2025.05.29 New
#臨月・お産 #出産準備 #マイナートラブル
妊娠後期は、もうすぐ赤ちゃんに会える期待と共に出産へのドキドキを抱えているママも多いでしょう。おなかがかなり大きくなり、日常のちょっとした動作にも苦労したり、おなかの張りを感じたりすることも増えてくる時期です。無理せず夫婦で楽しみながら、出産・産後の生活に向けての準備を進めていきましょう。
監修した専門医
産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美 先生
よしかた産婦人科院長
横浜市立大学産婦人科客員准教授
プロフィールを読む
日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。大学病院で臨床研究を通して若手医師の育成に携わると同時に、国際出産イニシアティブ(ICI)に関東圏で初めて認証された分娩施設の院長も務める。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。
「妊娠後期」は、妊娠8カ月に入った妊娠28週以降を指します。よく耳にする「臨月」は医学用語ではなく、昔から“そろそろ赤ちゃんが生まれそうな時期”という意味で使われている言葉で、妊娠10カ月に入ってから赤ちゃんが生まれるまでを指しています。超音波や基礎体温計などがなかった時代の、「陣痛が来るかもしれないちょうどよいころ」を意味する言葉です。
妊娠後期に入ったら、出産まであともう少し。出産や産後に向けての準備を計画的に進めることが大切です。
妊娠後期になると胎動がダイナミックになってきます。元気に動く赤ちゃんに声をかけたりしながら、夫婦で親子のコミュニケーションをたくさん楽しみましょう。そして、出産や産後の育児のための準備を本格的にスタートしましょう。
妊娠後期に入ったら、育児用品を本格的にそろえ始めましょう。作成した育児用品リストに添って、お下がりやプレゼント・購入するもの・レンタルするものなど、そろえ方も考えながら準備するのがおすすめです。
妊娠中に購入するものは最小限にして、必要に応じて産後に買い足すようにすれば、ムダを避けられます。
ただし、退院直後から必要になるものは、早めの準備を心がけましょう。また、購入した赤ちゃんの肌着やウェアは妊娠中に水通し(洗剤を使用せず水洗い)しておきましょう。
移動グッズ
抱っこで移動する場合は、おくるみや新生児から使える抱っこひもなどを用意しましょう。ベビーカーを使用する場合は、新生児から使用できるタイプを用意します。赤ちゃんを車に乗せるなら、チャイルドシートが必要です。
赤ちゃんの寝具
ベビー専用の寝具は必須アイテムです。やわらかい敷布団は、赤ちゃんが窒息するリスクがあるので避け、新生児用の適度に硬さのある敷布団を選びましょう。
肌着&ベビーウェア
産後1カ月間はほとんど外出しないので、肌着以外のウェア類はそろえすぎず、気候などの様子を見ながら買い足してもよいでしょう。入院バッグには赤ちゃんの退院着を入れることを忘れずに。
沐浴用品
ベビーバス、沐浴布、ガーゼハンカチ、ベビーソープ、ベビー用スキンケア品、つめ切り、綿棒は必須。とくにガーゼハンカチ、つめ切りは、入院中から活躍するケースが多いようです。
授乳用品
ミルク用品は産後に母乳の状態を見ながら買い足すのがおすすめです。入院中、赤ちゃんにミルクを足す必要がある場合は、産院にあるミルクが使われます。
おむつ用品
入院中は産院が用意してくれることが多いですが、退院直後から必要になります。最低限、新生児サイズの紙おむつ1パックとおしりふき1パックは用意しておきましょう。紙おむつを選ぶときは、サンプルで肌触りなどを確認しながら比較検討するのがおすすめです。
産後の生活をイメージしながら、自分たちはどんな育児をしたいのか、夫婦でできるだけ具体的に話し合っておきましょう。
産後のママは体を回復させることが大切なので、少なくとも産後1カ月間は家事ができません。つまり家事を担うのはパパ、ご家族です。今から家事や育児のサポート体制を整えておく必要があります。自治体の支援制度や民間の家事代行サービス、宅配食サービスなども調べておきましょう。
バースプランとは、どんな出産にしたいかをイメージし計画することです。この時期、バースプランの作成を案内する産院もあります。産院から案内がない場合でも、自分たちはどんなお産をしたいのか、具体的に夫婦で話し合っておきましょう。
陣痛中はどう過ごしたい?
好きな音楽をかけたい、アロマでリラックスしたい、夫にマッサージしてもらいたい、など
分娩中
自由な体勢で産みたい、夫が立ち会いたい、陣痛促進剤はできるだけ使用してほしくない、など
赤ちゃん誕生直後
赤ちゃんと触れ合いたい、初乳をあげたい、など
産後入院中
母子同室で過ごしたい、パパも宿泊したい、など
妊娠22週以降37週未満の出産を「早産」といいます。赤ちゃんが早く生まれるほど、体の発達が未熟なため、誕生後の発育に影響が出るリスクが高くなります。そして早産にはなっていないけれど、早産しかかっている状態を「切迫早産」といいます。
切迫早産の症状は、おなかの張り・痛み、出血、いつもとは違う腰痛です。このような症状があれば、産院を受診しましょう。
なお、おなかの張りには、心配のない生理的な張りと、早産につながる危険な張りがあります。とくに妊娠後期になると生理的な張りも増えてきます。体を休めて治まるような一時的な張りなら、生理的な張りでしょう。
反対に、周期的な張りが続いている、休んでも治まらない、動けないほどの激痛がある、出血を伴う、といった場合は危険な張りなので、すみやかに産院を受診してください。
里帰り出産の人は、妊娠32週までには帰省をしておきたいものです。そして、出産後はいつまで実家に滞在するのかも今のうちに家族で話し合って、産後の生活をイメージしておきましょう。
ますます大きくなった子宮に内臓が圧迫されて、胃のむかつきや動悸、息切れ、尿もれなどの不調が現れるママもいるでしょう。疲れたら休んで、無理のないペースで出産準備を進めましょう。
お産はいつ始まるかわかりません。妊娠9カ月に入ったら、入院グッズを詰めたバッグを準備しましょう。
外出先から産院に向かうことになった場合、あとから家族に入院バッグを持ってきてもらうこともあり得ます。入院バッグの置き場所は、家族に伝えておきましょう。
赤ちゃんを迎えるお部屋の準備も必要です。産後1カ月間くらいは、ママは赤ちゃんのお世話をするとき以外はできるだけ体を休めることが大事です。そうした生活をイメージしながら、ママと赤ちゃんの部屋を決めましょう。
また、赤ちゃんが過ごす部屋はしっかり掃除し、室内でペットを飼っている場合は、赤ちゃんのスペースと仕切る工夫も必要です。
出産費用に関しては、健康保険から「出産育児一時金」が出ますが、助成金額を超えた分は退院時に支払う必要が出てくるので、準備しておく必要があります。
また、「児童手当」「乳幼児の医療費助成」の手続きは、産後できるだけ早く行えるように準備しておきましょう。
ネイルはオフし指輪もはずしておきましょう。万が一体調が急変した場合、ネイルをしていると爪の色で健康状態を確認することができませんし、血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターが正しく作動しない恐れもあります。また、指輪をしたままだと、むくんで指輪がはずれなくなることもあります。
働くママは産休に入る時期です。勤め先から「健康保険出産手当金支給申請書」や「育児休業給付金」の申請書類をもらっておき、申請の段取りを確認しておきましょう。
いつお産が始まってもおかしくない時期です。とくに妊娠37週頃になると赤ちゃんは内臓などの身体の機能が整い、いつ生まれても大丈夫な状態になります。そのため、妊娠37週0日~41週6日の出産を「正期産」と呼びます。おなかの張りや出血、前期破水に注意して、でもなるべく元気に活動的に過ごしましょう。
お産が近づいたことを知らせる予兆には、おしるしや前駆陣痛があります。しかし、すべてのママがこれらを経験するわけではなく、どちらかだけ経験する人、どちらも経験しないままお産が始まる人もいます。また、おしるしや前駆陣痛があったからといって、その日のうちにお産が始まるとは限らないので、あわてなくて大丈夫です。
おしるし…赤ちゃんを包んでいる卵膜の一部がはがれて出血したもの
前駆陣痛…おなかの張り・痛みの間隔が不規則で、1時間以内に治まるもの。なかには定期的な痛みではあるものの、1時間以内に治まるケースもあり
お産の始まりには、陣痛から始まるケースと、破水(前期破水)で始まるケースがあります。陣痛でも、前期破水でも、産院への連絡が必要です。「本当の陣痛?」「本当に破水?」など、迷ったときは産院に連絡しましょう。
陣痛…10分間隔で来るおなかの張り・痛みが1時間以上続く、または、1時間に6回以上の張り・痛みがある
前期破水…陣痛が始まる前に、赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れて、中の羊水が流れ出す状態。子宮口から離れた位置で卵膜が破けた場合は「高位破水」と呼ばれ、羊水の流出は少しだけで、すぐに流出が止まることもある
お産が始まったらどうすればいいか、かかりつけの産院から事前に説明があるでしょう。ママ本人だけでなく、夫婦でその段取りをきちんと確認しておくことが大事です。通院中の産院とよく相談しておきましょう。
出産の内祝いは本来、出産の喜びをこめて周りの方たちに贈りものをすることを指します。しかし、現在は出産祝いへのお返しとして生後1カ月以内に贈り物をするのが一般的です。
産後は育児に追われて余裕がないので、妊娠中に内祝いの品をある程度決めておくとよいでしょう。
産後2週間健診や産後1カ月健診は、出産した産院で受けるのが一般的です。しかしそれとは別に、赤ちゃんの健康に不安があるとき、すぐに受診できる小児科を見つけておくことも大切です。
乳幼児期は予防接種もあるので、小児科を受診することが多くなります。妊娠中にリサーチしておき、赤ちゃんが誕生してから予防接種に行ってみると、雰囲気がわかるでしょう。そのうえで、ゆっくりと信頼できるかかりつけ小児科医を見つけましょう。
妊娠中は体重が増えすぎても、あまり増えなくてもよくありません。妊娠後期も中期に引き続き、体重管理を行いましょう。また、安産や産後の育児に向けての体のケアも習慣にしましょう。
妊娠後期はおなかが重くて動くのがおっくうに感じてしまうこともありますが、あまり動かないでいると体重が増えすぎてしまうかもしれません。
とくに出産が近づくと、赤ちゃんが骨盤の中に下りてきて胃の圧迫が消え、食欲が旺盛になって体重が急激に増えることがあるので要注意です。
主治医から安静の指示が出ていないかぎり、今までどおりに適度な運動は続けましょう。それと同時に、栄養のバランスを考えた食生活を心がけることも大切です。
一方で、赤ちゃんが下りてくるまでは、大きくなった子宮に胃が押し上げられるため、あまり食べられなくなるママもいます。胃のむかつきや吐き気であまり食べられないときは、小分けにして食べるようにしましょう。
妊娠中期同様に、ウォーキング、マタニティヨガなど、無理のない範囲で運動をすることが、安産へ向けた体づくりにつながります。また、こうした運動は、お産への緊張をほぐす効果も期待できます。
ただし外出するときは、お産が始まったときに備えて、携帯電話、母子健康手帳、診察券、破水に備えた夜用ナプキンなどを携帯するようにしましょう。
出産が近づくと緊張するママもいるかもしれません。そんなときにおすすめなのが、体の力を抜く呼吸法です。また、身体が気持ちよく伸びるストレッチもおすすめです。ストレッチは腰痛、肩こり、恥骨痛などの緩和にも役立ちます。
眠れないときや、陣痛のときにも役立つ呼吸法です
赤ちゃんが吸いつきやすく、乳首が傷つきにくいおっぱいにするためには、妊娠中のおっぱいケアが大切です。ただし、おっぱいケアはおなかの張りを助長することがあるので、始める時期などはかかりつけの産科医や助産師に相談しましょう。もし、ケアの最中におなかが張ったら中断するようにしましょう。
乳首をやわらかくするオイルパック
乳首をやわらかくして、赤ちゃんが吸っても傷つきにくいおっぱいにする効果が期待できます。
使用するオイルは、オリーブオイル、スイートアーモンドオイル、グレープシードオイル、馬油などが適しています。
やり方:オイルをたっぷりと浸したコットンを乳首に当てたまま、10~15分パックする。
乳頭・乳輪マッサージ
乳頭や乳輪を柔軟にして、赤ちゃんが吸いやすいおっぱいにします。妊娠36週までは1日に1回、妊娠37週以降になったら1日に数回行って、耳たぶくらいのやわらかさを目指しましょう。
やり方:オイルパックのあと、乳頭・乳輪までを親指、人差し指、中指の3本で圧迫し、そのまま上下左右にもみほぐす。これを1~3分くらい行う。
妊娠後期はますます子宮が大きくなり、女性ホルモンの分泌量も増えるので、さまざまな症状が出てきます。
症状が出たときは無理をせず、ここにご紹介する対処法を試してみましょう。一向に改善しなかったり、生活に支障が出たりする場合は、産院を受診しましょう。
大きなおなかで仰向けに寝ると、おなかが圧迫されて血圧が下がるので、横向きで寝ましょう。クッションや抱き枕を使い、少しでもラクな姿勢を探ってみてください。また、寝付きにくいときは、「体の力を抜く呼吸法」がおすすめです。
実は、この時期のママは生まれたての赤ちゃんと同じ睡眠サイクルになりやすいといわれています。『夜に7時間以上たっぷり眠るのがよい』という概念から離れ、『昼間にうたた寝、夜もちょこちょこ寝る感じでよい』と思って過ごしてください。
夜中に寝付けなくなったら、ソファなどにゆったり座って静かな音楽を聴きながら目を閉じてリラックスする、温かいミルクを飲んでみる、など焦らず落ち着いて過ごしてみましょう。
おすすめ!シムスの体位
おなかの重みで骨盤や背骨、それを支える筋肉に負担がかかると、腰痛が起こりやすくなります。また、お産に向けて恥骨の間にある軟骨がゆるむので、恥骨が痛むこともあります。
対策の第一は、正しい姿勢を心がけることです。また、骨盤ベルトの装着で緩和する場合もあります。
基本は正しい姿勢
立つとき:反り腰にならないように注意し、頭のてっぺんから糸でつるされているイメージでまっすぐ立つ。
座るとき:骨盤を立てて座る。折りたたんだタオルなどをおしりの後ろ半分に敷いて座ると、骨盤が立ちやすくなります。
おすすめ!腰痛緩和のストレッチ
両手両ひざをつき、背中をゆっくり丸めたり伸ばしたりを5回1セット、1日2セット程度行う。
子宮が骨盤の中いっぱいに大きくなり、下半身の血液やリンパ液が上半身に戻りにくくなるため、むくみやすくなります。夕方以降にむくみがでても、翌朝に治まる程度なら心配ありません。
静脈瘤は足や外陰部などにできる、血管が青く浮き上がった状態です。妊娠後期は、大きくなった子宮の影響で下半身の血流が滞り、静脈瘤ができやすくなりますが、産後、自然に治まります。
大きくなった子宮により胃が押し上げられるため、胃がムカムカしたり、吐き気がしたりすることがあります。対策としては、以下などが挙げられます。
胃酸が逆流し、胸やけを感じるときは、産院を受診して薬を処方してもらいましょう。
妊娠中は女性ホルモンの影響でおりものが増加しますが、出産が近づくと、さらにおりものが増える傾向があります。これは、赤ちゃんが産道を通って生まれ出てくるための準備です。
陰部がムレて肌トラブルが起きたりしないように、通気性のよい下着をつけ、清潔を心がけましょう。
また、においや色、かゆみなど、いつもと違う変化があった場合は感染症などの可能性があります。また、茶色いおりもののときは出血が考えられます。おりものに異常があるときは、産院を受診しましょう。
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大きくなった子宮に膀胱が圧迫されるので、頻尿や尿もれが起こりやすくなります。尿もれが不安な場合は、尿もれ専用の吸水ナプキンなどを利用するのもよいでしょう。
ただし、尿もれがちょろちょろと続いたり、おりものが水っぽかったりする場合は、前期破水かもしれません。その場合は、すぐ産院に連絡しましょう。
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妊娠後期から産後にかけて骨盤底筋がゆるむため、多くのママが痔になります。痛みなどの自覚症状がなくても、おしりをふいたときに出血していた場合は痔の可能性があります。痔による排便時の痛み・出血がある場合は、産院で軟膏や座薬を処方してもらいましょう。
また、骨盤ベルトを利用して骨盤底筋を守りつつ、産後の骨盤底筋トレーニングをしっかり行うことで、痔は徐々に改善することが期待できます。
妊娠後期はさらにおなかが大きくなり、体の変化に戸惑うかもしれませんが、赤ちゃんは確実に成長しています。
自分に合うマイナートラブル対策を試しながら、できるだけリラックスした状態で赤ちゃんと会える日を楽しみに待ちましょう。そして、パパと一緒に親になる心の準備と赤ちゃんを迎えるための環境準備を進めていきましょう。
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