専門医に聞く!マタニティお悩みQ&A
2026.08.26 New
#おなかの赤ちゃん

つわりが落ち着いたら食欲が戻り、体重が増え始めました。妊娠中はどのくらいのペースで体重が増えるのがよいのでしょうか?(妊娠5カ月)
回答した専門医

産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美 先生
よしかた産婦人科 院長
横浜市立大学産婦人科 客員教授
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日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。大学病院で臨床研究を通して若手医師の育成に携わると同時に、国際出産イニシアティブ(ICI)に関東圏で初めて認証された分娩施設の院長も務める。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。
妊娠中の体重増加は「プラス10kgが目安」といわれていた時代もありましたが、現在では、 妊娠前の体格に応じて、一人ひとり適切な体重増加の目安を出すようになっています。
妊娠中は、体重が増えすぎても、逆に増えなさすぎても、ママと赤ちゃん双方へのリスクが上がってしまいます。まずはご自身の体格に合った、無理のない適切な体重増加のペースを知ることから始めてみましょう。

妊娠中の適切な体重増加量は、全員が同じというわけではありません。ママ自身の妊娠前の体格によって、目指すべきペースは異なります。まずは、ご自身にとって適切な体重増加の目安がどのくらいなのかを説明します。
妊娠前の体格が「やせ型」「普通」「肥満」のどの範囲にあたるのかを確認するために、まずはBMI(Body Mass Index:体格指数)という指標を使います。この数値を計算することで、ご自身の体格に合った体重増加の目標が見えてきます。
BMIは、妊娠前の体重をもとに算出します。以下の式に当てはめて計算することで、自分の体格区分を知ることができます。
BMI=妊娠前の体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
妊娠中の体重増加量の目安*1
妊娠中の体重増加は、単におなかの赤ちゃんが大きくなった分の重さだけではありません。妊娠中は、非妊娠時よりもママの体に脂肪がつきやすくなります。これは、おなかの中で成長する赤ちゃんに十分な栄養を届けるため、そして産後の授乳期に備えるための大切な変化です。
さらに、胎盤や羊水の重さに、大きくなった子宮や乳房、さらには妊娠前よりも増える血液や水分の重さも加わります。これらすべてを合わせると、普通体型の人で出産までに10~13kgほど体重が増えるのが、適正な変化だと考えられています。

妊娠中はどのくらいのペースで体重が増えていくのが理想的なのでしょうか。その1つの目安となるのが、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータをもとに作成された「妊娠中の体重増加曲線※1(外部サイトへリンク)」です。
この体重増加曲線は体格ごとに異なるため、ご自身の体格に合ったグラフを確認してみましょう。いずれの場合も、体重の増加量がグラフの下線と上線の間におさまっていれば、適正なペースで増えているといってよいでしょう。
BMIが18.5未満の「やせ型」にあたる妊婦さんは、下記が体重増加の目安になります。
BMIが18.5以上25未満の「普通体型」にあたる妊婦さんは、下記が体重増加の目安になります。
BMIが25以上30未満の「ちょっと太め」にあたる妊婦さんは、下記が体重増加の目安になります。
BMIが30以上の妊婦さんは、個別での対応が必要となり、上限5kgまでの増加が1つの目安となります。かかりつけの医師や助産師とよく相談しながら、無理のない体重管理を行っていきましょう。
妊娠中は、ママと赤ちゃんのために必要な体重増加量はしっかりとキープしつつ、適正なペースを目指して管理をすることが大切です。
体重が増えすぎると、赤ちゃんが大きくなりすぎる巨大児分娩や帝王切開などのリスクが高まり、一方で体重増加が少なすぎると、低出生体重児や早産のリスクが高まってしまうからです。
妊娠中に体重が増えすぎてしまうと、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などを発症する確率が高くなります。こうした合併症は、ママ自身の体だけでなく、おなかの赤ちゃんにもダメージを与えてしまうことがあります。
また、赤ちゃんが大きくなりすぎる傾向があるうえに、産道に脂肪がついて通り道が狭くなるため、難産になったり、帝王切開での分娩になったりすることも少なくありません。さらに、体重が急激に増えることで、ママの体に大きな負荷がかかり、腰痛やひざ痛といった不調も起こりやすくなります。
体重が増えすぎたときに考えられるリスク
妊娠中の体重増加が少なすぎると、赤ちゃんに十分な栄養が届かず、低出生体重児(2,500g未満で生まれた赤ちゃん)や早産のリスクが高くなってしまいます。
また、小さく生まれた赤ちゃんは、将来、肥満や糖尿病などの生活習慣病を発症しやすいこともわかっています。ママ自身にとっても、分娩や産後の子育てに必要な体力が不足してしまったり、産後の母乳の出が悪くなったりする心配があります。そのため、体重はただ抑えればよいというわけではなく、「適正に増やす」ことが大切です。
体重が増えないときに考えられるリスク

体重管理において一番大切なのは、何といってもバランスのよい食事です。妊娠中から授乳期間にかけては、赤ちゃんの発育のために非妊娠時よりも多くのエネルギーが必要になります※2。
具体的には、妊娠していないときの摂取カロリーに対して、妊娠初期でプラス50kcal、妊娠中期でプラス250kcal、妊娠後期でプラス450kcal、そして授乳中はプラス350kcalが目安とされています。
ママ自身の体と赤ちゃんの健やかな成長に必要な栄養はしっかりと摂ったうえで、食べ方の工夫や適度な運動を取り入れながら、適切な体重増加を目指していきましょう。
栄養バランスのよい食事とは、ママと赤ちゃんに必要な栄養素をまんべんなく摂れる食事ということです。
難しく考えすぎず、厚生労働省のサイトで公開されている「妊産婦のための食事バランスガイド※3(外部サイトへリンク)」などを参考にしてみるとよいでしょう。特定の食材に偏らないよう、毎日の食事内容を簡単に記録してみるのもおすすめです。
食事は、①野菜やキノコ類、②大豆やお肉・お魚などのタンパク質、③最後にご飯やパンといった炭水化物の順番で食べるようにすると、体重の増えすぎ予防に役立ちます。
この順番で食べると、野菜に含まれる食物繊維が糖の消化・吸収を穏やかにして、血糖値の急上昇を防いでくれるのに役立ちます。その結果、脂肪をため込もうとするインスリンの過剰な分泌を抑えることができるからです。
夜遅い時間の食事は、糖や脂質の代謝を下げてしまうため、体脂肪を増やす原因になります。できれば、夕食は18~19時くらいまでに済ませておくのが理想的です。
油の摂取量を減らすために、炒め物や揚げ物よりも、蒸したりゆでたりする調理法を多めに取り入れてみましょう。電子レンジでの加熱をうまく利用すれば、調理の手間も省けて一石二鳥です。
塩分(ナトリウム)を摂りすぎると、体内に余分な水分がたまり、むくみによる体重増加を招いてしまいます。妊娠高血圧症候群を予防するためにも、妊娠中は意識して塩分を控えめにしてみましょう。
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もし医師から安静の指示が出ていないのであれば、日々の家事や散歩、マタニティヨガ、ストレッチなど、無理のない範囲で適度に体を動かす習慣をつけてみてください。
お風呂上がりなど、毎日同じタイミングで体重を測る習慣をつけておきましょう。体重測定を日課にしておくことで、少し食べすぎてしまったり、生活のリズムが乱れたりした場合でもすぐに変化に気づくことができ、軌道修正がしやすくなります。
妊娠中の体重管理については、さまざまな疑問や不安がつきものです。妊婦さんからよく寄せられる質問についてお答えします。
体重が急に増えてしまうと焦る気持ちはわかりますが、だからといって、食事を1回抜いたり、極端に炭水化物を減らしたりするようなダイエットはおすすめできません。妊娠中は、おなかの赤ちゃんの発育のために十分な栄養を届ける必要があります。
まずは必要なエネルギーをしっかりと満たしたうえで、お菓子などの糖質や、脂質の摂りすぎを見直してみましょう。食べる量を極端に減らすのではなく、内容を工夫し、適度に体を動かすことで調整していくことが大切です。
現在、日本には双子などの多胎妊娠における明確な体重増加の推奨値はありません。しかし、おなかの赤ちゃんの人数が多い分、妊娠中の体重増加量が増えることや、1週間あたりの増加のペースが大きくなることはわかっています。
双子を妊娠している場合は、妊娠高血圧症候群などの合併症のリスクが通常よりも高くなります。単純な「体重管理」というよりも、合併症の予防に気を配りながらバランスのよい食事を心がけることがより重要になります。
また、双子妊娠は早産になりやすいため、妊娠後期以降に無理をして運動をする必要はありません。具体的な体重増加の目安については、1人で悩まずに産科の医師と個別に相談してみましょう。
妊娠中は体重が増えすぎても、増えなさすぎてもよくありません。まずはご自身の体格に合った適正な体重増加量をしっかりと把握し、それを目標にして無理のない管理を続けていきましょう。
毎日完璧にこなす必要はありません。なかなか思うように体重管理ができないと感じたときは、ご自身を責めたり、1人で抱え込んだりせず、産院の助産師や医師に相談してみてください。一緒にあなたに合った方法を見つけていきましょう。
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