達人コラム

スタイリスト 大山旬さん
できる男を演出する20代の着こなしとは

2020.04.07 

仕事も私生活も、ステップアップを目指したい20代。自己評価を高めてくれる外見づくりにも、大きな関心を寄せています。今回、お話をうかがったのは、ビジネスシーンで‟できる男”を演出するスタイリングを得意とする、スタイリストの大山旬さん。大山さんから見た今どきの20代男性と、彼らへのファッションアドバイスをいただきました。

情報感度が高く、「選び取る力」に長けた20代

今の20代は、いい意味で「意識が高い」世代。現場レポート『外見も内面も磨く努力 「できる男」を目指す20代男性たち』にもありましたが、身だしなみも生活もしっかり自己管理している人が多いというのが印象です。上の世代と比べて格段に情報感度が高いので、モノ選びに関しても、よく調べて自分が納得したものを選び取る能力が高い気がします。その傾向はファッションにも表れていて、お金をかけすぎることに疑問を持ち、コストパフォーマンスを重視する傾向があります。
わかりやすい例を挙げると、時計選び。今の40代、50代は、ブランドの時計にお金をかけてきましたが、今の20代は「そこにお金をかける意味が、よくわからない」という感覚なんだろうと思います。僕は30代後半なので、どちらの気持ちも理解できます。
 
20代の情報源として重要な役割を果たしているのが、YouTubeなどのSNSです。生活スタイルや働き方、そしてファッションにいたるまで、カリスマ性のあるインフルエンサーの意見はかなり影響力があります。例えば、どんなサプリメントを飲むかもそうだし、「ひげは永久脱毛がいい」という意見があれば、それに多くの人が同調したり。
最近はインフルエンサーの方々も得意分野で細分化されてきているので、ジャンルごとに参考にする人を選んで、自分の中に取り入れているのでしょうね。

身だしなみを整えることで得られるリターン

僕が20代の方たちに伝えたいのは、ビジネスにおいてもプライベートにおいても、身だしなみを整えることで得られるリターンは大きいということです。清潔感があり、服が整っていることで、周囲の反応はよくなります。そこから、生活の質の向上もあると思うし、ビジネスでも有利に働いたりします。
 
身だしなみの第一歩は、洗濯やアイロンがけなど普段のケアです。おしゃれかどうか以前に、身に着けるものがきちんと整った状態であることが基本です。そのために、衣類や靴のお手入れ方法を知り、普段から実践してみてください。そこを踏まえてから、着こなしをどうするか、という段階に入ります。

信頼感を演出する、クラシックな着こなし

社会人としてはまだ駆け出しの20代男性が、自分の理想とする働き方を目指して「実年齢よりも上に見せたい」願望をもつのは、自然な流れです。「将来的には仕事で独立したい」「いずれは転職したい」という今どきの希望ともリンクしているのでしょう。
そんな20代のビジネスマンに提案したいのが、クラシックな着こなしです。近年はクールビズなどが浸透し、オフィスでの着こなし全体がカジュアル化しています。しかし、ここはあえて、真逆のスタイルを取り入れてみてください。カジュアルであってもジャケットは着る、ネクタイを締める、など。クラシックな着こなしの方が、しっかりとした印象を与えやすいので、そこは意識した方がいいと思います。
 
クラシックなスーツスタイルを学ぶうえで、参考になるのが、ファッション雑誌です。同世代向けよりも、30代、40代のエグゼクティブ層を意識した雑誌がおすすめです。さらに大切なのは、情報を集めるだけでなく、実際に着てみるということ。価格のちょっと高いものや上質なものにも積極的に触れて、それを自分になじませていくという経験を、20代の早い段階からしていけるといいですね。
ビジネスの場では、同世代同士というよりは30代、40代など上の世代の方と仕事することが圧倒的に多いと思います。その世代の価値観に合わせていくことが、信頼を得る上で役立ちます。

スーツスタイル成功のカギは「サイズ感」と「基礎知識」

クラシックな着こなしを実践するときに意識してほしいのが、自分の体型に合った「サイズ感」です。今の20代は上の世代と違い、身長が高く、やせ型の人が多いので、サイズ感が難しいと思います。身長的にはLやXLだけど、やせているから身幅的にはMだったり、サイズ選びで苦労している人は多いのではないでしょうか。
 
自分に最適なサイズと出会うためには、店選びが重要です。身長が高くてやせ型の人は、一般的なスーツ量販店よりも若者向けスーツショップの方が、ジャストサイズの服を見つけることができます。また、セミオーダースーツという選択肢もあります。店舗で採寸を済ませたらスマホでいつでも発注できるなど、今はさまざまな新しいサービスが出てきています。しかも、値段もそれほど高くありません。こうしたものも活用しながら、自分に合ったサイズのスーツを身に着けましょう。
 
また、スーツスタイルの基礎知識を頭に入れておくことも大切です。例えば、真っ黒なスーツがトレンドだとしても、ビジネスの世界ではNG。ネイビーやグレーが間違いのない選択肢だと言えます。シャツだったらどういうものがオーソドックスなのかなど、基本的な知識は押さえておいてほしいと思います。

男性の美容も身だしなみの一つに

今の20代男性は、美容にも敏感です。スキンケアにとどまらず、メンズメイクも注目され始めています。現時点では、男性用ファンデーションなんて突拍子もないと感じる人も多いかもしれませんが、そのうち定着するのではないでしょうか? 
僕は仕事柄、新しい製品が出たらすぐに試していますが、20代の人たちはさらにハードルが低いでしょうね。皆さん、どんどんチャレンジすればいいと思います。そうすることで、「ここまではやり過ぎだから、このあたりで抑えておこう」といった自分なりの尺度が持てます。まずは全体の幅を知らないことには、そうした判断もできないでしょうから。今の時代、美容にもチャレンジしてみるくらいの頭の柔らかさは、ビジネスの世界でも必要だと思います。

目指すのは80点。残りの20点は「自分らしさ」で

多様化の時代ではありますが、信頼感を印象づけるスタイルや、好感度の高いスタイルには、一定のフォーマットがあります。まずは、その型にはまってみることで、80点の着こなしができます。その次のステップとして、個性だとか自分らしさを追求する段階に入っていけばいいんです。
 
第一線で活躍している方々は、残り20点のこだわりやセンスのよさが際立っていて、本当におしゃれです。そういう方たちに会うと、ひと目で「この人は仕事ができる」とわかります。そこまで到達するにはかなりの経験値が必要だと思いますが、20代前半でもそういう人はいます。見た目も含めて、感度の高さが伝わってきて、人間的にも成熟している。これからは、そんな20代がますます増えてきそうなので、僕としては楽しみでもあるし、とても期待しています。

Profile

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スタイリスト
大山旬(おおやましゅん)さん

株式会社SO styling代表取締役。日本最大級のファッション学習サイト「メンズファッションスクール」主宰。アパレル販売職、転職アドバイザーを経て2009年に独立。これまでに3000名以上のファッション改善を行う。おもに経営者・専門家に向けたスタイリングアドバイス、ビジネスにおけるキャリアアップを目的としたスタイリングを得意とする。著書に『男の服が人生を成功に導く』『服がめんどい―「いい服」「ダメな服」を1秒で決める』など。

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