専門医に聞く!マタニティお悩みQ&A
2025.11.26 New
#臨月・お産 #産後ママのケア

出産時に会陰切開をして縫合しました。現在、産後2日目ですが、会陰部の痛みがじわじわと強くなってきて、歩くのも座るのもつらく、円座クッションなしでは座ることができません。この痛み、いつまで続くのでしょうか?
回答した専門医

産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美 先生
よしかた産婦人科院長
横浜市立大学産婦人科客員准教授
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日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。大学病院で臨床研究を通して若手医師の育成に携わると同時に、国際出産イニシアティブ(ICI)に関東圏で初めて認証された分娩施設の院長も務める。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。
会陰縫合後の痛みは、縫合の方法によっても違いますが、会陰部がむくんでいる産後の3日間くらいが痛みのピークで、産後1週間くらいで大体落ち着いてきます。
痛みが続く間はできるだけ横になって体を休め、座るときは円座クッションを使って乗りきりましょう。痛みが強いときは我慢せずに、産院で処方された痛み止めを服用しましょう。
また、引きつれ感などの違和感を解消するために、溶ける糸を使用していても産後5日目ごろに抜糸することがあります。

会陰切開をした場合も、会陰裂傷の場合も、縫合後の傷あとは産後1週間ぐらいで大体落ち着いてきます。ただし、傷口の大きさや縫合の仕方、その人の痛みの感じ方によって、痛みの強さや期間は異なります。
やはり、傷口が大きかった場合は痛みも強かったり、傷の回復にも時間がかかったりします。退院時の診察で医師は傷あとの経過をチェックしますが、気になることがあれば遠慮せずに質問しましょう。
会陰縫合の傷あとは退院時期にあたる産後5日目くらいにはしっかり閉じ、それに伴い、痛みもかなり落ち着いてきます。ただし、糸の引きつれたような違和感や、座るときは円座クッションがあったほうがラクといった状態はしばらく続く人が多いでしょう。
そんな会陰の傷あとも、産後1カ月健診のころには、傷あとが全くわからないほどに回復し、会陰部の痛みや違和感も完全に消えることがほとんどです。
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現在多くの産院が、会陰縫合には吸収糸と呼ばれる自然に溶ける糸を使用しています。その場合、抜糸は不要となります。
ただ、出産直後にむくんだ会陰の腫れが引いてくると、引きつれるような痛みが出やすくなります。この痛みを解消するには抜糸が効果的なため、産院によっては、傷口がしっかり閉じた産後5日目ごろに、溶ける糸であっても抜糸をしてから退院となることもあります。
ちなみに抜糸の痛みは、毛抜きでトゲを引き抜くような一瞬の痛みです。抜糸後、「あっ、痛みが消えた!普通に座れる!」と感激するママも少なくありません。

会陰の傷あとの痛みは産後の3日間がピークなので、その間、痛み止めを処方されることが多いでしょう。
また、会陰部に圧をかけると痛みが強くなるので、圧をかけない姿勢や動きを探りながら、無理せず過ごしましょう。
とくに産後の3日間くらいは、傷あとの痛みが激しくて動くのも座るのもつらい人もいるでしょう。そんなときは、我慢せずに痛み止めを服用しましょう。母乳を通して薬の成分が赤ちゃんに影響を与えないか心配かもしれませんが、産院では授乳中でも服用できる薬を処方しています。
会陰切開に限らず、体のどこかに傷ができたときは、傷を修復するための炎症反応が数日間続きます。炎症期は腫れたり痛みが出たり、患部に熱を持ったりします。産後の3日間くらいはこの炎症期にあたり、会陰部をピンポイントで冷やすと痛みがやわらぐことがあります。
ただし、冷やしすぎると血流が悪くなり、かえって傷の治りを遅らせてしまうので、冷やす場合は助産師など医療スタッフの管理のもとで行いましょう。
産後のママは赤ちゃんのお世話をするとき以外は、ゆっくり休むのが基本です。会陰部分に圧をかけないためにも、できるだけ横になって休みましょう。
また、傷あとの痛みが強いときは、重ねた座布団などをひざの下に置き、腰が少し浮くくらい足を高く上げて寝るのがおすすめです。市販の足枕などを使ってもよいでしょう。こうすると会陰部の充血が抑えられ、痛みの緩和に役立ちます。

座るときは会陰部に圧をかけないように、円座クッション(ドーナツクッション)やU字クッションを使用するとラクです。とくにU字クッションは円座よりもラクだと感じる人が多いようなので、おすすめです。U字クッションは市販のものがなくても厚手のバスタオルで代用できます。

出産のときは、直径10㎝ほどの赤ちゃんの頭がママの産道(腟)をくぐり抜けます。「そんな大きなものが通り抜けられるの!?」と不安になるかもしれませんが、大丈夫。赤ちゃんが産道を降りてくる刺激はママの脳に伝わり、産道・会陰をやわらかくするホルモンがママの脳から出てきます。陣痛中は時間をかけて、少しずつ会陰はやわらかくなり、赤ちゃんの頭が通れるほどに伸びていきます。
ただし、ときには会陰が伸びきるのを待てない状況や、会陰が伸びても赤ちゃんが通るには狭いというケースも出てきます。そんなときに会陰切開を行います。会陰切開を行うのは、主に以下の4つのケースです。
陣痛が始まってから赤ちゃんは体の向きを変えながら少しずつ子宮の中から下りてきます。とくに産道をくぐり抜けるのは、赤ちゃんにとって最後の難関。胎児心拍モニタリングで赤ちゃんが苦しがっていることが確認された場合は、できるだけ早く赤ちゃんを娩出させる必要があるので、会陰切開を行います。
お産の進行が早く、会陰が十分に伸びきらないうちに赤ちゃんが出てこようとしているときも会陰切開を行います。不規則に何カ所も会陰が裂傷するよりは、1カ所を切開したほうが傷口も小さく済み、傷の回復もスムーズになるとの判断からです。
なかには、時間をかけても会陰があまり伸びない人もいます。その場合、無理して娩出すると会陰が放射線状に切れたり、大きく裂傷したりすることもあります。これ以上頑張っても、会陰の伸びが期待できず、会陰切開したほうが傷口が小さく済むと医師が判断したときにも会陰切開を行います。
たとえママの会陰がしっかり伸びても、赤ちゃんの頭がとても大きく会陰が裂傷しそうになることもあります。不規則に何カ所も裂傷するよりは、1カ所を切開して済ませたほうが傷口の治癒もスムーズだと医師が判断したときには会陰切開を行います。
会陰切開をしたときだけでなく、出産時に会陰が裂傷したときも、会陰を縫合します。
会陰縫合は、赤ちゃんが生まれ、胎盤も娩出したあとに行います。基本的に局所麻酔をしてから縫合するので、痛みを感じることはありません。
縫合に使用する糸は、多くの産院が吸収糸と呼ばれる自然に溶ける糸を使用しています。吸収糸で縫合した場合、抜糸の必要がなくなります。
医師は退院前の内診で、縫合したところが完全にくっついて閉じていることを確認しています。ただ、まれに感染などが原因で、傷口が再び開いてしまうことがあります。退院時よりも会陰の痛みが激しくなったときや、傷あとから出血しているときは、すぐに産院を受診しましょう。
会陰の傷あとは、産後必ず元に戻ります。過度に神経質になる必要はありませんが、清潔を心がけ、徐々に痛みや違和感が消えるのを待ちましょう。産後1カ月健診のころにはすっかり治っていることが多いです。
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