
この記事の監修者
産婦人科専門医
大島 乃里子さん

日本産科婦人科学会専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医、医学博士。東京科学大学病院 周産・女性診療科 非常勤講師。
東京都立多摩総合医療センター女性ヘルスケアセンター センター長。
婦人科腫瘍のほか女性医学の専門医でもあり、思春期から老年期までの女性の生涯におけるヘルスケアを担っている。
花王株式会社
江野口 祐佳さん

花王株式会社に入社後、健康科学の基盤研究を経て商品開発研究に従事。健康食品開発、女性の健康に関する研究などを経験し、現在はヘルスケア製品開発に従事している。
目次
※大島さんは1、2、4~6のパートを、江野口さんは3のパートを監修しています。

生理痛の主な原因は、「子宮の筋肉の収縮」「子宮内の血管の収縮」「プロスタグランジンの分泌」の3つ。
子宮の収縮による痛みは、子宮の筋肉である平滑筋が強く縮むことで生じるもの。
さらに、子宮内の血管が収縮して血流が悪化すると、虚血に近い状態となり、痛みが強まりやすくなる。子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンも、痛みを引き起こす要因の1つ。
そのほか、炎症反応によって痛みを感じやすい状態になったり、神経の働きによって痛みが伝わりやすくなったりと、複数の要因が重なることで痛みを感じる。

生理前にも下腹部が痛くなるのは、子宮が月経前から収縮を始めることがあるため。月経血が出てくる前から、子宮は内膜を外に出すための動きを始めている。
血が出るためには、子宮が収縮しなければならない。その準備段階が先に始まることで、生理前に痛みが来る場合がある。
冷えと生理痛は関係しており、痛みを悪化させる要因の1つ。生理痛には血管の収縮が関わっていて、冷えによって血管が縮むと、子宮周辺の血流が悪くなり、痛みが出やすくなる。

冬は生理痛が重くなる人もいるが、気温の低下に加えて活動量が減りやすく、血流が悪化することも原因。身体を動かさないことで筋肉がこわばり、痛みが出やすい状態に。
生理中だけでなく、普段から身体を冷やさない意識を持つことは重要。局所だけでなく全身を冷やさない生活を心がけ、日常的に身体を温めることが、生理時の不調対策の土台になる。

生理中だけではなく、普段から冷えにくい状態を保つことが、生理痛の緩和にもつながります。普段より厚着をしたり温かい飲み物を意識的に飲むなど、無理のない範囲で身体を温める習慣を続けることがポイントです。日々の積み重ねとして、冷やさない生活を意識しましょう。


生理痛を和らげるには、身体を温めることも有効だと考えられている。冷えによって血流が悪くなると、下腹部や腰まわりの不調が出やすくなることがあるため、温めて血流を良くすることが大切。
痛みに関わる物質が流れやすくなり、つらさの軽減につながる。
また、月経に伴い、下腹部の痛み(生理痛)のほか、腰に痛みや重だるさを感じることもある。
実際に下腹部、あるいは腰背部を温めることで「月経痛を含む月経関連症状の緩和が見られた」という報告もある。「痛みや不調を感じる場所や心地よく感じられる場所を温める」ことがポイント。


温め方としては、入浴や蒸しタオルのほか、専用の温熱ケア製品を使う方法がある。
なかでも、蒸気を使う温熱ケアは深く広く身体を温めやすく、じんわり温められるため、心地よく使えるのが特徴。
月経中は肌が敏感になりやすいため、肌に直接貼るよりも、衣類に貼るタイプのほうが取り入れやすい場合もある。生理中だけではなく、普段から身体を冷やさない工夫が、生理痛の緩和には大切。

身体を動かすことも生理痛緩和につながる。血流が悪くなり、筋肉が固まることで痛みが出てくるので、筋肉を動かして血流を促すことが大切。
身体を動かすことは、全身を温めることにもつながる。なかでも筋トレは有効な方法の1つで、背中や脚など大きな筋肉を鍛えることで、基礎代謝が上がり、冷えにくい身体の土台をつくれる。
マッサージで筋肉の緊張をゆるめ、血流を促すことで、生理の痛みや重だるさを軽減できる。筋肉の張りやこわばり方は人それぞれ異なるため、楽になる部位には個人差がある。
お腹や腰などつらさが出やすい部分を中心にほぐしながら、自分にとって効果のある部位を見つけることが大切。

ストレッチも筋肉の緊張をゆるめ、血流の改善につながるため、生理痛を和らげることに効果的。身体の硬さや筋肉の使い方によって、どの部位をストレッチすると楽になるかは人によって異なる。
腰まわりをゆるめる動きが合う人もいれば、骨盤や股関節まわりを動かすことで生理痛が楽になる人もいる。

生活習慣で影響しやすいものとして、睡眠不足・ストレス・生活リズムの乱れがあげられる。
痛みは神経伝達を通じて感じられるため、身体の状態だけでなく心理的な要因によっても影響されやすい。
睡眠が不足している・ストレスがたまっている・ 生活が不規則といった状態では、痛みを感じやすくなる。そのため、日々の生活を整えることも、生理痛対策として重要。
具体的には、栄養バランスのよい食事、十分な睡眠、過度なストレスをためない生活を意識することが大切。

痛みの感じ方には個人差があり、ストレスや不安が強いと、同じ刺激でもより強く痛みを感じやすくなります。精神的に不安定な状態では、実際の身体の変化以上につらさを大きく感じやすいため、心身ともに安定した状態を保つことが重要です。


しょうがは、身体を内側から温める食材として生理痛の緩和におすすめ。生理痛対策では、特定の食材で即効性を求めるより、身体を冷やしにくくし、炎症を悪化させにくい食材を継続的に摂取することが重要。
しょうが湯を飲んだり、すりおろして料理に加えたり、パウダーを活用したりと、日常の食事で無理なく取り入れよう。
魚のしょうが煮は魚に含まれるEPA・DHAといった不飽和脂肪酸も一緒に摂れておすすめ。

ビタミンB1は神経の働きをサポートする役割があり、痛みの感じ方に影響する神経のコンディションを整えてくれる。
生理痛は痛みを伝える神経の働きとも関係しているため、神経の働きに関わる栄養素を意識して補うこともポイントになる。
ビタミンB1を多く含む食材としては豚肉が代表的で、日常の食事に取り入れやすい点もメリット。
さらに、身体を温める食材であるしょうがと組み合わせたしょうが焼きは、冷え対策と栄養補給を両立しやすい一品。

マグネシウムは、筋肉の収縮をゆるやかにし、神経の興奮を抑える働きをもち、生理痛のケアに役立つ。
生理痛は、子宮の過剰な収縮によって痛みが強くなるため、筋肉の緊張をやわらげるマグネシウムを補うことで、痛みの軽減につながる。
さらに、マグネシウムは神経伝達にも関わっており、痛みを感じやすい状態を整える点でも重要。ストレスによって消費されやすい栄養素でもあるため、意識的に摂取することがコンディション維持につながる。
多く含まれる食品としては、ナッツ類や海藻、豆類など。日常の食事に取り入れやすい食材を選び、継続して摂ることが、生理痛をやわらげる土台づくりにつながる。

反対に、加工食品や高脂肪の食事は、生理痛を悪化させる要因として注意が必要。脂質の多い食事やトランス脂肪酸、砂糖の多い食品は、体内の炎症を強める方向に働きやすく、結果として痛みが強くなる。
生理痛のケアでは、特定の栄養素を足すだけでなく、炎症を引き起こしやすい食事を減らす視点も重要。
加工食品や甘いものに偏らず、野菜や果物、魚などをバランスよく取り入れる食事を心がけることが大切。食事全体の質を整えることが、生理痛をやわらげる土台づくりにつながる。

生理痛対策の食事としては、日本食に近いバランスを意識するのがおすすめです。魚や大豆製品、野菜を組み合わせた食事は、炎症を起こしにくい身体づくりにつながります。特定の成分だけに注目するのではなく、食事全体のバランスを整えることが大切です。
A.生理痛でも入浴して身体を温めたほうがよい。

月経中だからといって、湯船に入ってはいけないというわけではありません。むしろ、身体を温めることによって生理痛の緩和につながります。
月経中の入浴で気をつけたいのは、のぼせです。入浴自体に問題はありませんが、長時間入りすぎると体調を崩しやすくなります。
とくに出血量が多い時期は、温まりすぎによってめまいやふらつきが起こることもあります。無理に長く入らず、のぼせない範囲で身体を温めましょう。
A.身体を少し丸めるような姿勢が楽になりやすい。

生理痛がつらいときは、身体を少し丸めるような姿勢がおすすめ。無理に身体を伸ばすより、自然に心地よいと感じる姿勢をとることが大切です。
クッションなどで身体を支えると、お腹や腰まわりの負担を減らしやすくなります。決まった寝方にこだわらず、自分に合った楽な姿勢に調整することがポイントです。
A.本来、月経痛がない状態が正常

本来、月経痛がない状態が正常です。ただし若い時期には、機能性の月経困難症として、月経前から1〜2日目にかけて痛みが出ることもあります。
一方で、痛みが数日続いたり、年齢とともに強くなったりする場合は注意が必要。
子宮内膜症や子宮腺筋症などが隠れている可能性もあるため、「生理だから」と見過ごさず、変化を目安に受診を検討しましょう。