専門医に聞く!マタニティお悩みQ&A
2025.09.10 New
#マイナートラブル
SNSでおなかがひび割れたような妊娠線の画像を見ました。これって妊婦にはよくあることなのでしょうか?予防するにはいつから、どうやってケアするのがいいですか?(妊娠3カ月)
回答した専門医
産婦人科医師 (医学博士)
善方 裕美 先生
よしかた産婦人科院長
横浜市立大学産婦人科客員准教授
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日本産科婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。大学病院で臨床研究を通して若手医師の育成に携わると同時に、国際出産イニシアティブ(ICI)に関東圏で初めて認証された分娩施設の院長も務める。女性が本来持っている産む力を活かせるように、そして、ママと赤ちゃんご家族にとって、幸せな出産と育児になるように、安全で自然なお産を守り、産後ケアの充実に取り組んでいる。家庭では3人娘の母。
おなかやバストが大きくなると皮膚が引っ張られ、表皮の下にある真皮のコラーゲン繊維が断裂してしまうことがあります。これが妊娠線です。
妊娠線は、初めは赤紫色ですが次第に白っぽくなります。妊娠線をできるだけ予防するには、日ごろのケアで肌に潤いを与えることが大切です。
おなかやバストが目に見えて大きくなっていく前に、ケアを始めましょう。
妊娠線予防のためのケアは、おなかやバストのサイズが大きくなる前から始めたほうがより効果的です。
もちろん妊娠初期から始めてもよいのですが、つわりでつらい時期は無理をせず、体調も落ち着き、これからおなかが大きくなってくる妊娠中期から始めるのがおすすめです。
保湿ケアに使用するアイテムで重視したいのは、保湿力の高さだけでなく低刺激であるという点です。妊娠すると肌質が変化して、かぶれやすくなる人もいるためです。
その点、妊娠線ケア専用品であれば妊婦さんの体を考えて作られた製品という意味でよいかもしれません。
保湿アイテムには、クリーム、乳液、オイルなどがあります。クリームや乳液は水分量が多いので塗るタイミングを選びませんが、水分を含まないオイルの場合は、肌がしっとりしているお風呂上がりに使用するのがおすすめです。
朝はクリームか乳液、夜の入浴後はオイルにするなど使い分けてもよいでしょう。
また、テクスチャーの好みのほか、香りの好みで選ぶのもひとつの方法です。
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妊娠線ケアは、毎日のルーチンにして続けることが大切です。妊娠線ケア用クリームやオイルをただ塗るのではなく、マッサージも取り入れることで保湿だけでなく、血行がよくなる、リラックスできるなどの効果も得られます。
妊娠線ケアは朝晩2回を習慣にするのがおすすめです。
保湿の基本は肌に潤いを与え、それを油分で閉じ込めることです。そのため、夜の保湿ケアはお風呂上がりに行うのが効果的です。
また、肌が乾燥しやすい季節はさらに回数を増やすなど、肌の状態をみながらケアの頻度を調整しましょう。
塗る量が足りていないと、保湿効果を十分に得ることができません。使用する妊娠線ケア用保湿製品の説明書も参考にしながら、保湿したい部位全体に均一に、無理なく伸ばすことができる量を使いましょう。
妊娠線ケアが必要なのは、おなかやバストだけではありません。おしり、足のつけ根、太もも、二の腕、脇の下など、脂肪がつきやすい部位は妊娠線ができやすいところです。
どの部位も、手のひらでやさしくなでるように、一方向へ血流を促すような気持ちで塗りましょう。
おなか
おなかの下から上に向けて、両手を使ってやさしくクリームを塗ります。見えにくいおなかの下側も塗り忘れがないように入念に。次におへそを中心とした時計まわりに、弧を描きながらやさしく保湿します。もし、おなかが張った場合は中断しましょう。
バスト
右の乳房は左手で、左の乳房は右手で、半円を描くように塗布します。バストの下側もしっかり保湿しましょう。
太もも・おしり
太ももは下から上に向けて塗布します。足のつけ根も忘れずに。おしりは円を描きながら塗布します。手が届きにくい部位なので、パパに協力してもらうのもおすすめです。
二の腕・脇の下
ひじから肩にかけて血行を促すように、やさしく塗布を。脇から乳房に向けても保湿しましょう。
体重の増減で急激に体形が変化すると、真皮がその変化に追いつけず、亀裂が入ることがあります。これが「肉割れ線」と呼ばれるもので、妊娠線は肉割れ線と同じメカニズムです。
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の三層構造になっています。表皮は伸びやすいのですが、コラーゲン線維などで構成されている真皮は伸びにくい特徴があります。
妊娠して急激に体形が変化すると、表皮は伸びても、真皮は十分に伸びず亀裂ができてしまうことがあります。こうしてできるのが妊娠線で、妊娠線は厚さ約0.2ミリほどの薄い表皮から透けて見えます。
妊娠中、分泌が増えるコルチゾールと呼ばれるホルモンには、血流を悪くしたり、コラーゲンの生成や真皮のターンオーバーを抑制したりする作用があります。
そのため、妊娠中は妊娠前よりも肌が薄くなり、水分保持力も低下する傾向にあります。このように、ホルモンの変化も影響して妊娠線ができやすい状態になっているのです。
妊娠中は、おへそを通るおなかの中央に黒ずんだ縦線が現れることがあります。これは妊娠線ではなく、「正中線」と呼ばれるものです。
なかには、正中線に沿って体毛が濃くなる人もいるでしょう。正中線は妊娠期特有のものなので、産後は自然に消えていきます。
妊娠線ができやすいのは、体重増加に伴って脂肪がつきやすい、おなか、バスト、太もも、おしり、二の腕、脇の下です。
とくに、子宮の重みで皮膚が強く引っ張られる下腹部は、もっとも妊娠線ができやすい場所です。おなかが大きくなると自分からは見えづらくなりますが、たっぷり保湿を心がけましょう。
妊娠線はすべての妊婦さんにできる可能性がありますが、体形変化が激しい人、皮膚の潤いが不足気味の人などは、とくにできやすい傾向があります。
体重が急激に増えた人
体が重くなって運動量が減る、産休に入る、里帰りするなど、日々の習慣や環境が変わるときは、急激な体重増加に要注意です。
多胎妊娠
単胎妊娠よりもおなかが大きくなるペースが速いので、早めに妊娠線予防のケアを始めましょう。
高齢妊娠
加齢とともに皮膚の柔軟性も低下していきます。体調が落ち着いたら、早めに妊娠線予防のケアを始めましょう。
やせ型の人
もともとスリムな人は、急激な体重増加の影響を受けやすいと考えられます。
乾燥肌の人・乾燥しやすい季節
肌が乾燥していると柔軟性が低下し、妊娠線ができやすくなります。保湿ケアで肌に潤いを与えましょう。
食事の栄養バランスが偏っている人
栄養が偏っていると、皮膚のターンオーバーが低下し、乾燥肌などのトラブルになりやすくなります。バランスのよい栄養摂取を心がけましょう。
妊娠線は、できたばかりのころは赤紫色ですが、次第に白っぽくなります。一度できてしまった妊娠線が完全に消えることはありませんが、産後は徐々に目立たなくなる人が多いでしょう。
すでに妊娠線が出ている人は、保湿ケアをしっかりすることで、妊娠線がさらに増えるのを食い止められる可能性もあります。あきらめずに、日々のケアを日課にしましょう。
また、肌が乾燥していて妊娠線が出やすい人は、かゆみの症状も出やすいようです。保湿ケアを続けていてもかゆみがひどくなる場合は、産院もしくは皮膚科で相談しましょう。
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