赤ちゃんとママ・パパのための情報
「かぜ」は、病原体が鼻からのどにかけての上気道に感染して急性の炎症を起こす病気の総称で「かぜ症候群」とも呼びます。原因の80~90%がウイルスで、残りは細菌によるものです。かぜのウイルスは160種類以上もあるといわれ、いったん感染してそのウイルスに対する抗体ができても、別のウイルスに出会うと再びかかります。何度も繰り返しかかるのはそのためなのですね。ことに冬は、冷気や乾燥を好むウイルス(RSウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルスなど)が活発化します。
赤ちゃんはお腹の中にいるとき、胎盤を通じてお母さんがかかったさまざまな病気の免疫(移行免疫)をもらいます。また、出産後2週間くらいの間に分泌される初乳にも免疫が含まれています。
しかし、かぜのウイルスに対する免疫は「麻疹(はしか)」などに対する免疫と異なり成人でも一過性ですから、赤ちゃんにはほとんど移行しません。したがって、生まれたての赤ちゃんでもかぜはひきます。よく、「生後6カ月まではかぜをひかない」と言いますが、そのようなことはありません。
かぜの感染経路は、「飛沫感染」といって、くしゃみやせきなどと一緒に排出されたウイルスが空気中を漂っているうちに、呼吸器に吸い込まれて感染します。
赤ちゃんの場合、家族からの感染が最も多いので、予防策のひとつとして、家族ができるだけかぜをひかないようにするといいですね。こまめに手を洗い、外出から帰ったらうがいをしましょう。また、睡眠不足や過労で体力が低下することも、かぜにかかりやすくなる原因です。
お母さんは、そうでなくても育児と家事で体力を消耗しやすいので、十分に睡眠をとって体力を温存し、かぜに対する抵抗力を高めておきましょう。
家族がかぜをひいてしまったときは、マスクをしてウイルスの飛散を防ぎ、できれば治るまで赤ちゃんとの密着をできるだけ控えるようにします。お父さんが重いかぜにかかったときは、赤ちゃんと寝室を別にしたり、しばらく抱っこを控えてもらうといいですね。
また、かぜが流行している時期は、赤ちゃんをなるべく人混みに連れ出さないようにします。赤ちゃんと一緒の買い物は早い時間に済ませたり、デパートなど人混みへの外出は避けるなど、できるだけかぜをひいた人と接触せずにすむようにします。
ただ、予防するに越したことはないものの、まったくかぜをひかせずに育てるのは不可能です。赤ちゃんは、かぜをひくたびにいろいろなウイルスに対する抵抗力をつけて自前の免疫を作っていきます。予防していてもかかってしまうのは、お母さんの責任ではありません。あまり神経質にならず、かかってしまったらこじらせないことを第一に考えていきましょう。
医学博士、日本小児科学会認定医、子どもの心相談医。1987年筑波大学卒。1994年筑波大学大学院博士課程修了筑波大附属病院、(株)日立製作所水戸総合病院、茨城県立こども病院で研修。1996年4月より現職。
寒い季節にかぜをひかせないためにはどうしたらいいのでしょう。注意や予防法があれば教えてください。
(3カ月 みゃあごろう)