2025.03.03 New
#マイナートラブル
妊娠中期はつわりも落ち着き始め、体調が安定してくるママが多いでしょう。おなかの中では胎盤が完成し、流産のリスクも下がります。また、赤ちゃんの動きを胎動として感じられるようになるのもこの時期です。
妊娠中期は心身共に安定し、おなかもまだそれほど大きくないので活動しやすく、妊娠生活を心から楽しめる時期ともいえるでしょう。
一方で、そんな時期だからこそ、出産や産後に備えてやっておきたいこともあります。胎動を通した赤ちゃんとの対話を楽しんで、おなかの赤ちゃんと過ごす時間を大切にして、充実した妊娠中期を過ごしましょう。
監修した専門医
産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美 先生
よしかた産婦人科院長
横浜市立大学産婦人科客員准教授
プロフィールを読む
日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。年間約700人の赤ちゃんが生まれる分娩施設の院長。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。
「妊娠中期」と呼ばれるのは、妊娠14週(妊娠4カ月半ば)~妊娠27週(妊娠7カ月)の期間です。この時期になるとつわりが落ち着き始め、体調が安定するママが多くなります。
また、妊娠16週には胎盤が完成して流産のリスクが下がるため、妊娠5カ月以降を「安定期」と呼ぶこともあります。ただし、安定期は医学用語ではないので、いつからいつまでという定義はありません。
妊娠中期の期間だけを安定期という人もいれば、妊娠5カ月から臨月までを安定期と呼ぶ人もいます。妊娠中期=安定期というわけではありません。
妊娠5カ月は胎盤が完成し、母子共に安定した状態になってくる時期です。ママはおなかのふくらみが目立ち始め、個人差はありますがバストサイズもアップしてきます。
この時期のおなかの赤ちゃんはほぼ4頭身で、骨格や筋肉が発達していき動きも大きくなってくるので、胎動を感じ始めるママもいるでしょう。胎動を赤ちゃんからママへのメッセージと思って、コミニュケーションを楽しんでくださいね。
日本では妊娠5カ月の戌の日に、腹帯(岩田帯)を巻いて安産祈願をする習慣があります。多産でお産が軽い戌(犬)にあやかったしきたりです。
実際この時期、ママのおなかはふくらみが目立ち始め、バストもひとまわり大きくなります。まだマタニティ用の下着を使っていない人は、体を締め付けずしっかりカバーしてくれる下着に変えましょう。
おなかやバストが大きくなるときに引っ張られた皮下組織に亀裂が入り、皮膚に白い溝のようなものができることがあります。これが妊娠線です。
妊娠線はおなかやバストだけでなく、太ももやおしりにできることもあります。完璧にできないようにするのは難しいのですが、できるだけ妊娠線を少なくするために、今のうちから保湿ケアを日課にしましょう。
歯周病は早産のリスクを上げる原因の1つと言われています。また、歯の治療が必要な場合は、おなかが大きくなるほど診察台に乗るのも大変です。体調が安定したら、早めに歯科検診を受けましょう。
育児用品は何をどれだけ準備すればいいのか、たくさんある種類から何を選べばいいのか、よく調べてからそろえることが大切です。体調が安定したこの時期に、まずは調べることから始めましょう。
この時期、目に見えてママのおなかはせり出し、体の重心が変わります。
また、ホルモン分泌の影響で骨盤まわりの靭帯がゆるみ、骨盤が不安定な状態になるので腰痛になりやすくなります。
最近では、産前産後のママの身体をサポートする専門の理学療法士が増えてきています。腰痛がつらいときは、産院スタッフに相談してみてください。
おなかの赤ちゃんは超音波検査では全身が画面に写らないほど大きくなり、顔立ちもはっきりします。赤ちゃんの性別がわかるのもこの時期です。
両親学級や母親学級に参加しましょう。両親・母親学級では以下のようなことが学べます。
両親・母親学級は、産院、地域の保健センターや子育て支援センター、育児用品メーカー主催のものなどがあります。
とくに、出産する産院の両親・母親学級には以下のようなメリットもあるので、できるだけ参加しましょう。
赤ちゃんは聴覚が発達し、ママのおなかの中の音が聞こえるようになっています。妊娠20週ごろにはほとんどのママが胎動を感じるようになり、赤ちゃんの存在を実感できる瞬間も増えるでしょう。
ママもパパもおなかに手を当てたり、赤ちゃんに話しかけたり、たくさんコミュニケーションをとってみてくださいね。
赤ちゃんの名前を考え始めましょう。音の響きにこだわる、漢字の意味を重視する、姓名判断も考慮するなど、家族によって名付けのこだわり方はそれぞれです。
まずは夫婦でどのように決めるか、何を重視するかなど話し合ってみてください。これはとても楽しい時間ですね。名前に使えない字もあるので、候補が出てきたら調べておきましょう。
働いていて産休や育休を取得予定のママは、余裕をもって仕事の引継ぎ準備を始め、妊娠8カ月には引継ぎが終わるようにしましょう。
また、産後も仕事を続ける予定の人は、保育園や地域の子育て支援情報などのリサーチも今のうちから始めましょう。
産後のママの体は時間をかけて少しずつ妊娠前の体に戻るので、産後1カ月はゆっくり休むことが必要です。当然、赤ちゃんのお世話をママ1人でするのは無理ですし、家事はできません。今のうちから産後のサポート体制を確認しておきましょう。
パパの育休も具体的に、いつ・どのくらいの期間取るか、この時期から夫婦で話し合って計画しておくとよいでしょう。
この時期、ママは大きくなったおなかの影響で、腰痛や寝苦しさを感じることが多くなります。寝るときは左側を下にした横向きの姿勢で抱き枕を使うなどして、ラクな姿勢を探ってみましょう。
また、ホルモンの影響で色素沈着が進み、乳輪部やおなかの真ん中のラインが黒ずんでくることがあります。妊娠線ができやすいのもこの時期です。
一方、おなかの赤ちゃんは、脳が発達して体全体の機能をコントロールできるようになり、自分で体の位置を変えることもできるようになります。
育児用品は買うだけではなく、もらう、借りるなど、エコなそろえ方も検討するとよいですね。お下がりをもらったり、リサイクルショップやフリマアプリなどを利用する場合は、この時期から知人に声を掛けたり、チェックしたりしてみてはいかがでしょうか。
また、多くの自治体でチャイルドシートの購入額を一部助成する制度があります。自治体の子育て支援制度も確認して、育児サポートを上手に受けられるようにしましょう。
今以上におなかが大きくなると、美容院で洗髪やカットをしてもらうのも大変になります。また、産後1カ月は安静が必要なので、今のうちにお手入れのラクなヘアスタイルにしておくのもおすすめです。
バースプランとは、どんなお産にしたいか、産後入院中はどのように過ごしたいかなど、お産に関する自分たちの希望をまとめたものです。バースプランは夫婦で相談しながら作成しましょう。
また、産院の方針でできること・できないこともあるので、産院に確認することも必要です。産院によっては、妊娠後期の助産師外来でバースプランについて相談する時間を設けているところがあります。
健康的な妊娠生活を楽しむためのポイントをご紹介します。また、おなかの張りや出血など、注意したい体の変化も知っておきましょう。
妊娠中の体重管理が大切な理由は、ママの体重が増えすぎても増えなさすぎても、ママや赤ちゃんへのリスクが上がるからです。
体重の増えすぎは妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などのリスクに、体重の増えなさすぎは低出生体重児分娩や切迫早産、早産のリスクにつながります。
つわりが落ち着いたら、「妊産婦のための食事バランスガイド」* などを参考に、バランスのよい食事と適度な運動を心がけて、体重管理をしましょう。
妊娠中の体重増加の目安は妊娠前のBMI(Body Mass Index)によって違います。以下の表を参考にしてください。
妊娠中の適度な運動は、体重管理、胎盤への血流促進、むくみの軽減、気分転換、出産経過をスムーズにするなど、メリットがたくさんあります。妊娠中におこなう運動はマタニティヨガやウォーキングなど、有酸素運動がおすすめです。競技スポーツや転倒の危険が高い過度な運動は避けたほうがよいでしょう。
おすすめの運動(有酸素運動:息を止めずにゆっくり呼吸しながらできる運動)
葉酸はおなかの赤ちゃんの成長を助け、ママの貧血予防にも働く大切な栄養素です。とくに妊娠初期はサプリメントも活用して積極的に摂取していたママも多いでしょう。
妊娠中期も引き続き、積極的に葉酸を摂るのはよいことです。まずは食事で葉酸を摂ることを意識しましょう。そのうえで不足分をサプリメントで補う場合は、摂取上限の900~1000㎍を守りましょう。摂りすぎると亜鉛の吸収が悪くなります。
妊娠中はママの体内の循環血液量が増えますが、赤血球の増えるスピードが追いつかないため、血液が薄くなります。
一方で、赤ちゃんと胎盤の成長のためにより多くの鉄分が必要になるので、妊娠中は鉄欠乏性貧血になりやすくなります。鉄を効率よく摂取するには、動物性のたんぱく質とビタミンCを多く含む食品がおすすめです。
食事だけで改善できない場合は、産院で鉄剤が処方されます。
おなかの張りの感じ方は個人差が大きく、切迫早産かどうか診察しなければわからないので、張りが気になるママは妊婦健診で主治医に相談することが基本です。
およそ妊娠35週までのおなかの張りには、心配のない生理的な張りと、早産などにつながる危険な張りがあります。しばらくすると自然に治まるようであれば、生理的な張りでしょう。
体を休めても張りが治まらず、周期的な張りが続く、動けないほどの激痛がある、出血を伴う、といった場合は危険な張りの可能性があるので、すぐに産院に連絡しましょう。
また、おなかの張りがなくても、出血した場合は産院に連絡が必要です。
妊娠中期以降で妊娠経過が順調であれば、無理のない性交は問題ありません。
ただし、精液に含まれるプロスタグランジンという物質には子宮を収縮させる作用があるので、注意が必要です。子宮収縮を避けるためにも、感染症予防のためにもコンドームの装着を忘れないようにしましょう。
また、おなかを圧迫する体位は避け、おなかが張ったり出血したりした場合は中断しましょう。
妊娠中にママが細菌やウイルスなどに感染すると、赤ちゃんに影響したり、ママ自身の症状が重症化することがあり注意が必要です。
感染症予防の基本は、手洗い・うがい、マスク、人混みを避けることです。ママだけでなく家族みんなで予防に努めましょう。また、インフルエンザなど病気によっては妊娠中も予防接種可能なものがあるので、産院で確認しておきましょう。
赤ちゃんに影響する可能性がある感染症
麻疹(はしか)、風疹、水痘(水ぼうそう)、伝染性紅斑(リンゴ病)、梅毒、トキソプラズマ症
妊婦自身の症状が重くなりやすい感染症
新型コロナウイルス、インフルエンザ、劇症型溶連菌、マイコプラズマ肺炎
病気というわけではないけれど、妊娠に伴う体の変化で現れやすい不調を、マイナートラブルと呼びます。市販薬の中には妊娠中には使ってはいけないものもあります。自己判断で市販薬を使うのは避け、対処法は産院に相談しましょう。
ホルモンの影響で腸の動きが鈍くなるうえ、大きくなった子宮が周囲の腸管を圧迫するので便秘になりやすくなります。また、子宮は肛門周辺の静脈も圧迫するので、痔にもなる人もいます。
便秘対策としては、水分や繊維質の多い食事を摂ること、適度な運動が挙げられます。それでも改善しない場合は産院で相談してみましょう。妊娠中でも服用できる便秘薬を処方してもらえます。
痔の予防には、便秘を予防し、下半身を保温するのがおすすめです。排便時に出血するなど痔の兆候があれば、産院に相談しましょう。
妊娠中期は大きくなったおなかがママの胃を圧迫するため、胃酸が多く分泌されて気持ち悪くなりやすい時期です。食事を分食にするなど、少量を回数多く摂ることで、改善することがあります。吐き気で食事も水分もあまり摂れないようであれば、産院に相談しましょう。
また、女性ホルモンには消化管の動きを抑制する働きもあるので、妊娠中は胃もたれや胸やけの症状が出やすくなります。不快症状が強い場合は産院に相談しましょう。胃の動きをよくする漢方薬や、胸やけ症状を抑える胃腸薬が処方されることもあります。
妊娠しておりものが増えるのは自然なことです。ただし、おりものが多く、デリケートゾーンがムレてしまうと雑菌が繁殖しやすくなるので注意が必要です。通気性のよい下着で清潔を心がけましょう。
異臭がする、かゆみがある、いつもと色が違うなどの変化があった場合は、産院を受診しましょう。
おなかや乳房が重くなるにつれ、腰痛・肩こりに悩まされる人も増えます。また、腰痛は女性ホルモンの影響で骨盤まわりの靭帯がゆるむことも影響しています。
対策は、反り腰にならないように姿勢を正すことです。そして、ストレッチで骨盤のゆがみを整え、肩まわりの血行をよくしましょう。腰痛で歩くのもつらいときは、骨盤ベルトを装着するのもおすすめです。
湿布は妊娠中には使えないものもあるので、産院で大丈夫なものを処方してもらいましょう。
妊娠中期は赤ちゃんの成長を感じながら、胎動を通じてコミュニケーションができ、出産・産後の準備を楽しめる時期です。
マイナートラブルには上手に対処して、この時期にやっておきたいこと、ママと赤ちゃんの健康のために注意したいことなど、過ごし方のポイントを押さえて、健康的で充実した妊娠生活を過ごしましょう。
赤ちゃんのお肌はとてもデリケート。皮膚は大人よりも薄く、とっても汗っかき!*
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