
この記事の監修者
整形外科医・竹谷内医院院長
竹谷内 康修さん

東京慈恵会医科大学卒業後、福島県立医科大学整形外科学講座に入局。
複数の病院にて整形外科医として勤務後、米国へ留学。2006年、カイロプラクティックの名門大学のナショナル健康科学大学を首席で卒業。
2007年に開業。新聞、雑誌へ健康記事の寄稿多数。代表的な著書は「自分で治す!頚椎症」(洋泉社)、「自分で治す! 脊柱管狭窄症」(洋泉社)、「腰痛を根本から治す」(宝島社)。著書が十数冊ある。
花王株式会社
今井 奈津子さん

花王株式会社入社後、ヘルスケア製品の商品開発研究に一貫して従事。併せて、ヒトの恒常性、血流、睡眠などの生体機能に関する基盤研究にも取り組み、その知見を活用して科学的エビデンスに基づく開発設計から製品化を行う。
目次
※竹谷内さんは1~3、5のパートを、今井さんは4のパートを監修しています。

肩こりは、1つの原因だけではなく、いくつかの要因が重なって起こりやすい。
とくに多いのが、デスクワークやスマートフォンの使用によって、姿勢が乱れたり同じ姿勢がずっと続くこと。
長い時間座ったままや前かがみの姿勢が続くと、首や肩の筋肉がずっと緊張したままの状態になる。
さらに、集中していると姿勢が崩れたり、呼吸が浅くなったりして、さらにこりやすくなる。

また、運動不足も原因の1つ。身体を動かす機会が少ないと、筋力が低下して血流が悪くなったり、同じ筋肉ばかりを使って特定の部位に負担が集中し、こりが起こりやすくなったりする。
さらに、緊張やストレスによって、交感神経の活動が優位になり、筋肉がこわばってこりにつながることも。寒い環境で身体が冷えることでも、神経の働きにより、筋肉が縮こまりやすくなる。
肩こりと一緒に起きやすい症状として、以下のような症状がある。
肩こりは肩や首の筋肉が緊張し続けた状態を指す。姿勢が悪い・同じ姿勢を続けている・自律神経のバランスが乱れていることが原因。結果として筋肉が緊張してさまざまな症状が現れるが、その1つが肩こり。
そのため、肩はほかの不調と同時に現れやすいのが特徴。

はじめのうちは、肩や首が重い・だるい・少し痛いといった軽い違和感が中心。さらに緊張状態が続くと、頭痛や目の疲れ・めまい・吐き気・手や腕のしびれへと広がることもある。

肩や首は、自律神経の影響を受けやすい部位です。作業や考えごとが続くと、交感神経の活動が優位になって、筋肉の緊張がなかなか抜けず、症状が重なりやすい状態となってしまいます。
肩こりの緩和・解消として、試してほしい方法を紹介。

肩こりをやわらげるには、同じ姿勢を続けないことが大切。
たとえ姿勢が良くても、長い時間そのままでいると、肩や首はこりやすい状態となってしまう。筋肉にずっと力が入ったままだと、神経からの収縮の命令が続き、スイッチがオフにならない。
そのため、30分に1回を目安に立ち上がったり、姿勢を変えたりして、筋肉を意識的にゆるめよう。立つのが難しい場合は、座ったまま身体の向きを変えるなど、小さな動きでも負担を分散できる。
ゆっくり深呼吸をする、軽く身体を伸ばす、少し歩くといった動きも効果的。

日常生活で、身体を動かす習慣をつくることも大切。身体を動かすことで、筋肉にずっと力が入ったままの状態から、ゆるむ状態へと切り替わりやすくなる。
ランニングやヨガ、ジムでの運動など、しっかり動ける人は、無理のない範囲で運動を取り入れよう。とくにお腹や背中の筋肉を鍛えることで、姿勢が整いやすくなり、肩や首の負担も軽くなる。
運動が苦手な場合は、通勤で少し多く歩く、夕方に散歩をするなど、できることからはじめよう。

肩こりをやわらげるには、こりやすい部分を直接ゆるめるストレッチが効果的。とくに首から肩にかけての筋肉は負担がかかりやすく、こりを感じやすい。

肩をすくめるようにぐっと持ち上げて、ストンと力を抜く動きを繰り返すと、筋肉はゆるみやすくなる。一度力を入れてから抜くことで、かたまっていた筋肉がほぐれやすくなり、こりの軽減につながる。
肩甲骨をぐるぐる回すように動かすのも効果的。肩まわりの筋肉が広く動き、こりを感じやすい部分までゆるめやすくなる。
また、腕を振って歩くことでも、間接的に肩の筋肉を使うことができる。

リラックスする時間をつくり、自律神経を整えることも、肩こりの改善につながる。毎日、何も考えずに過ごせる時間や、気持ちがゆるむ時間を意識してつくることが大切。
とくに遅くまで仕事をしていると、交感神経の活動が優位な状態が続き、身体が緊張したままになりやすい。
そのままでは、夜になっても身体がリラックスモードに切り替わりにくく、肩こりの原因になるだけでなく、睡眠にも影響を及ぼしてしまう。
漫画や映画鑑賞などは、脳が活発に働きやすく、リラックスとは逆の状態になってしまうため、音楽を聴く、アロマを取り入れる、瞑想をするなど、頭を使わずにできる方法がおすすめ。
目や耳を温めるケアも、自律神経を落ち着かせるきっかけになる。

温めるケアは、血流だけでなく神経の反射にも影響します。肩を温めるだけでなく、目を温めるのも効果的です。温めることで、副交感神経の活動が優位になり、身体をリラックスさせることができ、さらに目からの情報が遮断されることで脳を休める効果も期待できます。

肩こりをやわらげるには、湯船に浸かることもおすすめ。ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、身体の緊張がやわらぎやすくなる。
お湯の温度は38〜40℃程度、入浴時間は10~15分ほどが目安。熱すぎるお湯は、交感神経を刺激し、身体が活動モードに入ってしまうため、夜のリラックスタイムには向かない。
また、必ずしも全身浴にこだわる必要はなく、半身浴でも十分に身体は温まる。お湯の量が多いと胸まわりが圧迫されやすく、身体への負担が大きくなるため、無理のない入り方でくつろごう。
とくに、炭酸ガス系の入浴剤を取り入れると、血行促進効果や温浴効果が得られ、身体がより温まりやすくなる。疲れを感じやすいときにも取り入れやすい。

肩こりをやわらげるには、日常の姿勢を見直すことが大切。頭が前に出る姿勢は、首や肩に負担がかかりやすく、猫背や巻き肩の原因にもなる。
とくにパソコンやスマートフォンを使うとき、ずっと下を向いたままだと負担がたまりやすい。ひじが前に出ると頭も前に出やすくなるため、ひじを引くことを意識しよう。
パソコン作業では、モニターの高さを上げたり、キーボードと画面を分けたりする工夫が効果的。足が床につかないと身体が安定せず力が入りやすいため、椅子の高さを調整してしっかり足を床につけることもポイント。
スマートフォンは顔の高さまで持ち上げるのが理想だが、長時間続けるのは難しい。机にひじをついて高さを保つなど、無理のない範囲で整える意識を持つこと。


皮膚だけでなく、深部まで身体を温めると、血流循環が促進される。血流が良くなると酸素や栄養が行き渡りやすくなったり、緊張していた筋肉がゆるみやすくなる。こうした変化が、肩こりの軽減につながる。
なかでも、蒸気による温熱ケアは「より広く、深く温める」のが特徴。温かい蒸気が、肌の上で熱を放出することで深部までしっかり温まり、より効率的に血流循環を促進できる。
また、身体がぽかぽかしてくることでリラックスしやすくなり、無意識の力みをやわらげる。血流の改善と心身のゆるみがそろうと、筋肉はよりほぐれやすくなる。

肩こりの温熱ケアでは、つらさを感じる患部を直接温めることが大事。一方で、首もとや足もとなどを温めて全身の筋肉をゆるめることも、間接的な肩こり対策になる。
温度は、熱すぎずぬるすぎない「心地よい」と感じる範囲が目安で、一般的には40℃前後が基準となる。
30分程度の患部への温熱ケアでも「こり」や「張り」がやわらいだと効果を実感しやすい。
蒸気温熱であれば、より広く深部まで温めるとともに、じんわりと心地よく温めることができる。

一方で、肩こりそのものの改善には、より長い時間(目安5~8時間)の温熱ケアが有効。
たとえば、6時間以上温めることを2週間ほど継続したところ、肩こりの改善が見られたという報告もある。
A.肩こりの緩和に効果が期待できる。

ツボの作用について、詳細なメカニズムは完全には解明されていませんが、ツボは神経の受容体が敏感に集まっている場所です。
押して刺激することで神経の反射が起こり、筋肉がリラックスしやすくなります。
マッサージも同様に、皮膚や筋肉、筋膜へ触れることで神経への刺激が入り、こりをやわらげる効果につながります。
A.肩こりと腰痛は、同時に起こることが多い不調。

肩こりがあるから腰痛になる、腰痛があるから肩こりになるという直接的な関係ではなく、それぞれの原因が似ているため、同時に起こるケースが多いといえます。
首と腰は、どちらも自律神経とのつながりが強く、同じ神経の働きを介して同時に起こりやすいと考えられます。また、姿勢の乱れも共通の原因の1つ。
前かがみや猫背の姿勢が続くことで、首と腰の両方に負担がかかりやすくなります。
A.肩こりの改善にかかる時間は、原因によって大きく変わる。

一時的な負担であれば、しっかり休むことで回復することもありますが、長時間のデスクワークなど原因が続く場合は簡単には改善しにくいです。
ストレッチやマッサージで、一時的に解消されても、翌日また同じ姿勢を続ければ、筋肉の緊張が繰り返されてしまいます。
原因が解消されないまま症状だけを改善するのは難しいため、日常的に身体を動かすことが重要です。
とくに社会人の場合は運動量が不足しがちですので、意識的に身体を動かす習慣を持つことが、肩こり改善に大きく関わります。