
この記事の監修者
医学博士
久手堅 司さん

2003年に東邦大学医学部卒業、東邦大学付属医療センター大森病院、済生会横浜市東部病院での臨床経験を経て、2013年8月に「せたがや内科・神経内科クリニック」開設。「頭痛外来」「自律神経失調症外来」など複数の特殊外来を立ち上げ、特に「気象病・天気病外来」「寒暖差疲労外来」はテレビ・新聞・雑誌・ウェブなど各種メディアで話題を呼んでいる。気圧予報・体調管理アプリ「頭痛ーる」監修医師。
日本内科学会 総合内科専門医/日本神経学会 神経内科専門医/日本頭痛学会 頭痛専門医/日本脳卒中学会 脳卒中専門医

ストレスというと、人間関係の悩みや仕事のプレッシャーなど心理的な負担を思い浮かべる人が多い。
実際には、ストレスの原因となるものはそれ以外にも、物理的な負担・化学的な負担・生物的な負担などさまざまある。
【心理的/社会的ストレッサー】
【物理的ストレッサー】
【化学的ストレッサー】
【生物的ストレッサー】
ストレスは「短期的なもの」と「長期的なもの」の2つに大きく分けることができる。

一時的・瞬間的にかかる負担が原因のストレスは、その原因を取り除けば回復しやすい。また、適度なストレスは集中力や注意力を高めることもあり、状況によってはプラスに働く場合もある。
ただし、短期的なストレスでも繰り返し受けると長期的なストレスとなり、心身の負担になることがある。また、同じ種類のストレスだけが影響するわけではない。
たとえば、同じ日に電車の遅延、重要なプレゼン、職場での注意など、異なる種類の小さなストレスが重なることで、身体や心へのダメージが強く感じられる。

長期的なストレスは、数週間~数ヵ月、場合によっては年単位で続く負担。慢性的なストレスは原因が1つではなく、複数の要因が重なっていることも多い。
また、小さなストレスが積み重なって慢性的なストレスとなることや、本人が強いストレスだと自覚しないまま少しずつ蓄積していくケースもある。

ストレスは強い出来事だけが原因とは限りません。軽くて瞬間的な負担でも、重なったり長く続いたりすることで体調不良を招く危険があります。
まずは自分がどのようなストレスを受けているのかを広い視点で整理してみてください。それが、ストレス解消やストレスの慢性化予防につながります。

ストレスが続くことで引き起こされる体調不良の背景には、自律神経やホルモンバランスの乱れがある。
自律神経には、身体を活動的な状態にする交感神経と、身体を休ませる方向にはたらく副交感神経がある。通常はこの2つが状況に応じて切り替わり、身体の状態を一定に保っている。
しかし、慢性的なストレスにさらされると、交感神経活動が優位な状態が続きやすくなり、睡眠の質の低下や疲労感の蓄積につながる。

また、ストレスはホルモンの分泌にも影響を与えるとされている。ストレスを受けると、脳からの指令によって副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌される。
コルチゾールは本来、身体を守るために必要なホルモンで、一時的なストレスに対処する際には重要な役割を果たす。
一方で、強いストレスが長期間続くと、コルチゾールの分泌を調整する脳の仕組みがうまく働かなくなる。
分泌が慢性的に高い状態になると、免疫機能や神経系、代謝などに影響を及ぼし、不眠や気分の落ち込みなどの不調につながる。

ストレスがかかると、身体は交感神経活動が優位になりやすく、いわばアクセルを踏んだ状態になります。短時間であれば問題ありませんが、この状態が長く続くとリラックスする方向に切り替えにくくなります。
すると、ホルモンや免疫などのバランスが崩れやすくなり、さまざまな不調が現れます。また、慢性的なストレスにさらされると身体が元の状態に戻りにくくなる点にも注意が必要です。
ストレスに起因する体調不良にはさまざまな症状がある。体調不良の程度には個人差があり、メンタル面だけでなく、身体面や睡眠トラブルまで広がることもある。
比較的よく見られる症状は、だるさや疲れやすさといった全身の不調。また寝つきが悪い、夜中に目が覚めるといった睡眠のトラブルもある。
喉に何か詰まっているような感覚やイガイガ感が続くといった喉の違和感は、ストレス要因の体調不良の初期に出やすい。
また、ストレスは胃腸の働きにも影響を与えやすく、食欲不振・胃の痛み・便秘や下痢などの症状が起こることもある。腸と脳は自律神経を通じて密接に関係しているため、精神的な負担が消化器の不調として現れる場合もある。

頭痛や動悸もストレスと関係が深い症状です。しかし、同じような症状でもほかの病気が隠れている場合もあります。気になる症状が続く場合は、自己判断で済ませず、必要に応じて医療機関で相談することも大切です。


体調不良が続いているときは、まず休むことを最優先に考える。ストレスが蓄積している状態では自律神経のバランスが乱れ、身体がうまく休めなくなっていることもある。
そのため「しっかり休まなければ」と思っても、気持ちが落ち着かなかったり、眠れなかったりすることもある。
このようなときは、無理に休もうと焦らないことも大切。たとえば仕事が大きな負担になっている場合は、思い切って仕事から距離をおくことも休み方の1つ。
予定を減らす、負担の大きい作業を一度手放すなど、身体と心がラクになる時間を確保することを意識する。

休んで体調が落ち着いてくると、「身体を動かしたい」「何かをしたい」という気持ちが少しずつ強くなる。そうした気持ちが出てきたら、近くを散歩してみる・軽く身体を動かす・好きなことをして過ごすなど、小さな行動を意識的に実践してみよう。
責任のある仕事ややらなければならないことではなく、「自分がやりたいこと」に取り組むことは、気分転換につながる。
ただ、急に元の生活にもどると、体調不良を悪化させることも。あくまで「できそうな範囲」で行動することを意識する。

身体を動かしたり好きなことを始めて調子が上向きになってきたら、次は生活リズムをゆっくりと整えることを試してみよう。
生活リズムを整えるためには、以下のような習慣を取り入れるのがおすすめ。
とくに、朝に光を浴びることで、体内リズムが整いやすくなる。日中は活動し、夜は休むというリズムを少しずつ取りもどすことで、身体も回復しやすくなる。

ストレスによる体調不良は、すぐに解決策を探したくなるものですが、症状が強いときほど「何かをしなければ」と無理をしてしまい、かえって回復が遅れることもあります。
まずは身体を休めることを優先し、状態に応じて少しずつ元の生活にもどしていくようにし、無理をしないことが回復への近道です。
生活リズムを整えるときは、「寝ること」を中心に1日の過ごし方を考えてみるのもおすすめです。睡眠は身体を回復させる大切な時間。
夜はスマートフォンをできるだけ寝室に持ち込まないなど、眠りやすい環境を整えることも意識してみてください。
ストレスによる体調不良が続いているときは、身体と心をリラックスさせる時間を作ることも大切。その方法の1つが、身体や目もとを温めること。
おすすめなのが、ゆっくりお風呂に入る方法。湯船に浸かることで、全身が水圧で程よく刺激されて、リラックス効果が高まりやすくなる。
蒸気温熱で首や肩まわり、目もとを温めることも、リラックスする方法としておすすめ。 蒸気温熱は、広範囲に深く熱を伝えることができるため、目もとを温めるだけでも副交感神経の活動が優位になり、手足(末梢)の血管が拡張する。これにより、全身の血めぐりがよくなることで、リラックス効果も高まる。
こうした温める習慣を夜の時間に取り入れることで、身体が自然とリラックスモードに入りやすくなる。また、体温がゆるやかに下がる過程で眠気も起こりやすくなり、睡眠の質の向上にもつながる。
A.自分だけで抱え込んでしまう人。

頑張りすぎてしまう人や、物事を1人で抱え込む傾向が強い人ほど、ストレスの影響を受けやすい傾向があります。責任感が強い人も注意。「自分が何とかしなければ」と考えてしまい、自分でストレスを大きくしてしまう場合もあります。
大切なのは、自分だけで抱え込まないことです。少し肩の力を抜き、周囲に相談したり、人の意見を聞いたりしながら、ゆるやかな流れを作っていくことが心身の負担を減らす助けになります。
A.少しずつ状態が良くなることを目標に。

ストレスによる体調不良は、短期間で一気に改善できません。ストレスを完全にゼロにすることは現実的ではありませんし、体調も急に元の状態に戻るとは限りません。
そのため、最初から完璧な回復を目指すのではなく、少しずつ状態が良くなることを目標にすることが大切です。体調でいえば、いきなり100点を目指すのではなく、まずは60~70点くらいの状態を目標にしていくイメージで整えていくとよいでしょう。
A.ノートなどに書き出してみる。

頭の中にある不安や悩みが整理できないときは、ノートなどに書き出してみる方法もあります。漠然としたモヤモヤを言葉にして外に出すことで、気持ちは落ち着きやすくなります。
その際に大切なのは、過去の出来事を思い出して自分を責めることではなく、「今、自分はこう感じている」と受け止めることです。また、書き出した順に自分への影響が大きい原因であることが多いです。
ストレスの原因を可視化し、改善できそうなことがあれば少しずつ取り組んでいくようにすると、気持ちの整理にもつながります。