
この記事の監修者
作業療法士
菅原 洋平さん

ユークロニア株式会社代表。国立病院機構にて高次脳機能障害や神経難病のリハビリテーションに従事。
2012年ユークロニア株式会社を設立。現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、 大企業の健康経営や働き方改革を推進し、その活動は、テレビや雑誌などでも注目を集める。
主な著書に、14万部を超えるベストセラー「あなたの人生を変える睡眠の法則」、 12万部突破の「すぐやる!行動力を高める科学的な方法」「多忙感」など多数。

日常生活において疲れるのは自然なことで、しっかりと休息を取れば、次の日も元気に活動することができる。
ただし、「身体の疲れ」や「脳の疲れ」など、疲労の種類や原因はさまざま。
そのため、疲労の種類や原因に合わせた休息方法を取り入れたり、睡眠の取り方を工夫することが大切。
【身体の疲れ】
【脳の疲れ】
そのため、自身の疲労の原因を見つけ、少しずつでも行動や習慣を整えていくことが大切。
1日の疲れが回復しきっていない状態で次の日の活動に入ると、疲労がどんどん蓄積していく。
たとえば、毎日50%のエネルギーを消費するとして、50%回復できれば万全な状態で毎日を過ごすことができる。しかし、45%しか回復できないと5%ずつ疲労が積み重なってしまう。
この状態が続くと、疲労が慢性化し、数日休んだくらいでは疲れが取れなくなってしまう。
その結果、日中のパフォーマンスの低下だけでなく、日常生活を正常に送れないほどの激しい倦怠感(けんたいかん)や強い疲労をともなう「慢性疲労症候群」を引き起こすおそれも。
★ここからは、「現代人に多く見られる疲れの原因」や「疲れを溜めないための行動や習慣」にフォーカスして解説します。

疲れの原因は人によってさまざまで、特定の原因というよりは、複数の要因が重なっている場合がほとんど。
中でも、現代人の生活習慣において見られやすい疲れの原因は以下の通り。
疲れを溜めないために何が効果的かは人によって差があるものの、同時に試そうとすると余計に疲れてしまう可能性もあるので、まずは簡単にできそうなことから取り組んでみよう。

睡眠のリズムを整えるには、毎日なるべく同じ時間に起きることが大切。
同じ時間に起きて太陽の光を浴びるとメラトニンのリズムが整うので、夜も自然と眠くなってぐっすり眠れる。すると「次の日も同じ時間に起きやすくなる」という良い循環が生まれる。
休日に長く寝る場合は、就寝時間を早めにして「平日と休日の起床時間の差を2時間以内に抑える」ようにしよう。

マルチタスクと聞くと、同時に複数のことを考えたり処理したりするイメージがあるが、実際には素早く注意を切り替えているだけで、この注意の切り替えが頻繁におこなわれるほど、エネルギーの消耗が激しくなる。
マルチタスクを完璧にやめるのは難しいので、「この時間はこれに集中する」と決めてから作業に入るクセをつけるようにしよう。
最初は数分だけでもいいので「作業中に別のことを考えない」「1つのことに集中する」練習を続けていくと、ほかのことに注意がそれにくくなる。

疲れを溜めないようにするには、疲れてから休むのではなく、疲れる前に休むことが大切。
【休憩のコツ】
「これが終わったら休憩」「ここまで進んだら休憩」みたいに進捗に合わせて休憩を設定すると、ついつい休憩を後回しにしがちなので、決まった時刻になったら、途中でも休憩を取ることが大切。
代表的なのが、25分の集中と5分休憩を繰り返す「ポモドーロテクニック」。ただし、これは1つの目安なので「自身の集中力」「作業環境」「タスクの難易度」などに合わせて時間配分を調整しよう。

休憩中は新しい刺激を入れないようにすることが大切です。息抜きに音楽を聴いたり動画を見たりする場合は、自分にとっての定番(すでに知っている)のものにすると、脳の負担を軽減できます。

デスクワークでずっと同じ姿勢でいると血流が滞りやすくなる。
身体を動かすことで血液のめぐりが改善し、酸素や栄養が全身に行き渡るようになる。すると、老廃物の排出がスムーズになり、肩こりやだるさの軽減にもつながる。
とはいえ、激しい運動は必須ではないので、日常生活の中で少しずつ身体を動かす頻度を増やすようにしよう。

40℃前後のお湯に10~15分ほど浸かると深部体温が上昇し、入浴後には頭頂部や足の裏から放熱が起こり、1時間30分~2時間くらいで深部体温が下がる。
この深部体温の低下によって自然な眠気が誘発される。さらに、炭酸入浴剤(炭酸ガス系)を入れると、血行促進効果や温浴効果が高まり、疲労の軽減や熟眠感の向上も期待できる。
また、目元を蒸気で温めるとリラックス効果が高まることで末梢の血管がゆるみ(末梢の血流がよくなり)、放熱を助けるので、スムーズな寝つきにつながる。

人によって放熱のスピードには差があります。入浴直後にベッドに入ることだけ避けるようにすれば、1時間30分~2時間にこだわらず、眠気が訪れたタイミングで寝ても問題ありません。

たくさんの情報にさらされ続けていると、脳が情報をうまく整理できず、インプット過多になってしまう。短時間でもいいので、デジタルデバイスと距離を置き、ぼーっとする(何もしない)時間を確保しよう。
また、ぼーっとしているときは脳が拡散モードに入るので、集中していたときには思いつかなかったアイデアが浮かんだりする。
休憩中に「近くの公園を散歩する」「静かな場所で目をつむってゆっくり呼吸をする」など、できそうな方法を取り入れてみよう。

頭の中で考えていることをそのままにしておくと、眠っているときにも、脳がそのことを覚えておくのにエネルギーを消費するため、睡眠の質の低下につながる。
無理に考えるのをやめる必要はなく、ノートに書き出すだけでも、頭の中を整理することができる。
きれいにまとめようとせずに、浮かんできたことを書き出していくと、自然と考えが浮かんでこなくなり、気持ちを落ち着かせることができる。
日中は交感神経の活動が優位になることで、仕事のパフォーマンスが高まる。
ただし、夜遅くまで働いていると、副交感神経の活動が優位になる時間帯でも交感神経の活動が優位になっていることが多く、「疲れているのに休めない」という悪循環に陥ってしまうことも。
手軽に試せるのが、蒸気温熱で目元を温める方法。血のめぐりが良くなり、疲労物質の排出も促進されて疲労回復効果も高まる。
蒸気は熱の効果を「広く・深く・効率よく」伝えることができ、肩こりや首こり、目の疲れ、便秘や腰痛などのさまざまな不調に対しての有効性が確認されている。
また、目元や首もとなど部分的に温めるだけでも、副交感神経活動が活性化し、手や足などの末端の血管が拡張し、全身の血のめぐりが改善する。

現代人の疲れの原因は多様化しており、どういった方法が効果があるのかは人それぞれ。
そのため「これをしないといけない・これはやってはいけない」と考えずに、できそうなものを見つけることが大切。
まずは試してみて、心地よいと感じられたら取り入れてみよう。1つの行動を無理に続けるのではなく、そのときできそうなことをやってみるくらいで大丈夫。