内臓脂肪とは? 体脂肪・ 皮下脂肪との違い

ヒトは、食事で摂取した栄養を体内で消費して、活動に必要なエネルギーを産生します。エネルギーとして使われなかった栄養素は、脂肪に変換され、体内に蓄積されます。

この体内に蓄積された脂肪(体脂肪)には、内臓脂肪と皮下脂肪があります。
内臓脂肪は、胃、腸などの臓器のまわりにつく脂肪のことです。体のエネルギーが不足した際に素早くエネルギーに変換される脂肪で、言わば普通預金型のエネルギー源です。
一方、皮下脂肪は、下腹部・腰まわり・おしりなどの皮下につく脂肪のことで、いったんたまると減りにくい脂肪で、言わば定期預金型のエネルギー源です。
体脂肪は、内臓脂肪と皮下脂肪を合わせた総称です。

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脂肪組織からは、生理活性作用のある“アディポカイン”という物質が分泌されます。そのアディポカインの産生量は、皮下脂肪と比べて内臓脂肪で高く、内臓脂肪が身体機能を調整していることが分かってきました。加えて、内臓脂肪は、臓器を正しい位置に保ったり、外界からの衝撃を和らげることで重要な臓器を保護する役目も果たしていますので、全くない方が良い、というものではありません。
しかし、内臓脂肪の蓄積量が多くなるにつれ、アディポカインの分泌異常が起きると、高血圧、脂質異常、高血糖などを生じ、メタボリックシンドロームと呼ばれる動脈硬化が進行しやすい状態を引き起こすリスクにつながることから、ため過ぎないように、気をつけないといけない脂肪です。

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健康診断と内臓脂肪

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放っておくと、いろいろなリスクを引き起こす内臓脂肪。手遅れになる前に気をつけ始める、そのきっかけに有効なのが「健康診断」です。
皆さんは、健診結果をきちんと見ていますか? 中身をよく確認せずそのまま放置していませんか?
内臓脂肪なんて、測っていたかなぁ?
そんな方も多いのでは。

内臓脂肪を正確に検査をするには、腹部をCTスキャンする必要がありますが、簡単には測定できません。そのため一般的な健康診断では、内臓脂肪の多さを反映していると考えられている腹囲(ウエスト周囲長)で診断します。
注意する目安値は、男性の方は85cm、女性の方は90cmです。この数値は、CTスキャンで測定した「内臓脂肪面積100cm2」に相当する腹囲として、メタボリックシンドロームの診断基準にもなっています。

※女性は皮下脂肪がつきやすい為、男女で基準が異なっています。

<メタボリックシンドロームの診断基準について>
2005年に日本内科学会など8医学会によって策定されたメタボリックシンドローム診断基準*1には、内臓脂肪蓄積の指標としての腹囲基準と、血清脂質、血圧、血糖値の基準が設定されています。内臓脂肪面積が100cm2以上に相当する腹囲は、男性で85cm以上、女性で90cm以上として基準が設けられています。男女で基準値が異なっているのは、女性は皮下脂肪がつきやすいためです。その腹囲の基準値に該当し、かつ、血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上の項目が基準値に該当すると、「メタボリックシンドローム」と診断されます。
2008年、厚生労働省は、特定健康診査・特定保健指導制度を導入しました。40歳から74歳の全員に腹囲の測定を行います*2 。メタボリックシンドローム該当者、または予備軍と判定された対象者には、特定保健指導を行うことが義務付けられました。

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*1 メタボリックシンドローム診断基準検討委員会:メタボリックシンドロームの定義と診断基準, 日本内科学会雑誌 94(4), 188-203, 2005
*2 厚生労働省:特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準, 厚生労働省令第157号, 平成19年12月28日

監修:日本肥満予防症協会 副理事長 宮崎滋先生
1971年東京医科歯科大学医学部卒業。糖尿病、肥満症、メタボリックシンドロームの診療に従事。「よりよい特定健診・保健指導のためのスキルアップ講座」などを企画、開催。東京逓信病院外来統括部長・内科部長・副院長を経て、2012年より新山手病院・生活習慣病センター長、2015年より公益財団法人結核予防会理事・総合健診推進センター所長に就任。日本肥満学会副理事長、肥満症診療ガイドライン作成委員長等歴任。東京医科歯科大学医学部臨床教授。

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