専門医に聞く!マタニティお悩みQ&A
2026.08.26 New
#妊娠中はNG?

インフルエンザにかかったらどうしよう?と不安です。妊婦がインフルエンザの予防接種を受けても大丈夫ですか?その場合、赤ちゃんへの影響が気になります。(妊娠7カ月)
回答した専門医

産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美 先生
よしかた産婦人科 院長
横浜市立大学産婦人科 客員教授
プロフィールを読む
日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。大学病院で臨床研究を通して若手医師の育成に携わると同時に、国際出産イニシアティブ(ICI)に関東圏で初めて認証された分娩施設の院長も務める。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。
妊娠中もインフルエンザの予防接種は受けることができます。むしろ、妊婦さんがインフルエンザに感染すると重症化しやすい傾向があるため、普段よりも注意が必要です。
流行期に入る前に、予防接種を受けることを検討しましょう。
なお、インフルエンザワクチンがおなかの赤ちゃんに悪影響を与えることはほぼないと考えられていますので、安心してください。
インフルエンザの予防接種は安全性が確認されているので、妊娠中のどの時期に受けてもよいとされています。さらに予防効果を高めるためには、ママ本人だけでなく、一緒に暮らすご家族みんなで予防接種を受けることが理想的です。
インフルエンザのワクチンには、ウイルスなどの病原体の感染する能力を失わせた「不活化ワクチン」と、病原体の毒性を弱めて作られた「生ワクチン(点鼻タイプ)」の2種類があります。
妊婦さんは生ワクチンを接種してはいけないことになっているので、受けるのは必ず不活化インフルエンザワクチンになります。この不活化ワクチンであれば、妊娠中のどの時期に接種しても問題はありません。
予防接種を受けてから実際に免疫がつくまでには、だいたい2~3週間ほどかかります。そして、ワクチンの効果が続くのは、免疫がついてからおよそ5カ月間と考えられています。
インフルエンザの流行期は通常1月上旬から3月上旬なので、逆算して10月~12月中旬の間に予防接種を済ませておくのがよいでしょう。
ママが妊娠中に予防接種を受けると、作られたインフルエンザの抗体が、胎盤を通して赤ちゃんにも届けられます。その結果、生まれたあとの赤ちゃんは、生後しばらくの間、ママからもらった抗体に守られるということです。生後6カ月未満の赤ちゃんはインフルエンザのワクチンを接種することができないため、妊婦さんの予防接種は、生まれてくる赤ちゃんを守ることにもつながります。
インフルエンザワクチンは、その年にもっとも流行すると予想されるウイルスを使って製造されます。そのため、実際に流行したウイルスとワクチンの型が異なってしまう可能性もあります。予防接種は「絶対に感染を防ぐもの」というよりは、「発症や重症化を防ぐために受けるもの」と理解しておきましょう。
また、ワクチンに含まれる卵の成分によるアレルギーや、防腐剤(エチル水銀)の影響が気にかかる人もいるかもしれません。しかし、これらはごく微量しか含まれていないため、ほぼ問題はないとされています。それでもご不安がある場合は、1人で悩まず、産院の医師に相談してみてください。

インフルエンザの流行期は、通常1月上旬~3月上旬ですが、年によってはもっと早くから流行が始まることもあります。妊娠中は感染すると重症化しやすいため、感染した場合にどのようなリスクがあるのか確認しておきましょう。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因で起こる風邪の一種です。主な症状としては、咳やのどの痛み、鼻水といった普通の風邪のような症状に加えて、悪寒や頭痛、倦怠感、関節痛などの全身症状が見られます。そして、38度以上の高熱が出ることが大きな特徴です。
妊娠中はどうしても免疫力が低下するため、妊婦さんはインフルエンザなどの感染症にかかりやすく、また感染した場合には重症化しやすいといわれています。
感染したからといって、胎盤を通しておなかの赤ちゃんに直接ウイルスが感染するようなことはありません。一方で、ウイルスによるママの体の炎症が、妊娠の経過に影響を与えてしまう可能性はあります。
ママがインフルエンザにかかっても、ウイルス自体が赤ちゃんに直接的な影響を与えるわけではありません。ただ、炎症によって子宮収縮が起こりやすくなるため、流産や早産につながる心配があります。
また、とくに妊娠初期に感染した場合は、ママの高熱が原因となって、赤ちゃんの先天性異常が増える可能性があるという報告もされています※。
もしインフルエンザに感染してしまったら、病状が進行するのを抑えるために、なるべく早く抗インフルエンザ薬を使用することをおすすめします。
妊娠中は重症化しやすいため、早期治療が重要です。抗インフルエンザ薬はどの薬剤も赤ちゃんへの悪い影響は無いとされており、安全に使用できます。38度以上の熱が出たときはもちろん、「普通の風邪かな?インフルエンザかな?」と迷うような症状であっても、我慢しすぎず、まずはかかりつけの産院に電話で相談してみましょう。

インフルエンザの予防接種を受けたからといって、100%感染を防げるわけではありません。次にご紹介する日常の予防策は、インフルエンザ以外の感染症にも有効ですので、ぜひ毎日の習慣にしてみてください。
外から帰宅したら、まずは手洗いとうがいをしっかり行いましょう。また、外出時にも除菌グッズなどを持ち歩き、気になるときにすぐ使えるようにしておくと安心です。
流行の時期にお出かけする際は、マスクを着用し、できるだけ人混みを避けるようにして感染を防ぎましょう。もし上のお子さんがいる場合は、保育園や学校での流行状況を気にかけておくことも大切です。
体の免疫力を下げないためには、疲労やストレスをため込みすぎないことが大切です。毎日の睡眠をしっかりととり、栄養バランスのよい食事を心がけながら、ご自身の抵抗力を整えていきましょう。

もしインフルエンザになってしまった場合、治療薬は感染してから48時間以内に服用することが効果的です。「もしかして」という症状がある場合は、早めに産院へ電話で連絡し、指示に従って受診してください。検査でインフルエンザの感染が確認されれば、妊婦さんでも使える治療薬や、症状をやわらげるお薬が処方されますので安心してください。
インフルエンザの治療薬には、内服薬のオセルタミビルやバロキサビル マルボキシル、吸入薬のザナミビルやラニナビル、そして点滴薬のペラミビルなどがあります。
このうち、オセルタミビル、ザナミビル、ラニナビルなどは、妊娠中に使用しても安全性が高いと考えられています。
発症から48時間以上が経過してしまうと、インフルエンザの治療薬の効果はあまり期待できなくなります。しかし、そのような場合でも、解熱鎮痛薬や漢方薬などを使ってつらい症状をやわらげることができます。
妊娠中に使える解熱鎮痛薬としては、アセトアミノフェンが安全性が高いといわれています。
まだ症状が出ていなくても、同居するご家族など身近な人がインフルエンザにかかってしまった場合は、「予防投与」という形でお薬を使うことができます。
これは、インフルエンザを発症した人と接触してから48時間以内に、7~10日間服用することが推奨されています。ただし、この予防投与は健康保険の適用外となります。
インフルエンザは、予防接種を受けるリスクよりも、実際に感染してしまったときのリスクのほうがはるかに高い病気です。とくに妊婦さんは重症化しやすいため、後手に回らず、先手先手で対策をしていくことが欠かせません。
ワクチンの効果が出るまでには約2週間かかり、いざ流行期に入ると病院が混雑してしまったり、ワクチンが不足したりする心配もあります。予防接種をご希望の場合は、10月以降の早い段階で産院に相談し、ゆとりを持って予約を済ませておくとよいでしょう。
安心して出産の日を迎えられるよう、まずはできることから始めてみましょう。
あわせて読みたい