
この記事の監修者
眼科医・医学博士(東大院)
森岡 清史さん

眼精疲労治療をのべ20万人近く治療してきた。
吉祥寺森岡眼科院長を2026年3月31日 に辞し、勤務医の傍ら眼科分野にとどまらないサイエンスを探究予定。
炭酸ガスレーザー手術が得意手技。
漫画眼科医駕那子(YouTube) 原作者。
花王株式会社
鈴木 千月香さん

花王株式会社に入社後、業務用食品添加物および特定保健用食品の研究開発に携わる。その後、家庭用医療機器の研究開発に従事し、目の不快症状に関する基盤研究から商品開発までを担当。
目次
※森岡さんは1~3、5、6のパートを、鈴木さんは4のパートを監修しています。
【目の疲れのおもな原因】
目の疲れは、日常生活の中でいくつかの要因が重なって起こる。もっとも多い原因は、スマートフォンやパソコンなどの光る画面を長時間見続けること。
画面を見ているときは、無意識のうちにまばたきの回数が減りやすい。まばたきが少なくなると涙が蒸発しやすくなり、目も乾きやすくなる。
さらに、姿勢の崩れや、長時間同じ姿勢でいることによる血流の悪化も、首や肩の凝りなどから目のまわりの筋肉に負担をかけ、目の疲れにつながる。
ほかにも、睡眠不足や生活リズムの乱れ、食事の偏りなど、日常生活による影響も含め、目が疲れる要因は多岐にわたる。

メガネやコンタクトの度数が合っていない場合や、左右の視力差がある「不同視」、強い乱視なども目の疲れの原因になります。
乱視は若いときは目の調節力でカバーできていても、年齢とともにその力が弱くなり、目の疲れとして表れることがあります。


まばたきには、目の表面を涙で覆い、乾燥を防ぐ大切な役割があり、1分間に10回以上、約6秒に1回ほどのペースで、無意識にまばたきをしているとされている。
しかし、パソコンやスマートフォン、テレビの画面を見続けているときや、作業に集中しているときは、まばたきの回数がぐっと減ってしまう。すると、涙が蒸発しやすくなり、目の乾きや疲れにつながる。
さらに、まばたきが少ない状態では、上まぶたを持ち上げたままの時間が長くなるため、まぶたの筋肉に負担がかかり、目の重だるさを感じやすくなる。

【目を休める方法の例】
作業に集中していると、気づかないうちに長い時間画面を見続けてしまう。そのため、少なくとも1時間に1回は、目を休める時間をつくることが大切。
長時間休む必要はなく、数十秒でも画面から目を離したり、遠くを見たりするだけで目への負担を軽くできる。
また、少し席を立って身体を動かすだけでも、首や肩の血流がよくなり目の疲れの予防につながる。

猫背や前かがみの姿勢が続くと、首や肩の筋肉がずっと緊張したままになる。その状態が続くと血流が悪化して、脳や目へ必要な栄養や酸素が届きにくくなる。
その結果、目にも十分な栄養が届かず、疲れがたまりやすくなる。
血のめぐりをよくするために、ときどき背筋を伸ばしたり、首や肩を回したりして身体を動かすようにしよう。

画面と部屋の明るさの差が大きいほど、目は刺激を受けやすい。画面が明るすぎても暗すぎても、目は疲れやすい状態になるため、部屋の明るさに合わせて画面を調整し、文字サイズも見やすく整えることが大切。
さらに、画面を見上げる姿勢では、目を大きく開き続けることになるため、目が乾きやすくなり、疲れの原因になりやすい。
目線より少し下に画面の位置を調整し、自然に視線を落とす「下目遣い」の姿勢をつくるのがポイント。
また、夜に画面の光を浴びると交感神経の活動が優位となり、身体が休まりにくくなる。夜に疲れをしっかり取るためにも、就寝前はブルーライトカット機能や夜間モードを使い、光の刺激をやわらげる工夫をしよう。

画面を見上げる姿勢になると、目を大きく開く必要があり、乾燥や疲れを招きやすいです。
下目遣いにするとまぶたが自然に少し下がり、目の露出面積が減るため乾きにくくなります。姿勢も目の疲れに影響するため、画面の高さには気を配りましょう。

食事を抜いたり、偏った食事が続いたりすると、目に必要な栄養も不足しやすくなる。目も身体の一部であるため、栄養が足りないと疲れが回復しにくくなってしまう。
目の奥にある網膜では、光を受けるたびに身体の中で化学反応が起こり、活性酸素が生まれる。この活性酸素を減らす働き(抗酸化作用)に関わる栄養として、ルテインやアントシアニンなどが知られている。
ただし、特定の食品だけを食べればよいというわけではなく、主食・主菜・副菜がそろった食事を意識し、まんべんなく栄養を摂ることが大切。

ブルーベリーなどに含まれるアントシアニンは目によいといわれていますが、特定の食品だけに頼るのは現実的ではありません。サプリメントによる栄養補給も選択肢として挙げられますが、体内でどの程度吸収されるかには個人差があります。
まずは、栄養バランスが偏らない食事を心がけることが大切です。

寝不足が続くと、身体の回復がうまく進まず、目の疲れも残りやすい。
睡眠中はレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返しており、このリズムが崩れると、身体の疲れが取れにくくなり、目の疲れにも影響を及ぼす。
睡眠のリズムをつくるには、遅くても就寝の30分くらい前から、身体をリラックスさせる時間を持つことが大切。

しっかりと深い眠りにつくことで、成長ホルモンの分泌も活発になります。
このホルモンは壊れた細胞の修復や疲労回復に関わるため、睡眠の量だけでなく、質も重要になってきます。

スマートフォンやパソコンなど、近くの画面を見続けていると、目のピントを調節する筋肉(毛様体筋)に負担がかかる。その結果、目の筋肉がこわばり、疲れを感じやすくなる。
少しでも疲れを感じたら、いったん画面から目を離し、遠くに視線を向けるようにしよう。
遠くを見ることで、ピント調節の筋肉がゆるみ、目がリラックスしやすくなる。
遠くを見るときは、はっきり見ようとせず、景色をぼんやり眺めるような感覚で視界を広くとることがポイント。
アメリカでは、20分画面を見たら、20秒ほど、20フィート(約6メートル)以上先を見るという「20-20-20ルール」という目の休ませ方も知られている。
ただし仕事中は、20分ごとに休憩するのが難しい場合も多いため、少なくとも1時間に1回以上は遠くを見る時間をつくることを心がけよう。

目の周辺には、「攅竹(さんちく)」「太陽(たいよう)」「承泣(しょうきゅう)」 など、疲れをやわらげやすいツボがいくつかある。
それぞれの場所を、指で軽く押したり、やさしく触れたりするだけでも、目のまわりの緊張がゆるみやすくなる。
ツボの位置が分かりにくいときは、指3本を使い、上まぶた、下まぶた、こめかみの順に、骨の部分を軽くトントンと叩こう。目のまわりには多くのツボが集まっているため、細かな位置を気にしすぎず、やさしく刺激するだけでもほぐれやすい。

目のまわりはデリケートな部分なので、強く押す必要はありません。目の周囲の骨の部分をやさしく触れる程度におこなうことが大切です。眼球を直接押さえたり、強くこすったりしないように心がけましょう。

長時間同じ姿勢で作業していると、首や肩の筋肉が固まりやすくなる。筋肉がかたくなると血のめぐりが悪くなり、目のまわりの筋肉や神経にも悪影響を及ぼす。
デスクワークの合間には、首をゆっくり回したり、肩をすくめてストンと下ろしたり、軽く身体をほぐしてみよう。

首の横にある「胸鎖乳突筋」は、胸や鎖骨につながる大きな筋肉で、気づかないうちにかたくなっていることが多いです。
手で軽くさするだけでも血流改善になるので、こまめにケアしてあげるとよいでしょう。

目の乾燥や違和感があるときは、目薬で目を潤すことで、乾燥による不快感がやわらぐ。目薬を選ぶ際は、血管収縮剤や防腐剤が入っていないものがおすすめ。
血管収縮剤入りの目薬は、血管を一時的に縮めて赤みを抑えることで、すぐに効いたように感じやすい。ただし、充血が一時的に目立たなくなっているだけで、疲れそのものが改善しているわけではない。
そのため、日常的に使い続けるのではなく、特別な予定の前など、限られた場面で使う程度を目安にしよう。ただし、使い続けることにより反動的に血管拡張が起こり、充血がより目立つようになることも。
また、防腐剤入りの目薬を使い続けると、角膜への負担につながるおそれも。

市販の目薬の中から自分に合ったものを見つけるのはなかなか難しいので、一度眼科で診察してもらい、自分の症状に合ったものを処方してもらうのがおすすめです。

目の疲れというと、目を使いすぎたことによる負担をイメージしやすいが、実際には乾きが背景にあるケースも。
眼球の表面は涙(水分+油分の膜)に覆われているため、乾燥しにくくなっており、目もとを温めると、まぶたの縁から分泌される油分が出やすくなる。
適切な油分を保持することで眼球の涙の膜が蒸発しにくくなり、目の表面のうるおいを保つことができる。結果として、乾きによる疲れの軽減につながる。
目もとを温めるのに大事なのは、強い加熱ではなく、状態を整えるための穏やかな温熱で、部分的に強く熱を当てるよりも、全体をやさしく均一に温めるのがコツ。
蒸気による温熱ケアは、身体をじんわり・心地よく均一に温めることができる。
また、40℃前後の心地よい温度で、5~10分ほど温めると、副交感神経が優位になりやすく、目もとのこわばりもやわらぐ。

とくに蒸気を使った温熱ケアは、じんわりとした心地よい温かさで包み込んでくれるので、目もとのようにデリケートな部位にも取り入れやすい。
パソコンやスマートフォンを長時間見たあとや、休憩時間、寝る前など、ちょっとしたタイミングで取り入れてみよう。
また、毎日続けることで「目の状態を維持しやすくなる」といったデータや「DEQS(ドライアイの症状・日常生活への影響)が改善した」といったデータもあるので、就寝前のルーティンとして使用するのもおすすめ。

目の疲れをそのままにしていると、1日寝ただけでは疲れが取れなくなり、頭痛・吐き気・めまいなどをともなう「眼精疲労」を引き起こす可能性も。
また、目の疲れの背景にはドライアイや視力の変化、乱視などが関係しているケースも考えられる。
視力差や角膜のトラブルは自分では気づきにくいので、違和感が続くときは、眼科で状態を確認することが大切。

とくに、コンタクトレンズを長時間装着していると、ドライアイや角膜への負担につながることもあり、知らないうちに角膜に傷がついているケースもあります。
症状が強くなくても、目の状態は自分では判断しにくいため、少なくとも年に1回は、眼科でチェックを受けることが望ましいです。

A.冷やすだけでは十分な対策になりにくい。「冷やしてから温める」ケアがおすすめ。

打撲や炎症がある場合は、患部を冷やすことで症状の悪化を防ぐ効果が期待できます。しかし、目の疲れは炎症ではないため、冷やすだけでは血流が低下し、かえって回復を妨げることもあります。
疲労対策におすすめなのは、冷やしてから温める方法です。一度冷やすことで血管が収縮し、そのあと温めることで血管が大きく拡張しやすくなるため、血流改善の効果が高まりやすくなります。
A.一定の関係がある。

老眼は、近くにピントを合わせる調節機能が低下することで起こります。
老眼の初期では「まだ見える」と無理をしてしまい、目の筋肉に負担がかかることで、目の疲れにつながってしまうケースも少なくありません。
見えづらさを感じたときは無理に見ようとせずに、メガネで調節力を補うようにしましょう。