くらしの現場レポート
2020.09.08
子どもが独立して二人きりになった夫婦や、ひとり暮らしのシニア世代にとって、ペットは癒しや安らぎを感じさせてくれる大切な存在になっています。その一方で、将来もペットの世話を続けることができるかという気がかりもあるようです。今回は、ペットと共に暮らすシニア世代のおもいや暮らしについて紹介します。
ペットを飼っているシニア世代にインタビューしたところ、ある80代夫婦は、夫が「猫がいてくれるだけで楽しい。ストレスもなくなる。」と話し、妻は「ペットの世話は、夫の良い運動になっている。愛情ある一面も見ることができて嬉しい。」と話してくれました。
また、ひとり暮らしの70代女性は、「猫によく話しかけているから、ひとり暮らしでも言葉がすぐに出てくる。猫のためにも健康でいたい。一緒に元気でいようねと思う。」と元気に毎日を暮らすモチベーションにもなっていました。
ペットと暮らすことは、世話のために体を動かしたり、家族・友人との会話のきっかけになるなど、健康の維持や生活の豊かさにつながっているようです。また、自分がペットから癒しを得るだけでなく、ペットが快適・幸せに暮らしていることが自分の幸せにもつながると感じているようでした。
●60代夫婦
猫がいることで夫婦の会話が増え、喧嘩が減った。(夫・67歳)
朝、猫に起こされるようになり、規則正しくなった。寝ているときも抱き枕のようで癒される。(妻・66歳)
●70代夫婦
子ども達が独立した後、猫が妻との会話のきっかけになっている。(夫・74歳)
帰宅すると迎えてくれ、しぐさの可愛さに癒される。(妻・71歳)
●80代夫婦
猫が幸せに暮らせるように世話をしている。猫も人間と同じように大切。(夫・83歳)
階段を昇り降りする猫を追いかけることは、夫のいい運動になっている。(妻・80歳)
一方、「最近、猫をシャンプーするときに腰痛になることがある。」(67歳・男性)、「自分がもっと高齢になっても猫の面倒をずっと見ることができるか不安。」(74歳・女性)といった身体的な負担や将来を心配する声もありました。
自分がいつまでも元気にペットの世話をできるかどうか。ペットを飼っているシニア世代にとって、飼い主とペットの「老老問題」は最も不安に思うことではないでしょうか。
思うように面倒を見られなくなったときのために、日頃から身近に頼れる人間関係を作っておくことや、ペットの一時預かり、ペットシッターの利用、里親を探してくれる民間サービスなどを調べて相談しておくことも重要です。
また最近は、飼っているペットと一緒に暮らせる民間の共生型老人ホームも増えています。中には、同居だけでなくペットの最期まで任せられる施設もあるようです。
ペットを終生、責任を持って飼育したいと思っているものの、いつまでも元気に世話をしてあげられるか不安に思うシニアにとって、いざというときの支援方法を知っておくことは、ペットと安心して過ごすためにも大切な備えになります。
ペットを飼いたくても難しい場合は、一時預かりのペットボランティアへの参加や、保護猫カフェの利用などで動物とふれあうこともできます。心を癒やしてくれ、生活に張り合いを感じさせてくれるペット。動物を慈しみ、ふれあいを大切にしながら、いつまでも健康でこころ豊かに暮らしていきたいですね。
調査概要
「猫といっしょに暮らす高齢者」
◎2019年2月/郵送調査/首都圏在住 猫飼育者30~80代/100人男女
◎2018年12月~2019年8月/家庭訪問調査/首都圏在住 猫飼育者30~80代/11世帯
「ペットのいる暮らし研究」
◎2019年9月/ペット共生型特別養護老人ホーム見学