project_03_01

project_03_01

project_03_02

Introduction

2020年初頭。花王の情報システム部門内で新しいプロジェクトがスタートした。化粧品業界でも急速なデジタル化が進む中、昔から肌解析をはじめ、科学的アプローチに取り組んできた花王でも、AIなどの最先端技術を活用した新型ツールのいち早い実用化が求められていた。そして、その翌年、世界初となる手肌の解析に特化したツールの開発に成功。今回は、その開発業務を率いた開発リーダーを中心に、花王ならではのデータ活用の可能性やメーカーで最先端技術に携わる魅力に迫っていく。

project_01

どこにもないからこそ、花王が取り組む。

project_03

花王は、データ解析のプロフェッショナルにとって、チャレンジ精神をくすぐられる環境が整っている会社だ。当時、入社3年目だった今回の開発リーダーもその環境に惹かれて入社を決めた一人。「ここには人の肌や髪、美容、健康などに関する膨大なデータがあり、さらに自分たちでデータ解析やシステム開発もできる。しかも、優秀な先輩たちが揃っているのです」と入社動機を教えてくれた。そんな彼が新しい挑戦テーマを見つけ、動き出したのが、2020年2月。花王の次世代化粧品コミュニケーション開発チームのリーダーを務める主席研究員からの依頼がきっかけだった。「当時、顔の肌解析に関するAIツールは海外企業が先行して研究開発を進め、実用化まで辿りついていました。そこで、花王オリジナルの解析ツール開発を目指し、日々酷使し乾燥や紫外線にさらされている手肌に着目。AI/機械学習を活用したツール開発実績のある情報システム部門の彼らに声をかけたのです」と主席研究員は当時のことを振り返る。世界中どこにもないからこそ花王が取り組むべきテーマなのではないか、という共通の意志の下、プロジェクトがスタートした。そして間もなく、後に開発リーダーを務めることになる彼の元にスキンケア研究所から無数の手の画像が届く。多少のプレッシャーは感じつつも、同じ情報システム部門の頼れる先輩や、スキンケアに関する圧倒的な知見を持つ研究員の方々にも協力してもらい、解析を開始することにした。

project_02

突然の在宅勤務。
新たなやり方を考える。

project_03_08

約2ヶ月間の検討の結果、手の画像をAI/機械学習を活用して解析すれば、シミやシワ、カサつきなどから、顔と同じように肌年齢を割り出すことができそうだという可能性が見出せた。続いて取り組んだのは、膨大な数の手の画像に対して研究員に一枚一枚ラベルを貼り付けてもらう作業。AIの学習に欠かせない下準備だった。しかし、この準備を進めている最中、新型コロナウイルスの感染拡大によって、花王の研究員たちも突然の在宅勤務を強いられることになる。「困りましたね。約半年後にはこの新しい技術を発表するスケジュールが組まれていましたから。そこで急遽、研究員が在宅勤務でも同じ作業ができるよう、そのための補助ツールを開発することにしたのです」と開発リーダーは当時のことを事態の重さとは裏腹にさらりと語る。できないと簡単にあきらめる前に、どうすればできるかを考える。それは、花王の情報システム部門のDNAなのかもしれない。そして、この補助ツールの活躍もあって、プロジェクト全体のスケジュールにほぼ影響なく進めることができた。さらに、このタイミングで外部の強力なパートナーにも参加してもらい、技術開発も加速させた。自分たちが主導となり、足りない技術、学びたい技術を組み入れていく。こうした仕事の進め方ができるのも、事業会社であるメーカーの情報システム部門ならではだ。

project_03_09

project_03

世の中に送り出すため、
もっと良くしよう。

project_03_10

2020年7月。プロジェクト始動から約半年というスピードで、手肌の解析を行うAI技術の土台ができあがる。しかし、この開発リーダーはそこで満足しない。その使い方をよりイメージしてもらえるよう、アプリのようなツールのプロトタイプ開発に取り組み始めた。常に隣でその仕事ぶりを見てきた先輩は語る。「私は入社当初から彼の教育担当をしていました。彼はデータ解析のプロフェッショナルとしても優秀ですが、常にその先を見据え、関係各所との調整や関係構築を行うなど、技術を世の中に送り出すための熱意や行動力が人一倍すごいと思います。今では後輩というより、頼れる同僚といった存在ですね」。また、彼は解析技術に関しても研究員のフィードバックを得ながら、さらなるブラッシュアップに励んだ。そして、2020年10月。いよいよ花王社内の展示会で世界初の手肌解析ツールのプロトタイプがお披露目された。花王の様々な化粧品・スキンケアブランドの担当者が関心を示していく。中でも、特に関心を示したのが、美しさのリズムに着目した商品や美容の提案を行う「TWANY」のブランド担当だった。「コロナ禍で人と人の接触が難しくなる中、このツールは非接触で手肌の解析ができる点に惹かれました。さらに、化粧品だと敷居が高いお客様でも、ハンドケアという入口であれば気軽にトライしてもらえるのではと思ったのです」とこの手肌解析ツールを初めて見た時の感想を語ってくれた。

project_04

花王には、挑戦を続けられる環境がある。

project_03

社内での展示会から4ヶ月後、「TWANY」の事業部から「このツールを使って店頭活動をしたい」という正式なオファーが届く。そして、2021年5月、さらなる改良を施し、初めて実際のお客様に使ってもらえるところまで辿りついた。「現場には行けませんでしたが、“お客様の反応も良かった”との声をもらうことができました。データ解析の仕事に魅力を感じたのと同じくらい、花王の製品が好きでこの会社に入社したので、やはり自分の技術で少しでも売り上げに貢献できたと思えると嬉しいですよね」と開発リーダーはメーカーの技術者の醍醐味を語る。また、このプロジェクト全体を率いた主席研究員は「よきモノづくりの名の下、製品を開発することに力を入れてきた花王ですが、これからは製品(ハード)と同じくらいソフトにも力を入れていかなければいけない時代。花王の情報システム部門には、これからもその中心的な役割を担ってほしいですね」と開発リーダーたちとの協業による今後の可能性を語ってくれた。最後に、開発リーダーは一言。「花王には、すぐ近くに同じ志を持つ仲間がいて、健康や美容に関する取り組むべき無数のテーマと膨大なデータがあり、技術者として尊敬できる先輩もいる。仕事に飽きるということはないですね」と花王で挑戦を続ける意義を語ってくれた。

project_03_12

Page Top