専門医に聞く!マタニティお悩みQ&A
2026.03.31 New
#おなかの赤ちゃん

妊婦健診の超音波検査のときに、「ちょっと小さめですね」と言われてから、おなかの赤ちゃんの発育が気になります。母子健康手帳には「胎児発育曲線」のページがありますが、2本の曲線の真ん中あたりの数値じゃないといけないのでしょうか?(妊娠6カ月)
回答した専門医

産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美 先生
よしかた産婦人科 院長
横浜市立大学産婦人科 客員教授
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日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。大学病院で臨床研究を通して若手医師の育成に携わると同時に、国際出産イニシアティブ(ICI)に関東圏で初めて認証された分娩施設の院長も務める。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。
「赤ちゃんが小さめ」などと言われると、急に不安になってしまうかもしれませんね。曲線の真ん中でなくても、曲線の中に入っているなら心配ありません。先生から「ちょっと小さめ」と言われるときは、平均より少し小さいけど、正常範囲という意味です。また、赤ちゃんの体重は妊娠週数が進むほど個性が出てくるので、平均より大きめ・小さめという言葉は個性の範囲と考えてください。
大切なのは発育の経過です。順調に体重が増えているのであれば、心配はいらないでしょう。
また、超音波検査でわかる赤ちゃんの推定体重は、計算式に当てはめて出すので、あくまでも推定です。多少の誤差はあり得ると思ってください。

胎児発育曲線とは、健康な状態で生まれた日本国内の赤ちゃんが胎児だったときの推定体重のデータを集めて作成されたものです。
具体的には、38~41週の正期産に経腟分娩で生まれた赤ちゃんのうち、出生体重が正常体重(2,500g~3,999g)だった赤ちゃんたちのデータが元になっています。そして、胎児発育曲線に描かれている2本の曲線に挟まれた範囲は、データの元になった赤ちゃん全体の約95.4%※が入ります。
つまり、自分の赤ちゃんの推定体重が2本の曲線の中に収まれば、赤ちゃんが正常体重で生まれる可能性が高いということがわかります。
胎児発育曲線の範囲に入る赤ちゃんが約95.4%ということは、残り約4.6%の赤ちゃんは、曲線からはみ出していても健康な正常体重で生まれているということです。
また、推定体重はあくまで「推定」のため、正確な体重ではありません。実際の体重とは±10%程度の誤差があるといわれています。
さらに、人間の体型には個人差があるため、大柄な子は上の線からはみ出すこともありますし、小柄な子は下の線からはみ出すこともあります。曲線からはみ出したからといって、必ずしも発育に問題があるわけではありません。

胎児発育曲線は、母子健康手帳の後半部分に掲載されていることが多いです。ここに、妊婦健診の超音波検査でわかった赤ちゃんの推定体重を記入できるようになっています。ぜひ、活用して赤ちゃんの成長を記録しましょう。
妊婦健診で医師がおなかの赤ちゃんの推定体重を算出して発育をチェックするようになるのは、妊娠18~20週ごろからです。超音波検査で計測した赤ちゃんの頭、腹部、太ももの長さを計算式に当てはめて、推定体重を自動的に算出します。
超音波写真では、「GA」(Gestational Age)もしくは「AGE」というのが妊娠週数、「EFW」(Estimated fetal weight)というのが推定体重のことです。
胎児発育曲線の横軸(妊娠週数)と縦軸(推定体重)が交わる位置に印をつけましょう。

赤ちゃんの推定体重が胎児発育曲線の上にはみ出しているときは、赤ちゃんが大きめだと予測できます。その場合、異常がないかどうかを調べます。
原因として考えられるのは、以下のようなことです。
母体に要因がある場合
妊娠糖尿病、過度な体重増加など
赤ちゃんに要因がある場合
水頭症、先天異常など
採血、超音波検査などで異常がなければ、赤ちゃんが大きいのは個性の範囲と考えて大丈夫です。

赤ちゃんの推定体重が胎児発育曲線の下にはみ出しているときは、赤ちゃんが小さめだと予測できます。
赤ちゃんの発育状態は推定体重だけでなく、体重増加の推移、羊水の量なども診ながら総合的に診断します。その結果、赤ちゃんが本来発育すべき大きさに育っていないとわかったときは、「胎児発育不全」と診断されます。
赤ちゃんの発育への影響は、母体、胎盤、臍帯(へその緒)、赤ちゃんのいずれかに問題があっても起こる可能性があります。具体的には、以下のような項目が挙げられます。
しかし実際には、明確な原因がわからないことも多くあります。
母体に要因がある場合
胎盤・臍帯に要因がある場合
赤ちゃんに要因がある場合
赤ちゃんの個性
体質的に小さいだけで病気ではない
胎児発育不全と診断されると、ママは安静を指示されたり、入院になったりすることがあります。その間、医師は超音波検査で赤ちゃんの成長や動き、羊水量などを確認し、胎児心拍数モニタリングで赤ちゃんの状態を観察します。
また、赤ちゃんの発育が止まっている、元気がない、と診断された場合は、おなかの外で赤ちゃんの治療をするために、分娩誘発や帝王切開でお産になることもあります。
おなかの赤ちゃんの推定体重が胎児発育曲線から少しはみ出したからといって、発育に問題があるとは限りません。そもそも、推定体重は赤ちゃんの骨格から計算するため、赤ちゃんの肉付きや計測する医師によって若干の誤差が生じるものです。また、大柄な赤ちゃん、小柄な赤ちゃんなど、個人差もあって当然です。
また、赤ちゃんの発育具合は、1~2回の計測だけで判断できるものではありません。たとえ小さめの赤ちゃんだったとしても、発育の経過を一定期間観察し、その子なりに着実に体重が増え続けているのであれば、ちゃんと発育していると考えられます。
大きめ・小さめに一喜一憂しなくても大丈夫です。担当の産科医によく相談して、異常がないようなら赤ちゃんの個性ということで、ゆったりした気持ちで受け入れてあげましょう。
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