
この記事の監修者
整形外科医・竹谷内医院院長
竹谷内 康修さん

東京慈恵会医科大学卒業後、福島県立医科大学整形外科学講座に入局。
複数の病院にて整形外科医として勤務後、米国へ留学。2006年、カイロプラクティックの名門大学のナショナル健康科学大学を首席で卒業。
2007年に開業。新聞、雑誌へ健康記事の寄稿多数。代表的な著書は「自分で治す!頚椎症」(洋泉社)、「自分で治す! 脊柱管狭窄症」(洋泉社)、「腰痛を根本から治す」(宝島社)。著書が十数冊ある。
花王株式会社
江野口 祐佳さん

花王株式会社に入社後、健康科学の基盤研究を経て商品開発研究に従事。健康食品開発、女性の健康に関する研究などを経験し、現在はヘルスケア製品開発に従事している。
目次
※竹谷内さんは1~3、5のパートを、江野口さんは4のパートを監修しています。

非特異的腰痛は、診察をしても原因を1つに特定しきれないタイプの腰痛。腰痛の約85%はこのタイプに該当するとされており、特定の疾患ではなく、日常生活の中にある複数の要因が重なって起こると考えられている。
【腰の痛みにつながりやすい行動や習慣】
こうした要因は単独ではなく、いくつも重なって影響するケースが多い。負担が積み重なることで、痛みが長引いたり、慢性化したりする可能性もある。筋肉の緊張やこわばりが関係している場合には、姿勢を変えたり身体を軽く動かすとやわらぐこともある。

腰痛の多くは要因が1つではなく、「生活習慣」や「環境」が重なって起こるケースが多いです。同じ姿勢を続けない・日常の中で身体を動かすなど、ちょっとした心がけで腰痛になりにくくなることもあります。
特異的腰痛は、診察によって原因を特定できるタイプの腰痛。問診や触診、動きの確認などを行い、必要に応じてX線やMRIといった画像検査も組み合わせながら、原因を総合的に判断していく。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が代表的な例であり、ほかにもさまざまな原因が考えられる。
特異的腰痛は、腰痛全体の中では多くはない。しかし、原因に応じた対応が必要になるため、筋肉のこりなどとは異なり、単なる腰痛対策だけでは不十分なケースもある。自己判断で対処せず、気になる症状がある場合は、医療機関での受診につなげることが大切になる。
腰まわりの痛みは、関係する組織によって起こることが多い。代表的な組織は、椎間板・椎間関節・仙腸関節・腰まわりの筋肉・股関節など。

これらの組織はそれぞれ独立しているわけではなく、互いに影響し合っている。たとえば、筋肉の緊張が関節や椎間板への負担を増やすこともあり、1つの原因だけで説明できないケースも多い。

腰痛予防の基本は、余計な負担をかけない姿勢を意識すること。座るときは骨盤を立て、背筋を無理なく伸ばし、足裏で身体を支える姿勢が理想。背もたれにはしっかりもたれるとよい。
ただし、姿勢は「正しければよい」というものではない。同じ姿勢を続けることで筋肉は固まりやすくなるため、30〜60分に1回は立ち上がる・数歩歩くなど、こまめに身体を動かすことが大切になる。

腰痛予防では、正しい姿勢を意識することも大事ですが、同じ姿勢を続けないことも同じくらい大事です。姿勢そのものより、身体が固まらないことを意識してください。

ストレッチは、筋肉の緊張をやわらげるのにおすすめの方法。単に動かすだけでなく、ゆっくりと腰を伸ばし、身体をほぐすような感覚で続けると効果がより高まりやすい。
また、お尻や太もも、股関節まわりなどの腰につながる部分も一緒にほぐすことも大事。身体を動かしやすい状態に保つために、ストレッチはぜひ取り入れたい習慣といえる。

筋肉がずっと緊張したままだと、腰の負担も抜けにくくなります。無理のない範囲で、続けやすいストレッチを習慣にするのがよいと思います。

腰痛予防では、日常の動きを増やすことが重要になる。リモートワーク中心の生活では、活動量が減りやすいため、まずは歩く時間を増やす・こまめに立ち上がるなど小さなことからでも始めると習慣化しやすい。
すでに痛みがある場合は、無理に強い運動をするのではなく、歩く・軽く身体を動かすといった負担の少ない動きから実践すると続けやすい。

身体を動かす機会が少ない人は、まず歩くことからで十分です。いきなり強い運動をするより、日常の中で少しずつ動く時間を増やすほうが続けやすいです。
寝姿勢は、痛みがなければ過度に気にする必要はない。一方で、腰に違和感がある場合は「楽に感じる姿勢」を基準に調整をするのがよい。
マットレスは硬さだけで判断せず、体圧が偏らず、身体を無理なく支えられるかどうかが重要。硬すぎても柔らかすぎても負担になるため慎重に選ぼう。

寝姿勢は、痛みがない人ならそこまで気にしすぎなくて大丈夫です。ただ、腰が痛い場合は楽な姿勢を選んだほうがよいですし、マットレスも硬さだけでなく体圧分散を見て選ぶことが大切です。

寒い環境では筋肉が緊張しやすくなり、腰まわりもこわばりやすくなるため、過ごしやすい温度を保つのが大切。
快適に過ごせる温度の目安としては、18℃以上に保つことが望ましい。オフィスなど自分で室温調整が難しい環境では「首・手首・足首を温める」「ふくらはぎを動かす」「温かいものを飲む」といった工夫を取り入れると効果的。

寒い環境では身体がこわばりやすくなります。室温を適度に保つことで、心身に余計な負担をかけずにすみ、リラックスしやすくなります。また、自律神経も整いやすくなるため、睡眠や休息の質も高まり、結果として身体全体のこわばりをやわらげることにつながります。
入浴は、腰痛予防として取り入れやすい習慣の1つ。湯船に浸かると身体が温まり、筋肉のこわばりがやわらぎやすくなる。シャワーだけで済ませる日が続いているなら、無理のない範囲で湯船に浸かる日を増やしたい。

また、入浴には筋肉をゆるめるだけでなく、気持ちを切り替えやすくする面もある。ぬるめのお湯でゆっくりと温まると、身体の緊張がほどけて、休息のスイッチが入りやすくなる。
38〜40℃程度のぬるめのお湯に、10〜15分ほど浸かるのが理想。

入浴は、筋肉を温めて緊張を取りやすくするだけでなく、リラックスにもつながります。炭酸ガス系の入浴剤を使うことで、さらに温まりやすくなります。
腰痛予防では、ストレスとの付き合い方も見直したい。仕事や人間関係だけでなく、音やにおいなどの刺激も身体の緊張につながることがある。
ストレスが続くと筋肉の緊張が抜けにくくなるため、休息の時間を取る・入浴や軽い運動で切り替えるなど、筋肉とともに気持ちをゆるめる習慣を持つことが大切になる。

ストレスは、気づかないうちに身体を緊張させます。いわゆるストレスとして感じやすい仕事の悩みや人間関係のトラブルだけでなく、音やにおいもストレスの要因になりやすいです。休日はしっかりと休む・好きなことに没頭するなど、自分なりのストレス発散方法を見つけておくとよいでしょう。

温めることで血流が促進され、筋肉のこわばりが軽減される。その結果、腰まわりの負担が緩和され、痛みも間接的にやわらぎやすくなる。

腰を温める方法には、いくつかの方法がある。
【入浴】
【蒸しタオル】
【専用の温熱ケア用品】
なかでも、蒸気による温熱ケアは「より広く、深く温める」のが特徴。温かい蒸気が、肌の上で熱を放出することで深部までしっかり温まり、より効率的に血流循環を促進できる。
また、身体がぽかぽかしてくることでリラックスしやすくなり、無意識の力みをやわらげる。血流の改善と心身のゆるみがそろうと、筋肉はよりほぐれやすくなる。
温める際は、熱すぎず心地よいと感じる温度(目安として40℃前後)を意識するとよい。また、1日8時間以内の温熱ケアを2週間継続すると、腰痛が改善したという報告もある。

長時間同じ姿勢をとったり、身体が冷えたりして違和感や軽い痛みを感じたりしたときには、温めることがおすすめ。
※強い痛みや急な症状がある場合は、医療機関にご相談ください。
A.筋肉が関係している腰痛では、改善につながることがある。

マッサージでよくなる腰痛はあります。たとえば、筋肉の緊張が強いために引き起こされた腰痛であれば、マッサージで筋肉をほぐすことで、腰にかかっている負担が軽くなり、症状がやわらぐことがあります。
一方で、腰痛の原因が筋肉ではなく、仙腸関節や椎間関節、椎間板などにある場合は、マッサージでよくなるとは言いにくいです。
A.まったく無関係とは言えないものの、関連は強くない。

ひどい便秘でお腹の張りが強いときや、腹部の不調があるときに、腰のあたりまでだるさや痛みを感じることはありえます。
下痢でも便秘でも、お腹の調子が悪いときに腰まわりがつらく感じることは、症状の1つとしてあるからです。
ただ、それをもって「便秘が腰痛の主な原因になる」とまでは言いにくいです。腰痛には筋肉や関節、椎間板などさまざまな原因があり、腰痛の主要な原因として強く結びつける症状ではないです。
A.人によっては楽になることもあるが、効果を一般化するのは難しい。

楽になる人もいるかもしれませんし、あまり変わらない人もいると思います。
温めること自体は、筋肉の緊張をやわらげたり、リラックスにつながったりする面があるので、その延長でサウナが腰痛対策として合う場合もあるかもしれません。
自律神経の緊張が少し落ち着くことで、結果として楽に感じる可能性もあります。