
2026.08.26 New
#妊娠中はNG?
妊娠中はママとおなかの赤ちゃんの健康を守るために、食べたり飲んだりするのを避けておきたいものや、量を控えたほうがよいものがあります。
一方で、妊娠前よりも積極的に摂ったほうがよい栄養素もあります。妊娠中の食生活について、気をつけるポイントと取り入れたいものを正しく整理して、おなかの赤ちゃんの健やかな成長を応援していきましょう。
監修した専門医

産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美 先生
よしかた産婦人科 院長
横浜市立大学産婦人科 客員教授
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日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。大学病院で臨床研究を通して若手医師の育成に携わると同時に、国際出産イニシアティブ(ICI)に関東圏で初めて認証された分娩施設の院長も務める。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。
妊娠中は母体の免疫力が低下するため、普段よりも食中毒などの感染リスクが上がってしまいます。
また、ママ自身には影響がなくても、食べたものの一部が胎盤を通じておなかの赤ちゃんに届き、発育に悪影響を与えてしまう可能性があるためです。つまり、ご自身の体を守るだけでなく、赤ちゃんの健やかな成長を守るために、食事に少し配慮をしていただく必要があるということです。

「あれもダメ・これもダメ」と言われると、少し窮屈に感じてしまうかもしれませんが、絶対に食べてはいけないものは、実はそれほど多くはありません。また、同じ食材でも中までしっかり火を通せば安心して食べられるものもたくさんあります。
まずは、赤ちゃんの発育に影響を及ぼすリスクがあるものを知っておきましょう。
アルコールは胎盤を通しておなかの赤ちゃんに直接届き、発育に影響を与えてしまいます。なので、妊娠がわかった時点から、ビールやワイン、日本酒、カクテルなど、種類を問わずお酒はお休みしましょう。
アルコールを摂りすぎると、胎児性アルコール症候群といって、赤ちゃんの発育が遅れたり、先天異常や知的発達の障害につながったりすることがあると考えられています。「コップ1杯くらいなら」と思うかもしれませんが、どれくらいの量なら安全かということは、はっきりとはわかっていません。このため、リスクを避けるために禁酒していただくことが大切です。
どうしてもお酒の気分を味わいたいときは、ノンアルコール飲料を取り入れてみるのもよいでしょう。ただし、なかには1%未満のアルコールを含むアルコールテイスト飲料もあるため、注意が必要です。
十分に火が通っていないお肉には、リステリア菌やその他の細菌(大腸菌O157、サルモネラなど)が存在している可能性があります。表面は焼けているように見えるローストビーフや肉のパテなども、中までしっかり加熱されていないことがあるので注意してみましょう。
もしママがリステリア菌による食中毒を起こすと、胎盤を通って赤ちゃんも感染し、流産や早産、あるいは出生後の赤ちゃんのトラブルにつながる心配があります。
また、加熱が不十分なお肉には、トキソプラズマという寄生虫が潜んでいることも少なくありません。妊娠中にはじめてトキソプラズマに感染すると、流産の原因になることがあります。
さらに、おなかの赤ちゃんに感染した場合には先天性トキソプラズマ症を発症し、目や脳・神経などに障害が起こるリスクもあるので、お肉を食べるときは中心まで十分に加熱するよう心がけてください。
スモークサーモンは、過去にリステリア菌による食中毒が報告されています。妊娠中は免疫力が下がっているため、リステリア症にかかるリスクが普段の約20倍にもなるといわれています※。
感染すると流産や早産、新生児の髄膜炎などのリスクがあるため、できるだけ避けたほうが安心です。
一方で、カキなどの貝類は食中毒を起こす細菌やウイルスをため込みやすい性質があります。とくに生ガキはノロウイルスの原因になりやすいため、妊娠中はお休みしておきましょう。
お寿司やお刺身などの生の魚介類は、まれに食中毒の原因になります。食べる場合は新鮮なものを選び、衛生面に十分に気をつけてください。
また、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどに寄生するアニサキスにも注意が必要です。アニサキスによる食中毒がおなかの赤ちゃんに直接感染することはありませんが、ママが激しい腹痛や嘔吐に見舞われることがあります。
ナチュラルチーズや、牧場などで売られている加熱殺菌されていない牛乳、アイスクリームなどにも、リステリア菌が潜んでいる可能性があります。リステリア菌は、冷蔵庫のような低温環境や、塩分の高い食品の中でも増殖できるという特徴を持っています。そのため、とくに加熱殺菌を行っていないカマンベールチーズやブルーチーズなどは、妊娠中は避けておくのが無難です。
ただし、すべてのナチュラルチーズが危険というわけではありません。日本国内の大手メーカーが販売しているナチュラルチーズの多くは、原料となる乳をしっかり加熱殺菌しているため、比較的安全と考えられています。また、製造する過程で加熱処理が行われているプロセスチーズであれば、リステリア菌の心配はないので、食べても大丈夫です。

絶対に口にしてはいけないわけではありませんが、飲む量や食べる量に少し気をつけたいものもあります。これらは、たくさん摂りすぎると赤ちゃんに影響を及ぼすリスクがあるため、まずはそれぞれの目安を知っておきましょう。
カフェインには血管を収縮させる働きがあるため、たくさん摂りすぎると胎盤への血流が悪くなり、赤ちゃんに酸素や栄養が届きにくくなる可能性があります。また、過剰な摂取は赤ちゃんが低体重で生まれるリスクを高めるという報告もあるため、できるだけ控えるようにしてみましょう。
コーヒーであれば、1日に1〜2杯程度なら許容範囲といわれています。とはいえ、妊娠をきっかけにカフェインレスの飲み物に切り替えてみるのもおすすめです。
カフェインと聞くとコーヒーがまず思い浮かぶかもしれませんが、エナジードリンクにも注意が必要です。商品によってはコーヒー以上にカフェインが含まれているものがあり、さらに糖分の摂りすぎにもつながるため、妊娠中や授乳中は控えておきましょう。
カフェインの多い飲み物(浸出液100ml当たりに含まれるカフェインの量)
本マグロやキンメダイ、メカジキといった大型の回遊魚は、自然界に存在するメチル水銀をやや多く含んでいることがあります。これを長期間にわたって過剰に食べ続けると、赤ちゃんの中枢神経に影響を及ぼす心配があります。
ただし、水銀が多い魚であっても1週間に1回程度(約80g)、水銀が少し多い魚なら1週間に2回程度(約160g)であれば問題ないと考えられています。一方で、サバ、イワシ、サンマ、アジなどのいわゆる青魚は、メチル水銀の心配がないうえに、赤ちゃんの脳や神経の発達に欠かせないDHAやEPAが豊富です。なので、魚を避けるのではなく、種類を選びながら上手に取り入れてみましょう。
ビタミンAは赤ちゃんの発育に必要な栄養素ですが、妊娠初期に動物性のビタミンAを大量に摂取すると、赤ちゃんの先天異常の要因になる可能性があるといわれています。うなぎやレバーなど、ビタミンAが豊富な食品は少し控えめにしてみましょう。
厚生労働省が定める1日あたりの耐容上限量は2,700µg RAEとされており、これは焼き鳥のレバーでいえば約3分の2本分にあたります。ただし、この上限量は「毎日この量までなら食べてもリスクがない」という基準なので、一度たくさん食べてしまったからといってすぐに危険が及ぶわけではありません。たまに楽しむ程度であれば、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。
昆布などに多く含まれるヨウ素は、大量に摂りすぎると赤ちゃんの甲状腺機能が低下してしまう心配があります。しかし、日常の食事で使う程度の量であれば問題ありませんので、過度に心配しなくても大丈夫です。
また、ひじきには無機ヒ素が含まれているため注意が必要という見方もありますが、ひじきを食べて健康被害が起きたという報告はこれまでありません。これも、毎日大量に食べ続けるのでなければ心配ありません。一方でひじきには食物繊維や鉄分が豊富に含まれているため、適量であればむしろ妊娠中におすすめの食材といえます。

妊娠中は、ママが食べたものが赤ちゃんの体をつくります。だからといって完璧を求める必要はありませんが、少し意識を向けておきたいポイントが時期ごとにあります。
妊娠期ごとの変化に合わせた食生活のポイントをご紹介します。
妊娠期間を通して、お酒はお休みする必要があります。
一方で、意識して摂りたいのが「葉酸」です。葉酸はビタミンB群の1つで、赤ちゃんの体の形成にとても大切な役割を果たします。とくに妊娠前から初期にかけてしっかり葉酸を摂ることで、赤ちゃんの神経管閉鎖障害という先天異常のリスクを減らすことができるといわれています。食事からの摂取(240µg)に加えて、サプリメントなどから1日400µgを補うことが厚生労働省から推奨されています。
また、妊娠初期はつわりが始まり、吐き気などで食べられるものが限られてしまう方も少なくありません。「栄養が足りないのでは」と不安になるかもしれませんが、この時期の赤ちゃんはまだとても小さいので、過度に心配する必要はありません。まずは、食べられるものを、食べられるときに口にするだけで大丈夫です。ただし、低血糖や脱水を防ぐためにも、水分と少しの糖質はこまめに摂るように心がけましょう。
つわりが少しずつ落ち着いてきたら、栄養バランスや体重の増加ペースを意識した食事にシフトしていきましょう。
葉酸は妊娠中期以降も引き続き大切な栄養素ですが、サプリメントに頼りすぎず、まずは食事から摂ることを基本にしてみてください。そのうえで不足分をサプリメントで補う場合は、摂りすぎると亜鉛の吸収を妨げてしまうことがあるため、1日の摂取上限である900〜1,000µgを守るようにしましょう。
また、妊娠が進むとママの体内の血液量が増える一方で、赤ちゃんと胎盤の成長のためにたくさんの鉄分が必要になるため、貧血(鉄欠乏性貧血)になりやすくなります。赤身の肉や魚、大豆、小松菜など、鉄分を多く含む食材を取り入れてみましょう。動物性たんぱく質やビタミンCと組み合わせて食べると、鉄分がより効率よく吸収されます。
さらに、赤ちゃんの骨や歯をつくるために、カルシウムも不足しないようにしましょう。日本人女性はもともとカルシウムが不足しがちだといわれています。ママ自身の骨粗しょう症を予防するためにも、妊娠中期からはとくに牛乳やヨーグルト、大豆製品、小魚、切り干し大根などを意識して食べてみましょう。きのこ類などに含まれるビタミンDと一緒に摂ると、カルシウムの吸収率が上がります。
疲れているときなど、外食やコンビニのお弁当に頼りたくなる日もあるでしょう。無理をして毎日手作りする必要はありません。ただ、外食やコンビニ食は、どうしても塩分やカロリーが高くなりがちです。
たとえば、丼ものや麺類などを食べるときは、野菜もしっかり摂れるメニューを1つ追加してみましょう。コンビニでお昼を買うときも、おにぎりと菓子パンといった炭水化物の組み合わせではなく、おにぎり(主食)に、ゆで卵やサラダチキン(主菜)、そして野菜や豆のサラダ(副菜)を組み合わせるように意識するだけで、ぐっとバランスがよくなります。
また、濃い味付けや油分の多い食事は、塩分や糖分・脂質の摂りすぎにもつながります。塩分の摂りすぎは妊娠糖尿病などのリスクを高め、糖分や脂質は体重の増えすぎにつながってしまいます。商品を選ぶときは、パッケージの裏にある栄養成分表示を見て、塩分(ナトリウム)量やカロリーを確認する習慣をつけてみるのもよいでしょう。
【関連記事】

妊娠中は、ママと赤ちゃんの健康のために、いろいろな食材からバランスよく栄養を摂ることが基本となります。毎日の献立を考えるときに思い出していただきたいのが、「まごわやさしい」というキーワードです。これは、毎日の食事に取り入れたい食材の最初の文字を覚えやすく並べたものです。
「これは避けたほうがいい」という知識があっても、ふと「じゃあ、これはどうなの?」と不安になることもあるでしょう。妊婦さんからよく寄せられる疑問にお答えします。
「避けたほうがよいと知らずに食べてしまった」「妊娠がわかる前にお酒を飲んでしまった」と後から気づいて、心配になることはよくあることです。今現在その食品を摂取したことで不調がなく、妊婦健診で赤ちゃんの元気な様子が確認できているのであれば、ご自身を責めたり過度に心配したりする必要はありません。
大切なのは、気づいた時点から気をつけていくことです。水銀が少し多い魚を食べてしまった場合も、長期間にわたって何日も連続して食べ続けたのでなければ、赤ちゃんに悪影響を及ぼすリスクはほぼないと考えてよいでしょう。
日本では、卵がサルモネラ菌に汚染されている確率はとても低く、0.003%程度といわれています。新鮮なものであれば生や半熟で食べても基本的には問題ありません。ただし、サルモネラ菌は温度が高いと増殖しやすくなるため、買ってきた卵はすぐに冷蔵庫に入れ、必ず賞味期限内に食べるようにしましょう。
蜂蜜にはボツリヌス菌が混入していることがあるため、腸内環境がまだ整っていない1歳未満の赤ちゃんには絶対に与えてはいけません。しかし、大人であるママが蜂蜜を食べても、ママ自身やおなかの赤ちゃんに悪影響が及ぶことはありません。妊娠中であっても、安心して召し上がってください。
市販の栄養ドリンクには、少量のアルコールや多めのカフェイン、あるいは大量のビタミンAや生薬成分などが含まれていることがあります。疲れているときは頼りたくなるかもしれませんが、妊娠中はできるだけ避けておいたほうが安心です。
料理の香りづけや風味づけに使う程度の量であれば、しっかり加熱することでアルコール分は蒸発してしまいます。料理に使う分には、おなかの赤ちゃんへの影響を心配しなくても大丈夫です。
妊婦さんが食べてはいけないもののポイントをまとめると、つまり「アルコールはお休みする」「お肉や魚介類は中心までしっかり火を通す」といった基本を押さえておけば、そこまで神経質になりすぎる必要はないということです。
「あれもダメ、これもダメ」とストレスをため込むよりも、「まごわやさしい」を合言葉に、いろいろな食材を取り入れることが大切です。そうすることで、ママと赤ちゃんにうれしい、栄養バランスのよい食生活にすることができるでしょう。
迷うことがあれば、妊婦健診の際に遠慮なくかかりつけの医師や助産師に相談してみてください。
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