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【本気の防災 Vol.1】ソーシャル・グッド・プロデューサー 石川淳哉さんに聞く
災害は必ず起こる!命を守るサバイブ術

2020.02.26 

災害は必ず起こる!命を守るサバイブ術

地震にスーパー台風…「災害は忘れたころにやってくる」のではなく、もはや、頻繁に、日常的に、広範囲に起こる時代に。今回は社会課題を、アイデアや人と人の力をつなぐ工夫・仕組みで解決するソーシャル・グッド・プロデューサーの石川淳哉さんに、東日本大震災や広域水害など大規模災害の復興に尽力したご経験から、災害を避けられない時代に生き抜くヒントをうかがいました。

ソーシャル・グッド・プロデューサーとは

Q.災害支援をされるようになったきっかけについて教えてください。

2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロの直後、当時の僕は広告業界にいて、「世界がもし100人の村だったら」という本の広告宣伝を担当していました。この本は、63億人の人々が一つの村になって、歌って踊る、助け合う世界を作りましょうと、世界の人々の相互理解、相互受容を訴えかける内容で、8か国語に訳し、大ベストセラーになりました。
 
この本との出会いがきっかけで、それまで大手企業の広告の仕事で、最大限の成果と称賛に執着していた人生観から、クリエイティブの可能性で、「ソーシャルグッド(社会貢献活動を支援・促進するサービス)」をプロデュースし、世界中の様々な社会課題を解決に導くことに目覚め、残りの人生を捧げる決断をしました。

ソーシャル・グッド・プロデューサー 石川淳哉さん

Q.ソーシャル・グッド・プロデューサーとはどのようなご職業でしょうか?

話は変わりますが、アムステルダムの空港では、男性用の小便器の中に小さなハエのシールを貼っただけで、皆、そこを目掛けて用を足すようになり、結果として掃除代が8割カットできた、という事例があります。このように、ちょっとしたきっかけを与えることで人に行動を促す手法を「ナッジ(nudge)」と言います。

防災も、そのためにわざわざ、ものをそろえたり、新しい、面倒くさいことを生活の中に実装しようとしても、なかなかできないと思うんです。こうしなければいけないって言われると、人はなかなか動けない。イソップ寓話の『北風と太陽』で言うところの太陽アプローチがこれからは必要だと思うんです。 それには、アイデアとクリエイティブっていうのが本当にこれからこそ必要で、それがソーシャル・グッド・プロデューサーである僕の仕事につながっています。

ソーシャル・グッド・プロデューサー 石川淳哉さん

災害関連死が直接死の4.4倍!?

Q.災害関連死を防ぐには何が重要でしょうか?

熊本地震の支援で現地入りした時、直接死が50人、災害関連死が220人と聞き、関連死の方が4.4倍もあることに非常にショックを受けました。
 
災害関連死を防ぐための三種の神器は「T=トイレ」「K=キッチン」「B=ベッド」と言われています。
 
中でも、災害時のトイレはどの被災地でも圧倒的に不足しています。トイレが汚ないと、感染症が起きたり、排せつ回数を減らそうと水分や食べ物を我慢したり、それが生活習慣病の再発やエコノミー症候群を引き起こします。トイレは必要不可欠なライフラインなんです。
 
そこで、人ひとりの命を大切に、災害関連死をゼロにすることを目指し、僕が取り組んだのが災害派遣トイレネットワークプロジェクト「みんな元気になるトイレ」です。

災害派遣トイレネットワークプロジェクト「みんな元気になるトイレ」

災害関連死をゼロにすることを目指して

Q.災害派遣トイレネットワークプロジェクトについて教えてください。

通常のトイレより1.5倍くらいの広さで、太陽光発電でLEDと換気扇装備。鏡も付け、化粧、着替え、授乳ができる。一人で泣けるみたいなプライベート空間までも含めたトイレを4室設置した移動車を作りました。
避難所には、本当にプライベート空間がありません。トイレなので長居はできませんが、ちょっと落ち着いて一人で考える空間にできたらいいなと思って。このトイレトレーラーで、各地の被災地に支援に行き、大変喜んでいただきました。
 
全国1741市町村に一台ずつ配備し、被災地に全国から速やかに派遣出来たら、災害時のトイレ不足問題は大きく解消できるはずです。現在、最小限の負担額で自治体で一台ずつ持てる仕組みを作り、所有する自治体も増え、助けあいのネットワークが広がっています。

気象クライシスという新たな脅威

Q.ここ数年の災害の傾向を教えてください。

昨年の台風のように、毎年あると思われる「気象クライシス」が新たな脅威となってきました。
 
その中で、事前に被害想定や避難の情報が出ていても、行動に移せないケースが多くみられました。例えば、2018年の岡山県真備の七月豪雨の時、大変な被害に見舞われ、51人の方がお亡くなりになりました。
 
ところが自治体は、事前に全戸に被害想定や危険地域を記載したハザードマップを配布しており、被害地域は完全に一致していたんです。それなのに犠牲者が出てしまった。どうして避難しなかったんだろう?かと。 

ソーシャル・グッド・プロデューサー 石川淳哉さん

「私だけは大丈夫」なんてありえない

Q.石川さんの昨年の台風でのご経験を教えてください。

昨年の台風では、僕は助ける側だと思っていたんですけど、実は自宅が被災しちゃったんです。河川敷近くの住宅街で、地下が全部水没。僕は事前に友人宅に避難していましたが、当日は避難指示が出て、緊急放水、放流をするアナウンスが流れたにも関わらず、住民たちは、みんな土手に様子を見に行っていたんだそうです。あと1メートル超えていたら、みんな死んでいたんです、もうね、緊急放流っていうのは、アウトなんだとわかる方がなかなかいないんです。
 
地震で被災した、福島のいわき市さえ、まさか雨でやられるとは現地の人も思っておらず、千葉も電柱が倒れ、ここまで広範囲に被害が拡大し長引くとは思っていなかったそうです。

「私だけは大丈夫」なんてありえない

なぜ、避難しないのか…そこには、ペットを飼っているから、高齢者で動きたくない動けない、なるべくなら避難したくないなど個々の事情や、予期しない事態に対峙した時「私だけは大丈夫」という正常性バイアスが働く心理状態があります。その理由を導き出して、それを解決する仕組みに自治体が手を出していないんですよね。
 
事前に情報を受け取っているけど、実行しないではなく、実行までしてもらうところが、僕は社会実装だと思うんです。受け手にアクションを促さない情報や商品はゴミになってしまう。
 
今、省庁、自治体、大企業、中小企業、ベンチャー、NPO、学校の先生、あと生活者、みんながこうした災害や社会課題に向かって、向き合っていく時代に来ていると思います。

ソーシャル・グッド・プロデューサー 石川淳哉さん

東京では500万人が避難所難民に!

Q.災害のために、備えるポイントを教えてください。

東京は首都直下型地震が起きると700万人の避難民が生まれると言われています。これはあまり知られていませんが、避難所の収容人数は約200万人。500万人をどうするかは、まだ誰も解決できていない状況にあります。そのため、多くの人は、自宅に住める場合は自宅で避難生活を送ることになります。
 
家庭の備蓄は、通常3日分と言われてますが、大規模災害の場合は、首都のあらゆる機能がマヒし、警察消防、自衛隊などの救助は難航、2週間以上かかると予測されます。そのため自宅で2週間もたせるケアが必要になってきます。

ソーシャル・グッド・プロデューサー 石川淳哉さん

◆そなえの極意1.自宅で2週間サバイバル

大切なのは、防災食だけでなく、健康を維持するために、2週間水が使えない時のトイレ、口腔ケアの用意です。日常の生活ができないと、途端に健康を害します。
日用品をちょっと多めにストックしておくローリングストックの他に、水を使わない携帯トイレなど、清潔で安全な状況を保つ準備がサバイブには必要です。
 
※ローリングストックとは、備蓄した食料を定期的に食べ、食べた分を買い足し、常に新しい食料を備蓄する方法。

◆そなえの極意2.近い疎開、遠い疎開

僕は、昨年の台風では、自宅が河川敷のそばにありましたので、事前に猫2匹と車2台と人2人を預かってくれる疎開先を用意してました。「避難指示出たから、一緒にお鍋でもつつこうよ」という実家やお友達を日頃から探しておくんです。これが近い疎開。
そして、地震の場合は長期に渡って、機能不全に陥るため、ちゃんとした生活ができそうな、ちょっと離れた地盤が安全な疎開先を西と東に1個ずつくらい見つけておく。これが遠い疎開。
どちらも、日常的に交流し、何かあったときはお互い受け入れてもらえるつながり、親交を結んでおくことが大切です。

災害は起きることを前提に、本気ですべて備える

人生に1回だけ、真剣に集中して、本気で2週間自宅で備える仕組み、生き延びる仕組みを考えて準備してください。自宅で生き延びる手法があれば、避難所でも使えるし、どこで災害が起きてもそれは使えますから大丈夫です。
普段の生活の中、重要なのは、真剣に準備した後はいったん忘れて楽しく過ごすことです。
災害のことばかり思い続けると負担なんで、1回準備して、あとは仲間と家族と幸せに過ごすのが一番いいですね。


日常の生活ができないと、人は途端に健康を害するということに改めて気づかされました。
日頃から、トイレや口腔ケアなどの清潔対策、いざという時に助け合える人と人とのつながりを大切に、
災害に備えた本気の防災が早急に必要であると感じます。

Profile

ソーシャル・グッド・プロデューサー/石川淳哉さん

ソーシャル・グッド・プロデューサー
石川淳哉(いしかわじゅんや)さん

1962年大分県生まれ。世界のさまざまな社会課題を解決するために、クリエイティブの可能性を追求する人生と決断。自宅に太陽光発電を導入、EV車にシフト。御殿場で400坪の完全無農薬野菜農園を仲間と始めた。防災士。
 
カンヌ国際広告賞金賞、NYADCなど受賞歴多数。主な仕事に、ベストセラー書籍『世界がもし100人の村だったら』、世界初「2002 FIFA WORLDCUP PUBLICVIEWING IN TOKYO」、ミラノ・ベルリン・ロンドン現在も世界中を巡回するピースアートプロジェクト「retired weapons」、100万枚突破アルバム「日本の恋と、ユーミンと。」、311 情報支援サイト「助けあいジャパン」、BMW次世代電気自動車i3の情報編集長。内閣府防災ポータル「TEAM 防災ジャパン」立ち上げ。講談社「FRaU SDGsプロジェクト」などのプロデュースがある。

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