下脂肪がつきやすく、内臓脂肪が男女とも同じ100cm2たまった時、女性は男性と比べて皮下脂肪も多くたまっているので、その皮下脂肪分、5cm長いのです。

Q内臓脂肪が増えると、病気が起こりやすくなるのはなぜ?

A

内臓脂肪は様々な人間の生体維持にかかわる物質を産生・分泌しているからです。
内臓脂肪は単に中性脂肪をためるエネルギーの貯蔵庫としての役割の他に、アディポカインという生理活性物質を作り、身体機能を調節しています。
アディポカインには、いいことをしてくれる“善玉”と、悪さをする“悪玉”があります。善玉としては、インスリンの効きを良くするアディポネクチン、悪玉としては、血栓を作りやすくして動脈硬化を進行させるPAI-1、インスリンを効きにくくして血糖値の上昇を引き起こすTNF-α、血管を収縮させ血圧値の上昇を引き起こすアンジオテンシノーゲン等、種々あります。内臓脂肪がたまり過ぎると、悪玉が増え、善玉が減るために、代謝関連疾患の頻度や重症度が高まります。内臓脂肪の蓄積を管理することは、高血圧、脂質異常症、糖尿病、動脈硬化性疾患を予防する観点で重要です。

監修:日本肥満予防症協会 副理事長 宮崎滋先生
1971年東京医科歯科大学医学部卒業。糖尿病、肥満症、メタボリックシンドロームの診療に従事。「よりよい特定健診・保健指導のためのスキルアップ講座」などを企画、開催。東京逓信病院外来統括部長・内科部長・副院長を経て、2012年より新山手病院・生活習慣病センター長、2015年より公益財団法人結核予防会理事・総合健診推進センター所長に就任。日本肥満学会副理事長、肥満症診療ガイドライン作成委員長等歴任。東京医科歯科大学医学部臨床教授。

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