代謝研究30年

肥満と代謝
肥満、つまり「体脂肪や内臓脂肪が蓄積した状態」は、食事から摂取するエネルギー量(エネルギー摂取量)とヒトに本来備わる代謝に基づくエネルギー消費量のアンバランスによって引き起こされます。このような天秤のアンバランスを元に戻すには、食事からの摂取カロリーを減らすことや運動量を増やすことが考えられます。一方、ヒトは年を重ねる毎に、エネルギー代謝が衰えます。10代~20代の頃に食べていた食事量を、40代~50代まで続けると、当然、エネルギー代謝が衰えている分、脂肪が蓄積します。美味しく食事をしながら、体重を維持するには、エネルギー代謝を維持することが理想です。
花王では、ヒトが本来持っている代謝に着目し、このアンバランスを解消し、内臓脂肪の蓄積を予防、改善することを目指し、研究を進めております。
24時間「日常」のエネルギー代謝を測定
花王はヘルシアを発売する前の1990年代に脂質代謝の研究をスタートして以来、約30年にわたって「代謝」研究を継続して行っています。
食事から摂るエネルギー量は食事のカロリー計算により算出できますが、ヒトのエネルギー消費量の測定は、そう簡単ではありません。脂質代謝をはじめとするヒトのエネルギー代謝は、呼気中の酸素および二酸化炭素濃度を測定する間接熱量測定法による場合がほとんどです。これは、ヒトがエネルギーを生成する際には食物から摂取した栄養素と酸素が化学反応を起こし、二酸化炭素を産生するという生理的なメカニズムを利用して、呼気中の酸素および二酸化炭素の濃度と容積からエネルギー消費量を算出する方法です。
短時間のエネルギー代謝を評価する場合には、専用のマスクを装着し、呼気を溜め、ガス濃度分析器およびガスメーターを用いてその濃度および容積を計測します。こちらは活動中のエネルギー代謝動態をリアルタイムに知ることが出来ます。

一方、花王では、生体調整機能を持つ食品を摂取した時に代謝がどのように変化するかをより正確に測定するために部屋型の代謝測定器「ヒューマンカロリメーター」を2004年より導入しています。ヒューマンカロリメーターは、たたみ3畳ほどの小部屋で、日常生活に近い状態を続けながら、体内で起こる、酸素を利用し二酸化炭素を産生するという反応を、小部屋の空気中の酸素濃度と二酸化炭素濃度をマススペクトルで厳密に測定することで、食事中、睡眠中などあらゆる日常でのエネルギー消費量が測定できるものです。 24時間から36時間をヒューマンカロリメーターの中で過ごすことで、日常のエネルギー代謝を厳密に測定できます。日本では国立健康栄養研究所、筑波大学に次ぐ3番目、企業としては世界で初めて導入しました。
ヘルシアの効果をさらに検証するために導入したのですが、データを取り始めると食事や運動、睡眠の状況で測定結果が変わることが分かりました。そこでヒューマンカロリメーターを使って様々な生活における代謝を測定してデータを蓄積しました。さらに、他の研究機関と情報を共有し、努力を重ねること約10年、ようやく一定の測定基準が見えてきました。

代謝を知り、広がる食品研究の可能性
現在は、ヒューマンカロリメーターを核とした「代謝総合評価システム」が確立しています。それにより、一般的に太ると言われてきた「遅い時間の食事」「朝食抜き」「間食」の食習慣が代謝にどう影響するのか、どういうヒトが脂質代謝が低下しているのか等、解明を進めております。更には、脂質代謝、睡眠、食習慣などを総合的に鑑みながら、「ヘルシア」のヒトでの効果検証を継続して行っています。
健康的においしく食べて、肥満を改善するために、これまでも、これからも科学的根拠を求めて、代謝研究を突き詰めて商品開発を行っていきます。

Page Top