達人コラム

生活・料理研究家 門倉多仁亜さん
自分が心地よく暮らせる家事スタイルを見つける

2019.03.19

自分にとって心地よい暮らしとは、「物も事もためこまないシンプルな暮らし」と語る門倉多仁亜さん。そのライフスタイルには、ドイツ人の祖父母や母から受け継がれた暮らしの知恵が息づいています。無理せず自然体で家事をこなしながら、心豊かに暮らす。その秘訣をうかがいました。

自分のしたい暮らしから、家事スタイルを考える

私がここ数年、特に思うのは、家庭での心地よい暮らしが、人生を豊かにしてくれるということです。我が家の場合、自分と家族が心地よく暮らすためにはどうすればいいのか?と考えると、やっぱり「家の中はきれいに整えておきたい」ということになります。自分や家族の幸せのためだから、家事も自然な事として気負わずにこなせるのかもしれません。

それでも、やっぱり「ちょっと面倒くさいな」と感じることもあります。そんなときは、家事をやり終えた後の心地よさをイメージすることで、気持ちを軽くしています。
まずは、自分自身がどんな暮らしをしたいかを考えて、そこから家事スタイルを導き出すのがおすすめです。そうすると、自分や家族に必要な家事のあり方がみえてきて、家事にストレスを感じることも少なくなると思います。

心地よさを追求したら、暮らしも家事もシンプルに

心地よいと感じる暮らしは人それぞれ。必ずしも丁寧である必要はないと思います。暮らしは日常の事なので、美しい理想を追い求めて無理しちゃうのは、ちょっと違う気がします。自分たち家族が無理をせずに、これぐらいが心地いいと思える到達点を、探り探り見つけていけばいいのだと思います。もちろん、物事によっては手を掛けた方がいいこともありますが、そこまでしなくても大丈夫なことも多いように思います。

私の場合、少ないエネルギーで、心地よさを維持できるのが理想です。だから、家事も大変と感じるほどためこまない。心地よさを維持できるくらいに、日々のルーティンにしてしまうと、結果的には家事の時短につながります。ダイエットだって、体重が大幅に増えてしまってからだと、減量するのが大変。それと同じことですよね。
 

素朴で温かみのあるデザインのミニほうきは、インテリアの一部に

家事は日常の事だから、楽しくできること、環境にやさしいことも大切だと考えています。私の家事を楽しむ秘訣は、道具選び。趣味の道具を選ぶように、家事の道具も選んでいます。例えば、お気に入りのデザインのほうきを使えば掃除は楽しくなりますし、自分の好きな香りの洗剤を使えば気分よく洗濯できます。最初は若干、探す手間やお金はかかるかもしれませんが、日常的に長く使う物だからこそ、自分の好みにこだわって選んだ物たちが、日々の暮らしに潤いを与えてくれます。

また、食料品や洗剤を選ぶときは、環境へのやさしさも意識しています。環境問題に関しては、ドイツ人の方が自分自身の生活に引き寄せて考えている気がします。環境にできるだけ負荷をかけない物を選ぶことも、自分の責任だと考える人が多いのです。そのために身近な人同士、自分たちでできる事は何か?ということをよく話し合っています。自分が理想とする暮らしについて、家族や知人と話し合うことは、自分のスタイルを見つけるヒントになります。話し合うことは、とても大切なことですね。

思いを伝え合って、家族のスタイルをつくる

家事は、家族みんなが心地よく暮らすために必要な事だから、家族で協力し合っていきたいものです。そのためにも、お互いの思いを伝え合う時間が持てるといいですよね。でも、面と向かって話し合おうとしても、意識しすぎてなかなかうまくいかないかもしれません。

我が家の場合は、週末に夫婦二人で1時間くらい散歩するのが習慣だった時期があり、それがすごくいい話し合いの場になりました。並んで歩いていると、日常的に思っていることがふと口をつくんです。お互い前を向いているから、思っていることを自由に話しやすい雰囲気にもなります。それに、外で運動しながらだから、お互いに気分よく話せます。共に暮らす家族だからこそ、他の誰よりも思いを伝え共有する必要があるのだと思います。それが、自分たちに合った家事スタイルを導き出すための最大の秘訣かもしれません。
 

暮らしは日々の積み重ね。だからこそ、無理なく自分らしくいられるスタイルが大切です。家族の思いを伝え合いながら、お互いが心地よく過ごせる暮らし方、自分がストレスなくできる、自分に合った家事スタイルを見つけ出しましょう。

【多仁亜さん流 家事スタイル】

「合理的」に「楽しみ」をプラス

ドイツでは、家事を仕事のようにとらえて合理的に済ませる人がとても多いと感じます。家の事はそつなくサラッとこなすのが理想だから、エプロンをするのもカッコ悪いと考えたり。
私自身、合理的な家事のやり方は参考にしていますが、そこまで割り切った考え方ではありません。家事も含めた暮らし全部が自分の生活だと思っているので、人生を楽しむためには家事も楽しまなくちゃと思っています。

「清潔」に気持ちよく暮らす

ドイツ人は結構きれい好き。汚れや菌はしっかりとりたいし、ニオイもかなり気にします。アイロンをしっかりかけた白い麻のテーブルクロスは、ドイツ人が重んじる清潔感の象徴。その感覚は、日本人に通じるものがあるかもしれません。
私も、洋服やリネン類はまっさらな状態をできるだけ維持したいから、洗濯ではきれいにしっかり洗いたいと思っています。お気に入りの洋服なら、なおさらです。自分も家族も気持ちがいいから、シャツやシーツ、枕カバー、エプロンなどもアイロンがけをしています。

  • 入居したときに設置されていたドイツ製のドラム式洗濯機。お気に入りの洋服はきれいに洗って長持ちさせたい

  • 洗濯物は、乾燥機ではなくリビングに大型物干し台をサッと広げて室内干し

  • アイロンがけを待つ洗濯物は、タイ旅行で一目ぼれした竹細工の籠の中に一時保管

  • 週に1回まとめてアイロンがけ。立ってテレビを見ながらかけると苦にならない

  • アイロンをかけたシーツでベッドメイキングをすると、気持ちも整う

Profile

生活・料理研究家かどくらたにあさんのお写真

生活・料理研究家
門倉多仁亜(かどくらたにあ)さん

1966年神戸生まれ。ドイツ人の母、日本人の父を持つ。父の転勤などで、日本、ドイツ、アメリカで育つ。幼い頃、ドイツ人の祖父母と暮らす中で自然と家事が身につく。国際基督教大学を卒業後、外資系証券会社に勤務。結婚後、夫とともにロンドンへ行き、「ル・コルドン・ブルー」にて料理を学ぶ。帰国後、料理教室を開始し、テレビや雑誌などでも活躍。著書に『タニア式 台所しごとがシンプルになるルール』『365日の気づきノート』『タニアの大切なものと長くつきあう暮らし』など。

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