専門医に聞く!マタニティお悩みQ&A

Q.妊婦がむくみやすい原因は?足などのむくみの解消法を知りたい【医師が回答】

2026.08.26 New

#マイナートラブル

最近、おなかが重くなってきたのと同時に、足がむくみやすくなってきました。夕方には下半身が重だるくて、動くのが嫌になります。妊娠週数が進むと、むくみは悪化するのでしょうか?むくみをなくす方法はありますか?(妊娠6カ月)

回答した専門医

善方 裕美先生の写真

産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美  先生

よしかた産婦人科 院長
横浜市立大学産婦人科 客員教授

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日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。大学病院で臨床研究を通して若手医師の育成に携わると同時に、国際出産イニシアティブ(ICI)に関東圏で初めて認証された分娩施設の院長も務める。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。

A.妊娠中は複数の要因が重なってむくみやすくなります。まずは下半身の血流を促し、塩分を控えるなどの対策を心がけてみましょう

妊娠中は、体内を巡る血液量の増加やホルモンバランスの変化、そしておなかが大きくなることによる体形の変化など、いくつかの要因が重なることで、どうしてもむくみやすくなってしまいます。むくみを予防したりやわらげたりするためには、下半身の血行を促してあげることが大切です。また、塩分を少し控えめにした食生活もおすすめです。

妊婦がむくみやすい5つの原因

足のむくみに悩む妊婦

妊娠するとむくみやすくなる原因は1つではありません。主な要因として5つのことが考えられますが、このうち前半の3つ(ホルモンバランスの変化、循環血液量の増加、子宮が大きくなる)は、多かれ少なかれすべての妊婦さんに当てはまる体の自然な変化です。

①ホルモンバランスの変化

妊娠すると女性ホルモンのバランスが大きく変化し、水分や栄養素などが毛細血管の外へ漏れ出やすい状態になります。また、体内にナトリウム(塩分)が蓄積されやすくなるため、体は増えたナトリウムの濃度を一定に保とうとして、さらに水分をため込もうとします。その結果、むくみやすくなります。

②循環血液量の増加

妊娠中、ママの体の中を巡る血液の量は、最大で妊娠前の1.5倍ほどにまで増えます。血液の中には赤血球などのほかに多くの水分も含まれているため、全体の水分量が増えることで、自然とむくみが起こりやすくなります。

③子宮が大きくなる

赤ちゃんが成長して子宮が大きくなってくると、骨盤の太い静脈が圧迫されるようになります。そのため、とくに下半身の血流が心臓へ戻りにくく滞りがちになり、足がむくみやすくなります。

④運動不足

妊娠中は激しい運動ができなくなりますし、おなかが張ったりして日常の動作をセーブすることも増えるため、どうしても運動量が減り、血行が悪くなりがちです。
血行が滞ると、本来なら血液によって運ばれるはずの水分や老廃物が細胞の間にたまってしまい、これがむくみの原因になります。
また、足を動かさないことでふくらはぎの筋肉量が落ちると、血液を心臓へ押し戻すポンプの働きが弱まってしまうことも、足のむくみにつながります。

⑤睡眠不足やストレス

睡眠不足が続いたりストレスを感じたりすると、体内に疲労物質である活性酸素がたまりやすくなり、体の水分調節を担う機能が低下してしまうと考えられています。その結果、むくみが生じやすくなることも少なくありません。

妊娠中、むくみが現れやすい時期と部位

足のむくみに悩む妊婦

妊娠中は全期を通してむくみやすい状態が続きますが、その中でもとくにむくみが出やすい時期や部位について解説します。

むくみが現れやすい時期

妊娠9カ月ごろを迎えると、体内の循環血液量の増加がいよいよピークに達します。また、この時期はおなかの赤ちゃんがぐんと成長して子宮がかなり大きくなることに加えて、ママの運動量も減る傾向にあるため、妊娠期間の中でもとくにむくみを感じやすくなります。

妊婦がむくみやすい部位

心臓から遠く、重力の影響でどうしても水分が下にたまりやすい足は、妊娠していない方であってもむくみやすい部位です。妊娠中は、さらに大きな子宮によって下半身の静脈が圧迫されてしまうため、よりいっそう足がむくみやすくなります。

また、「朝は手がむくみ、夕方以降は足がむくむ」という妊婦さんも多いです。寝ている間は血流が悪くなるため、朝起きたときは手のむくみが気になっても、動いているうちに徐々に引いていきます。一方で、1日中立ち仕事などをしていると、今度は夕方以降に足がむくんでくるというパターンがよくあります。

妊婦のむくみをやわらげる7つの解消法

マタニティヨガをする妊婦

むくみを解消するためには、体内に余分な水分がたまらないように血液の循環を促してあげることと、塩分の摂りすぎに気をつけることが基本になります。自宅でできる具体的な方法をいくつか紹介しますので、無理のない範囲で試してみてください。

①マッサージやストレッチをする

マッサージをしたり、体が気持ちよく伸びる程度のストレッチを習慣にしたりして、血行を促しましょう。とくにおすすめしたいのが足のマッサージです。
ふくらはぎの筋肉は、血液を心臓へ戻す大切なポンプの役割を果たしています。お風呂上がりなど、体が温まっているときに妊娠線ケア用のオイルや保湿クリームを使って滑りをよくし、下から上へと優しくなで上げるようにマッサージしてみましょう。
また、ひざの裏にはリンパ節が集まっていますので、ここに手を当てて軽く引き上げるように刺激するのもよいでしょう。

②足を高く上げて休む

夜眠るときは、下半身にたまった血液が心臓へ戻りやすくなるよう工夫してみましょう。足元にクッションなどを置き、足が腰の位置より少し高くなるようにして休むのがおすすめです。
また日中起きているときも、立ち仕事を長時間続けたり、ずっと同じ姿勢で座りっぱなしでいたりするのは控え、家事や仕事の合間に足を少し高いところに乗せて休ませてあげてください。

③着圧ソックスを使用する

着圧ソックスは、ふくらはぎの筋肉に適度な圧力がかかるように設計されており、この圧力によって静脈の血流を物理的にサポートしてくれます。
圧力の強さや長さ、素材などさまざまなタイプが市販されていますが、締めつけすぎはかえってよくありません。ご自身のサイズに合った、心地よいと感じる適度な圧迫感のものを選んでみましょう。

④塩分は控えめに、カリウムを積極的に摂る

食事の面では、塩分(ナトリウム)を摂りすぎると体内に水分がたまりやすくなるため、味付けを少し薄めにするなどの工夫が必要です。
一方で、ブロッコリーやバナナなどに豊富に含まれるカリウムには、体内の余分なナトリウムを外へ排出し、水分のバランスを整えてくれる働きがあります。
また、ミネラルやたんぱく質をしっかり摂ることも体内の水分調整に役立ちますので、バランスのよい食事を心がけてみましょう。

⑤骨盤ベルトを装着する

日中起きている時間帯は骨盤ベルトを適切に装着し、大きくなった子宮が骨盤の下の方へ下がりすぎないように支えてあげることも、血流の圧迫を防ぐむくみ対策になります。

⑥適度な運動を取り入れる

おなかの張りがなく体調がよいときは、ウォーキングやマタニティヨガなど、無理のない範囲で体を動かすこともよいでしょう。血液の循環を促すだけでなく、気分転換になってリラックス効果も期待できますし、出産やその後の育児に向けた体力作りにもつながります。

⑦冷え対策をする

体が冷えると血管が縮こまって血流が悪くなり、むくみがさらに悪化してしまいます。
基本の冷え対策として、暑い季節であってもシャワーだけで済ませず、なるべく湯船につかりましょう。冷房で熱中症対策をしつつ、足や腰まわりをカイロなどで温めるのも効果的です。
とくに足元は冷えやすいため注意が必要です。足の冷えを感じたら、38~40℃くらいの少しぬるめのお湯で「足湯」をするのもおすすめです。血行が促されると共に、リラックス効果も期待できます。

危険なむくみもある!病院を受診する目安

手のむくみが気になる妊婦

むくみは心臓から遠い足や手の指に現れやすく、朝起きたときよりも夕方にかけて強くなるのが一般的です。「夕方になると足が太く感じる」「靴下のゴムの跡がくっきり残ってしまう」という場合は、むくみが生じている可能性が高いといえます。

ただし、夕方にむくみを感じても、一晩休んで翌朝にはすっきりと治まっているのであれば、生理的な変化ですので過度な心配はいりません。気をつけたいのは、休んでもむくみが引かない場合や、ほかの症状を伴う場合です。そうしたケースでは、背後に何らかの病気が隠れている可能性もあります。

要注意のむくみ症状

急激に全身がむくみ始めた、片方の足だけに強いむくみがある、足に痛みや腫れを感じる、息苦しさを感じる、といった症状がある場合は、妊娠や出産に関連した病気を発症している可能性も考えられます。
また、顔までパンパンにむくんでいる場合は、心臓や腎臓、甲状腺などの働きに異常が起きているサインかもしれません。このようなときは、迷わずすぐに産院へ連絡してください。

なお、1週間のうちに体重が1kg以上も急激に増えたり、手の指がこわばって曲げにくかったりする場合も、全身に水分がたまっている可能性があります。念のため産院に相談してみるとよいでしょう。

むくみ症状から疑われる、妊娠中の要注意な病気

妊娠高血圧症候群
妊娠20週以降に血圧が高くなる病気です。妊婦さんの10~20人に1人の割合で起こるといわれ、決してめずらしくありません
初期のころはママ自身が気づける症状が「むくみ」くらいしかないことも多く、妊婦健診での血圧測定や尿検査、体重の変化のチェックが早期発見の重要な手がかりになります。

深部静脈血栓症
妊娠によって大きくなった子宮に下半身の静脈が強く圧迫されることで血流が滞り、血管の中に血栓(血の塊)ができやすくなってしまう病気です。妊娠後期から出産直後にかけて発症しやすく、片方の足だけに痛みや強いむくみが現れるのが特徴といえます。

周産期心筋症
出産の前後に発症することがある、心臓の病気です。心臓の筋肉の収縮する力が弱まってしまうため、血液を全身へしっかりと送り出せなくなり、心不全のような状態を引き起こします。足だけでなく全身のむくみ、動悸、息苦しさ、咳などの症状が現れます。

極端なむくみが続く場合は1人で悩まず産院へ

妊娠中の足のむくみは、本当に多くの妊婦さんが経験するマイナートラブルです。なので、夕方にだるさを感じても翌朝にはよくなっている程度であれば、まずは過剰に心配せず、ご自身に合った解消法を無理のない範囲で試してみてください。

一方で、休んでもなかなか引かない長引くむくみや、全身の急激なむくみなどは、体からのSOSのサインである可能性もあります。「ただのむくみ」と我慢しすぎず、少しでも不安に感じる場合は、早めにかかりつけの産院に相談してみましょう。

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