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Introduction

花王は、洗剤などに用いられている界面活性剤の技術を用い、50年以上前から農業資材の開発、販売に取り組んできた。中でも、農薬を効率よく病原菌、害虫や雑草に作用させるアジュバント(薬効増強)技術を駆使した製品で国内展着剤市場でNo.1シェアを誇る。しかし、時代の変化とともに、農業や科学技術も進化し、農業資材に対する新たなニーズも生まれ続けている。そこで、今回はこうした時代の変化に対応しながら、花王の研究員や企画営業たちがどのように新製品を世の中に送り出し、広めているのか。世代を超えた4名の挑戦を軸に紹介していく。

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約9年の歳月をかけ、上市にたどり着く。

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世界的な課題である食糧生産性の向上や環境汚染の抑制に対して、農業の現場においては農薬の効果向上や減農薬化が求められている。そこで、花王でもアジュバント技術を進化させ、農薬散布時の液滴のぬれや浸透、付着、固着を制御し、農薬の効果を最大限に発揮させる新製品の開発に2010年から取り組んできた。しかし、そこから約9年。日本国内での上市までの道のりは決して平坦ではなかった。この新製品の技術開発を担当した先輩研究員はその苦労をこう話す。「まず、農薬と農作物の界面(性質の異なる2つの物質が接する境目)をぬらす技術の開発が大変でした。他社とは異なるメカニズムを発見しなければ、技術特許を取ることはできません」。結局、ぬれに関する基盤技術の開発だけで約3年を要すことになる。しかも、法律の関係上、日本での現場フィールドテストを行うことができないため、まずはインドネシアや中国といった海外でテスト及び製品化を目指した。その効果が検証できた後、満を持して日本での製品化に取り組むも、今度は製品のコストが課題となり、開発が中断。そこからまた約3年の歳月をかけて、低コスト化に向け、再び処方を見直すことになる。そして、2019年。念願の国内における上市。先輩研究員は喜びを語るとともに「ここまで時間がかかったもう一つの理由は花王の妥協しないモノづくりの姿勢があったから。安全性や品質に少しでも不安があれば、私たちは絶対に出しません。だからこそ、商品が世の中に出た時は本当にうれしかったのです」と語った。

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上司からメンバーへ。
受け継がれる、情熱。

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この機能性展着剤の新製品の上市に関しては、もう一人、先輩研究員とは異なる立場から大きく貢献した社員がいる。それが、今年入社30年目を迎える企画営業リーダーだ。彼はこの新製品の開発業務以外の仕事をほぼ引き受けていたと言っても過言ではない。製品コンセプトの設定に始まり、市場調査、開発の進捗管理や農薬の登録申請作業、製品パンフレットの作成に至るまで、すべて担当した。「苦労は数え切れません。効果を検証する園場試験は基本的に年1回しか実施できずスケジュール調整に追われましたし、生産者のニーズを研究員に伝えるため生産者の圃場まで連れて行ったこともありました。また、国内市場の上市では、どのくらいの価格であれば利用してもらえるのか。調査に調査を重ねましたね」と振り返る。さらに、「でもね、こうした挑戦ができるのは私たちの先輩が機能性展着剤の市場を切り拓き、地盤を築いてくださったから。生産者や代理店の花王に対する期待の大きさも小さくありません」と付け加えた。そして、このリーダーの情熱を受け注ぐのが、2020年に入社したばかりの企画営業だ。「じつは、入社直後にいきなり任された仕事が、この新製品の容器トラブルの改善対応でした。右も左もわからない中、自分一人で返品処理を行い、さらに早期改善に向け容器メーカー、工場及び研究関係者と原因究明と対策を講じ、トラブルを収束させました。ただ、あの1年のおかげで大きく成長し、お客様の生の声も数多く聞くことができたと思います」と打ち明けた。上司にあたる企画営業リーダーも「あの時は本当に助かったよ」と次世代の後継者を笑顔で労った。

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注) 本記事の写真は、いずれも撮影時のみマスクを取っています。

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入社1年目から、
中国市場での開発に挑戦。

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花王のアグリサイエンス分野において、先ほどの新製品の開発とともに、この10年の中でもう一つ代表的な事例を挙げるとすると、2016年に入社した若手研究員が1年目から取り組んだ新技術の開発がある。ここ数年、中国などを中心に農薬散布用のドローンが販売され、農作業の効率が大幅に向上したが、その一方で農薬の効果がトラクターによる従来散布時のレベルより低下しているという課題が生まれていた。そこで、花王でも、農薬量を増やさずにドローン散布時の農薬の効果を高める新しいアジュバント技術の開発を目指すことになった。担当した若手研究員は「どのような原因で課題が生まれているのか、その目で確かめる必要があり、入社1年目から中国を訪問しました。すると、やはり現地に行かなければ気付けなった原因が見えてきたのです」と当時の状況を説明してくれた。もう少し詳しく尋ねると、「ドローン散布の場合、気候条件により展着剤の性能にムラが出ていました。とくに低温時に固化しやすいという現象が起きていたのです」と教えてくれた。そして、その現象を防ぐため、彼が採用したのが、自分たちの持っているぬれの技術と、化粧品分野で肌の保湿のために使われている蒸発を防ぐ技術を組み合わせるというアプローチだった。「化粧品分野の研究員と連絡を取り合い、何度も実験を重ねました。社内にこうした様々な基礎技術があるのは、この会社の強みですね」。若手研究員の発想と行動力に花王の総合力が合わさり、新技術は2020年に完成。2021年、中国での上市も果たすことができた。

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それぞれの目標。
共通するスピリッツ。

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50歳を超えた研究員と企画営業リーダー、そして、20代の若手研究員と企画営業。今回のプロジェクトストーリーでは世代を超えた4名に登場してもらい、花王のアグリサイエンス分野における製品開発や海外展開の苦労ややりがいを語ってもらった。最後に改めて、この4名に今後の目標を尋ねると、先輩研究員は「これまで培ってきたアジュバント技術をさらに発展させ、まだ世の中にないような製品をつくりたいね」と年齢を感じさせない意気込みを語った。若手研究員は、「研究の仕事も楽しいですが、たとえば自分たちが開発したものをお客様に伝える技術営業のような仕事にも挑戦し、海外でも活躍してみたいですね」と幅広い好奇心をのぞかせた。さらに、企画営業リーダーが「地球上の人口が100億人になると言われる21世紀。食糧増産や環境保全は待ったなしの課題です。スマート農業に関するプロジェクトに挑戦してみたいですね」と語れば、メンバーである若手の企画営業も「スマート農業は私も挑戦してみたいと思っています」と呼応した。世代を超えて受け継がれる開拓スピリッツ。それが、花王のアグリサイエンス分野のさらなる躍進を支えていくに違いない。

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