専門医に聞く!マタニティお悩みQ&A

Q.妊婦は温泉に入っても大丈夫?注意することは?【医師が回答】

2026.08.26 New

#妊娠中はNG?

安定期に入ったら温泉に行きたいと思っているのですが、妊娠中、温泉に入っても大丈夫ですか?注意することはありますか?(妊娠4カ月)

回答した専門医

善方 裕美先生の写真

産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美  先生

よしかた産婦人科 院長
横浜市立大学産婦人科 客員教授

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日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。大学病院で臨床研究を通して若手医師の育成に携わると同時に、国際出産イニシアティブ(ICI)に関東圏で初めて認証された分娩施設の院長も務める。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。

A.温泉に入っても問題ありませんが、のぼせや転倒に注意しましょう

体調が安定し、妊娠の経過が順調であれば、基本的には温泉に入っても問題はありません。温泉には心身のリラックス効果があるだけでなく、血行をよくして妊娠中の肩こりや腰痛をやわらげてくれるメリットもあります。
一方で、妊娠中はどうしてものぼせやすく、おなかが大きくなってくると、濡れた床で滑って転倒するリスクも高まります。
長湯を避けてこまめに水分補給をする、浴室の中ではゆっくり移動するなど、安全への配慮は忘れないようにしましょう。

妊婦は温泉に入っても大丈夫

温泉に入る妊婦

温泉施設の脱衣所などで、温泉に入ってはいけない「禁忌症」の欄に、「妊娠」という文字を見たことがある人もいるかもしれませんが、現在では「妊婦さんが温泉に入っても問題はない」と考えられています。では、そもそもなぜ「妊婦は温泉禁止」というイメージが広まってしまったのでしょうか。その理由は改正前の法律(温泉法)にあるようです。

「妊婦は温泉禁止」はなぜ広まったのか

日本の温泉に関するルールを定めた「温泉法」では、温泉施設の中に温泉の成分や禁忌症などの情報を掲示することが義務付けられています。1982年に環境庁(当時)から出された通知では、温泉に入ってはいけない一般的な状態として、重い心臓病や高度の貧血などと並んで、「妊娠中(とくに初期と末期)」という記載がありました。つまり、国として「妊婦さんは温泉に入らないでください」と明記されていたのです。

しかし、その後に医学的な見地から改めて検討された結果、妊娠中の温泉入浴を禁止する明確な根拠はないということがわかりました。このため、2014年の法改正によって、温泉の一般的禁忌症から「妊娠中」という記載は削除されました。

赤ちゃんへの影響はあるの?

温泉の成分が、胎盤を通しておなかの赤ちゃんに何らかの悪影響を与えることはありません。ただし、普段の入浴でも同じことがいえますが、いくつか気をつけておきたいことはあります。
まず、高温のお湯や長時間の入浴は、ママ自身がのぼせて気分が悪くなってしまう心配があります。また、浴室の床は温泉の成分も相まって滑りやすくなっているため、転倒には十分な注意が必要です。

さらに、「温泉で感染症をもらってしまわないか」と心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。これに関しては、公共の浴場である以上、感染のリスクがゼロとは言い切れませんが、温泉に入ること自体が直接的な感染の原因になることはまずないと考えてよいでしょう。

ただ、公衆トイレでの感染リスクと同様、洗い場の椅子や、湯船の周りの「石」などに直接座ると感染源になる可能性もあります。妊娠中はどうしても免疫力が低下しがちなので、直接は座らずにタオルを敷くなど、気をつけたほうがよいでしょう。お部屋についている貸切風呂を利用したりするなど、少し気をつけておくとより安心です。

泉質によっては肌への刺激に要注意

妊娠中はホルモンの変化もあって肌が敏感になりやすく、普段なら何ともないような刺激にも反応してしまうことがあります。そのため、酸性泉や硫黄泉といった少し刺激の強い泉質では、かゆみなどの肌トラブルが起きてしまう可能性もあります。
ご自身の肌に不安がある場合は、アルカリ性の泉質のような、肌への刺激がやさしい温泉を選んでみるとよいでしょう。

妊娠期別の注意点

温泉

妊娠中に温泉へお出かけするのに最も適しているのは、つわりが落ち着いて体調が安定し、かつ、おなかがまだそれほど大きくなっていない妊娠中期(安定期)といわれています。だからといって、妊娠初期や後期に入ると絶対に入ってはいけない、というわけではありません。
妊娠期ごとに気をつけておきたいポイントを解説します。

妊娠初期(〜13週)の温泉

妊娠初期は、まだ胎盤が完成しておらず、ママの体調も揺らぎやすい状態にあります。つわりに悩まされている人も多いでしょう。温泉特有のにおいや、少しののぼせがきっかけで急に気分が悪くなってしまう心配もあるため、無理をして温泉に出かけるのは控えておいたほうが無難です。
もし、つわりが落ち着いていて体調がよい日であれば入浴しても構いませんが、万が一の体調変化に備えて、すぐにかかりつけの産院を受診できるような近場の施設を選んでおくことをおすすめします。

妊娠中期(14~27週)の温泉

妊娠16週ごろになると胎盤も完成し、体調がずいぶんと安定してきます。もし温泉旅行を計画するのであれば、この妊娠中期が一番おすすめです。
ただし、少しずつおなかが大きくなり、重心が変わり始める時期でもあります。浴場内を歩くときは、滑って転倒しないよう、足元を確かめながら慎重に移動してください。また、体に負担をかけないよう、高温のお湯や長湯は避けましょう
そして、意外と忘れがちなのが入浴前後の水分補給です。妊娠中の脱水は、おなかの張りを引き起こす原因になることもありますので、意識してお水を飲むようにしてください。

妊娠後期(28週〜)の温泉

妊娠後期に入ると、おなかがかなり大きくなって足元が見えにくくなります。そのため、浴場での転倒にはこれまで以上に細心の注意が必要です。手すりがある場所ではしっかりつかまり、ゆっくりと移動することを心がけましょう。また、ママの心臓にかかる負担も大きくなっているため、熱いお湯や長湯は控えてください。

そして、お産というものは必ずしも予定日どおりに始まるわけではありません。温泉にお出かけする前には、念のため産院を受診して、おなかの張りなどお産の兆候がないかを確認し、医師に相談しておくと安心です。 なお、臨月(妊娠10カ月)に入ると、いつ陣痛が始まってもおかしくない時期となりますので、この時期の温泉旅行はお休みしておきましょう。

妊婦が温泉を安全に楽しむための7つの対策

温泉に友人と入る妊婦

温泉はママの心身をリラックスさせ、妊娠中の肩こりや腰痛をやわらげてくれるなど、よい面もたくさんあります。無理のない範囲で安全に楽しんでいただくために、次の7つのポイントを参考にしてください。

長湯を避ける

妊娠中はママの体の中を巡る血液の量が増えているため、普段の感覚で入浴していると、思いのほかのぼせやすくなっています。気持ちがよいからと長湯をするのは避けておきましょう。

温度は40度以下を目安に

お湯の温度が高すぎるとすぐにのぼせやすく、ママの心臓にも負担がかかってしまいます。体も心もリラックスさせるためには、38〜40度くらいの少しぬるめのお湯にゆっくり浸かるのがおすすめです。

転倒・滑りに細心の注意を(濡れた床・段差)

温泉の泉質によっては、浴場の床が石鹸を使っていなくてもとても滑りやすくなっていることがあります。おなかが大きくなると足元が見えにくく、バランスも崩しやすくなります。手すりがある場所では必ずつかまり、段差にも気を配りながら、転倒にはくれぐれも注意してください。

空腹・体調不良時は入らない

空腹の状態で温泉に入ると、血糖値が下がって立ちくらみを起こしやすくなります。妊娠中はおなかの重みでバランスを崩しやすいため、ほんの少しのふらつきが思わぬ転倒につながるかもしれません。これを防ぐためにも、空腹時の入浴は避けてください。
また、「なんだかだるい」「熱っぽい」「めまいがする」など、少しでもいつもと違う不調を感じたときは、無理に入浴せず、お部屋でゆっくり体を休めるようにしましょう。

なるべく1人で入らない

浴場ではできるだけ1人にならないように工夫してみましょう。もし周囲に誰もいない状況で気分が悪くなったり倒れたりしてしまうと、誰にも気づかれず対応が遅れてしまう心配があります。万が一のときにすぐ手助けしてもらえるよう、ご家族やご友人など、誰かと一緒に入るとより安心です。

水分補給を忘れずに

ぬるめのお湯であっても、温泉に浸かっていると体からは意外なほど汗が出ています。妊娠中の脱水はおなかが張る原因になってしまうことがあるため、こまめな水分補給がとても大切です。入浴の前後には、コップ1杯のお水や麦茶などをしっかり飲むようにしてください。

サウナや岩盤浴の利用は控える

高温のサウナは、ママの心臓に大きな負担をかけてしまうため、妊娠中にはおすすめできません。「低温なら大丈夫かな?」と思うかもしれませんが、それでも脱水症状を起こしたり、のぼせて気分が悪くなったりする心配があります。
岩盤浴についても同様に、脱水やのぼせのリスクがあるため、妊娠中は控えておくのが無難といえます。

事前にかかりつけ医に相談しよう

基本的には妊娠中に温泉に入っても大丈夫です。ただし、それはあくまで「現在の体調が安定していること」が前提となります。これまで妊娠の経過が順調だったとしても、妊娠中の体調はいつ変化するかわかりません。
温泉旅行などに出かける予定を立てる際には、直近の妊婦健診のときなどに、担当の医師に一度相談してみてください。

また、これまでに切迫流産や切迫早産と言われたことがなくても、おなかの張りが続いている、少し出血があるといった場合には、必ず産院を受診しましょう。問題がないことを確認できてから、安心してお出かけするようにしてください。

体調管理をした上で温泉を楽しもう

心身のリラックス効果や、血行を促して肩こりや腰痛をやわらげてくれるなど、温泉には妊婦さんにとってうれしい効果がたくさんあります。しかし、そうしたメリットを実感ができるのも、安全に利用できてこそです。
お出かけ前にはきちんとかかりつけの医師に相談し、当日のご自身の体調を何よりも最優先に考えましょう。「少し慎重すぎるかな?」と思うくらいにゆとりを持って行動し、無理のない範囲で温泉を楽しんでみてください。

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