
この記事の監修者
花王株式会社
陳 貞儒さん

花王株式会社に入社後、スキンケア製品の開発研究を担当。その後、ヘルス&ビューティケア事業部にてヘルスケア製品の開発担当を経験し、現在はヘルスケア製品の研究開発に従事。生体リズムや自律神経の視点から、睡眠や疲労感などの日常の悩みに寄り添うヘルスケアを生活者に届けることを目指す。


強いストレスや寝られないことへの不安が続くと、余計に眠りづらくなる。
仕事や人間関係に関する悩みを抱えたまま布団に入ると、そのことをずっと考えてしまい、眠りにつくまでに時間がかかってしまう。同じ内容を繰り返し考え続けると、脳が覚醒してリラックスできない。
結果として眠りが浅くなったり、夜間に目が覚めやすくなる。
生活習慣が乱れると、寝るまでに時間がかかったり、睡眠の質の低下につながりやすい。
就寝時刻と起床時刻が日によって大きく違うと、体内時計が乱れてしまう。体内時計は、「そろそろ寝る時間」と身体に知らせる役目をしている大切なリズム。
夜になると分泌される「メラトニン」という眠りのホルモンも、この体内時計に合わせて出てくる。ところが、生活リズムが乱れると、このメラトニンが出るタイミングもずれてしまう。その結果、夜になっても自然な眠気が起こりにくくなる。
寝る前の部屋の環境も、眠りやすさに大きく関わる。
部屋が明るいままでは、眠気を促すホルモンである「メラトニン」が出にくくなり、自然な眠気が起こりにくい。就寝前は照明を落とし、強い光を減らすことがポイント。
また、生活音や外部からの騒音も、知らないうちに脳を刺激して、身体を覚醒させてしまう。室温や湿度が体感に合っていない場合も、眠りづらさや中途覚醒につながる。

身体に痛みや不調があると、それだけで眠りにくくなる。
肩こりや腰痛、胃腸の不快感などが続くと、横になっても身体が気になってしまい眠れなくなってしまう。さらに、いびきがひどくて呼吸が止まりやすい「睡眠時無呼吸症候群」などの睡眠障害があると、眠っている間に何度も目が覚めやすくなり、ぐっすり眠った感じが得にくくなる。

夜に眠れない状態は、精神的ストレス・生活習慣・睡眠環境・身体要因が重なり合って生じる場合が多いです。これらを一気に見直すのは大変なので、実践しやすいことから順に変えていきましょう。
寝る前の照明調整は手軽に始められるためおすすめですよ。
横になって目を閉じるだけでも、身体を休める効果はある。
目を閉じると、光や動きなどの情報が入ってこなくなる。刺激が減ることで、身体も気持ちも少しずつ落ち着きやすい。人は五感の中でも、目から多くの情報を受け取っている。だからこそ、目を閉じるだけでも脳の負担は軽くなる。

しかし、長い間眠れないまま布団の中にいると、「早く寝なきゃ」という気持ちが強くなりやすい。あせりはストレスになり、かえって目がさえやすい。
目安は10〜20分ほど。20分くらい経っても眠くならないときは、いったん寝室を出るようにしよう。
寝室を出たあとは、少し暗めの空間で過ごす・静かな音楽を流す・好きな香りを楽しむ・ゆっくり深呼吸をするなど、気持ちがゆるむ行動をするのが効果的。

息を吐く動作は、副交感神経の働きが優位になりやすく、身体が落ち着きやすい。
目安としては、3〜4秒程度吸って、6〜8秒程度吐く。腹式呼吸は、息を吸う動作よりも吐く動作を少し長めに保つことを意識するのがポイント。
筋肉の緊張が強い状態は、心理的な緊張も高めやすい。筋肉がほぐれることで、心身が落ち着き、眠る準備が整いやすい。

寝る前には、筋肉を一度しっかり緊張させてから力を抜き、脱力の感覚を身体に学習させる「筋弛緩法」がおすすめ。やり方は部位ごとに「力を入れて抜く」を丁寧に繰り返す。
決まった順番はないが、足先や手先など末端から始めて、体幹(おなか・肩)などへ進めていくと流れが作りやすく、初めてでも実践しやすい。
夜間に強い光を浴びると、脳が覚醒してしまい眠りづらくなる。
そのため、寝る前は強い白色光よりオレンジ系の落ち着いた光を選ぶようにしよう。目に直接光を当てない間接照明にすると刺激を減らせて、脳が休息モードへ移行しやすい。
生活空間全体を一度に変えるのではなく、寝る前の一定時間だけでも光環境を整えることから始めるのが効果的。
瞑想は、頭を空っぽにする時間をつくる方法のひとつ。難しいやり方を覚える必要はなく、まずは静かな場所で目を閉じて、浮かんできた思考があっても追いかけないことがポイント。呼吸のリズムに意識を向けると、自然と気持ちが落ち着いていく。
目を閉じるだけでも光の刺激を減らすことができ、脳の情報処理を休ませることができる。スマホやパソコンを見る時間が長い生活では、目から入る情報が多くなりがちなので、短時間でも瞑想などを取り入れて、目からの情報刺激を少なくしてみよう。

眠りやすい身体をつくるためには、入浴のタイミングと温度が大切。お湯の温度は38〜40℃が目安。少しぬるいと感じるくらいの温度で、ゆっくり湯船に浸かると身体の緊張がゆるみやすくなる。
入浴の時間は、就寝の1.5〜2時間前が理想。入浴でいったん上がった体温がゆるやかに下がるタイミングで、自然な眠気が起こりやすくなる。ぬるめのお湯に浸かる習慣は、副交感神経の働きを高め、リラックスした状態へつながる。
眠れない夜は、蒸気温熱で目もとを温めると心身がリラックスして眠りにつきやすくなる。
約40℃のやさしい温度で目もとを温めると、身体を休ませる「副交感神経」の活動が高まり、「休むモード」に切り替わりやすい。

また、目もとを温めることは血のめぐりも助ける。とくに手足の先まで血の巡りが良くなり、手足の皮膚温度が上がり、身体の熱が外に逃げやすくなる。身体の中の温度がゆっくり下がり始めると、自然な眠気が起こりやすい。

研究では、寝る前に目もとを蒸気温熱で温めると、眠りにつくまでの時間が短くなったという報告もある。4週間続けた試験では、眠りやすさや睡眠の質が改善し、朝の休養感や日中の気分が良くなったという報告もある。
蒸気温熱以外にも、目もとをやさしく覆うと、光がさえぎられ目から入る情報が減り、脳への刺激が少なくなる。
首の後ろや手足を温める方法もあるが、目もとは「光をさえぎること」と「温めること」を同時にできるのが特徴。

また、就寝1.5〜2時間前の入浴も入眠に効果的ですが、就寝までに時間が空く場合は、寝る直前にアイマスクで目もとを温める方法がおすすめです。習慣化すると「目もとを温める=眠る」と脳が学習し、入眠導線が作りやすくなります。

眠れない時間にスマートフォンを操作すると、画面から出るブルーライトが脳を刺激し、覚醒状態を強めやすい。暗い室内で強い光を浴びると、身体は「まだ起きている時間」と勘違いしやすくなり、眠気も遠ざかりやすくなる。
さらに、ニュースやSNS、動画を見続けると、頭の中でいろいろ考えてしまい、脳が休まりにくくなる。「光の刺激」と「情報の刺激」が重なることで、眠気はさらに遠ざかり、結果として入眠までの時間が長くかかる。
寝る直前に激しい運動をすると、かえって眠りにくくなる。激しい運動をすると、心拍数や体温が上がり、交感神経の活動が高まる。結果として、頭も身体も冴え渡る状態になり、身体が覚醒状態になってしまう。

強度の高いトレーニングを行う場合は、就寝直前の時間帯を避けて、運動後に身体をゆっくり休める余裕を作るのが望ましい。夜間は軽いストレッチやリラックス目的の運動へ切り替えるなど、覚醒を高めすぎない工夫が必要。

寝る前にカフェインを飲むと、その覚醒効果が長く続き、眠気が遠ざかってしまう。
コーヒーや紅茶は無意識のうちに夜間まで飲んでしまうことも多いが、夕方以降は控えるのが良い。
アルコールは飲んだ直後は眠くなりやすいが、睡眠が浅くなりやすく、夜中に目が覚めやすいのが特徴。トイレで起きるなど睡眠が途切れやすく、結果として休養感が下がりやすい。
会食などで、どうしてもお酒を抑制できない場合は、お酒を飲む時間を早めるなどの工夫が重要。
夕方に30分を超える昼寝をすると、夜に高まるはずの眠気が弱まりやすい。長時間の仮眠は体内時計にも影響しやすく、生活リズムの乱れにつながる。
日中に強い眠気を感じる場合は、午後3時前までの30分以内の短い仮眠にとどめたい。夕方以降はできるだけ起きて過ごし、夜に自然な眠気が高まる流れを保つことが大切。
寝る前の動画や映画は、ブルーライトによる光刺激だけでなく、映像や音声による情報刺激が重なり、眠りを遠ざけやすい。
感動的な作品は感情が揺れやすく、バトル系や展開の激しい内容は脳が興奮状態になり、眠りを妨げやすい。さらに、連続視聴は「続きが気になる」構造のため、深夜や朝まで見てしまうことも。動画を見るなら終わりの時間を先に決めておいて、寝る直前ではなく、時間に余裕を持たせるのがおすすめ。