「数多くの服と出会う中で、時々すごく自分にしっくりくる服との出会いがあります。そういう服は一度手放すともう二度と会えない、まさに服との出会いは一期一会ですね。」そう語る花王 マーケティング創発センター 生活者研究部 くらしのきれい研究室の深井さんに、お気に入りの服を少しでも長く楽しむ方法を聞いてみました。
大事な服はできるだけ長く着たい。しかし、服が着られなくなる背景には、どんな理由があるのでしょうか。
「私たちの調査から、服を処分する理由として“シミ・黄ばみなどの汚れ”または”たるみや縮みなどの型くずれや損傷”とご回答される方が、とても多いことがわかっています。日々の洗たくでほんの少し意識して、ていねいなお手入れをすることで、服を傷めずに汚れをとり、形をキープしながら長持ちさせることができるんです。#これからもずっと着たい服 を少しでも長く楽しむために、ぜひ皆さんもちょっとだけていねいに洗たくをしてみてくださいね」
まずは、服が着られなくなる・処分する理由1つめの”汚れ”を防ぐ方法を深井さんにお聞きしました。
【その1】なるべく溜めない!着たらすぐ洗う!
その日に着た衣服…タオル…寝具…気がつくと、毎日意外とたくさんの洗たく物が溜まるもの。そんな洗たく物たちを洗う鉄則があるそうです。
「基本は着たらすぐに洗うのが鉄則です。ただ、1日に2回も3回も洗うのは大変ですよね。そういう場合は、通気性の良い置き場を決めて、◯枚溜まったら洗うなどのマイルールを決めています。そして大切なのは、洗たく機に入れる服の量と洗剤の量。洗たく機に目いっぱい服を入れてしまうと、洗剤やお水がうまく行き渡らず汚れ落ちが悪くなります。また、洗たくする衣類の量にあわせて、適切な量の洗剤を使うことで衣類を清潔に保つことができます」
【その2】白シャツの洗い方を覚えておこう!
そして、誰しも1枚は持っているであろう”白シャツ”の洗い方を教えていただきました。
「白シャツの洗い方は洗たくの基本です。洗剤と酸素系漂白剤で洗いましょう。襟周りや脇が黄ばみがちなので、洗う直前に液体洗剤を直接馴染ませておくとよりきれいに仕上がります。また、汚れがひどい場合は、洗剤・酸素系漂白剤を水に溶かした液にしばらくつけてから洗うといいと思います。皮脂などの油汚れは、時間が経ち、酸化すると落ちにくくなります。なので、汚れたらすぐに洗うと落としやすいです」
【その3】衣替えにも一工夫しよう。
日々の洗たくだけでなく、衣服の保管にも気をつけたいとおっしゃる深井さん。
「特に夏の服は、肌に直接触れるものが多く、きれいに見えても汗や皮脂が染み込んでいまする場合があります。1年ぶりに出した夏物が黄ばんでしまっていた経験がある方も多いのではないでしょうか。時間が経って酸化してしまった汚れは落とすのは難しいので、衣替えの時には、洗剤と漂白剤でしっかりとつけ置き洗いをしてからしまってください」
お気に入りの服が縮んでしまうなど、型くずれに悩まされた経験、誰しもありますよね。どうしたら防げるのでしょう?
【その1】洗たく表示を必ず確認しよう!
普段見ない人も多いであろう、洗たく表示はしっかりと確認しなければならないそう。
「現在の服は、デザインも素材もとても多様に進化しているので、見た目や触っただけでは素材が分からないものも増えています。だからこそ服の洗たく表示は必ず洗う前に確認してください。見慣れないと難しく感じるかもしれませんが、意外と簡単なんです。表示の一番左の“桶のマーク”に×が付いているものは、クリーニング店などお洗たくのプロに任せるようにしましょう。気をつけないと縮んでしまったり、シワがついてしまいます。逆にシルクのような繊細な素材に見えても、ご家庭で洗えるものもあります。洗たく前はもちろんですが、私は購入時にもチェックするようにしていますよ」
【その2】形状キープのポイントは洗たくネットと干し方!
洗たくのときにおきがちな、形崩れを防ぐポイントは?
「洗たくネットはぜひ活用していただきたいです。洗たく槽の中で衣類同士が絡んで、伸びたり傷んでしまうのを防止してくれます。形をキープしたいものや、袖の長い絡みやすい衣服は、なるべく1着ごとにネットに入れると、汚れ落ちも良く形状もキープできます」
また、洗いあがった洗たく物を干すときはどうしたら良いでしょうか?
「干す際には、ハンガーを使いますが、服の肩幅にあわせた幅のハンガーを使うことが大切です。私は幅を調整できるハンガーを使っていますが、とても便利です。細いハンガーですと肩に跡がついてしまうので、Tシャツやカットソーなど型崩れしやすいものは、肩に厚みがあるハンガーを活用しています。また、なるべく服と服の間をあけて干し、布同士が重ならないように干すと気持ちよく乾きます。厚手の服は、袖を物干し竿に引っ掛けるようにしたり、ジーンズは裏返して、ピンチハンガーを使って筒干しにしたり、とにかく空気が通るように工夫して干しています」
【その3】ニットは洗い方も干し方も大切!
なんとなく家庭で洗うには難易度の高そうなニットも、きちんと洗剤を選ぶと家庭でも洗えるそうです。
「まず最初に、必ず洗たく表示を見て、ご家庭で洗えるかどうかを確認してください。おしゃれ着用洗剤・酸素系漂白剤に加えて、柔軟剤を使うことでふわっと仕上がります。洗たく機にもおしゃれ着洗い専用コースがあったりするので、ご家庭の洗たく機のコースもご確認ください。他のものと洗うときは必ず洗たくネットに入れるようにしてください。ニットは、目立たなくても首回りや袖周りに皮脂汚れがついていますので、液体洗剤を直接つけてから洗うといいと思います」
実は、ニットは洗い方だけでなく、干し方もとっても重要だとか!
「ニットの場合、乾かすときにもポイントがあります。ハンガーなどで干すと、どうしても重みでダラーンと伸びてしまいがちです。“平干し”するとカタチが崩れにくいので、ぜひ挑戦してみてください。平干し用のネットもあるので、こだわりのニットを洗うときはぜひ使ってみてくださいね」
ただ、洗たくのプロ深井さんでもご家庭で洗えないものがあるそうです。
「着物・革製品は、水に浸けただけで色が落ちたり、カタチ・風合いが変わってしまうので、専門店で洗ってもらうようにしてください。特にシルクで織られた着物は、水に浸けただけで“色泣き”といって色が滲んでしまうこともあります。普段から汚れないように気をつける方がいいですね。ただし、最近の着物の中には、家庭で洗えるものもあります。洗たく表示を確認して、手洗いできるものであれば、おしゃれ着用洗剤と柔軟剤を使うと風合いよく仕上がります」
最後に、花王のファブリックケアの考える衣服との付き合い方についてもお話をお聞きしました。
「着るだけで落ち込んでいた気持ちを上向きにしてくれたり、リラックスさせてくれたり、服には不思議な力を感じることがあります。そんな力を持つ大切な1着を着ることで、幸せな1日を送ってほしい、服が自分にとって一層価値あるものになるようにお手伝いがしたい、といつも思っています。衣類の種類や目的にあわせて、アタック、エマール、ワイドハイター、ハミングなどでていねいにお手入れをしていただくことで、これからもずっと着たいと思う大切な服にさらに愛着がわき、長く着続けていただけるようになることを願っています」
花王 マーケティング創発センター 生活者研究部 くらしのきれい研究室
生活者との対話や家事などの行動観察を通じて、
くらしの現場やその背景にある想いを研究しています。