幼少期、七五三をきっかけに着物に魅せられたみさまるさん。学生時代から本格的に着物に向き合い始め、現在はTwitter, InstagramなどSNSを中心に、和洋折衷にアレンジした着物スタイルを発信、若い世代や海外からも広く注目を集める彼女にとっての着物の魅力とは?
みさまるさんと着物の出会いはどのようなものだったのでしょうか。
「初めて着物を着たのは七五三の時。まっピンクの着物を着せてもらって”世の中にこんなかわいい服があるんだー”と思ったんです。もうそれからずっと着物が好きで」
「でも子ども心に着物って高いものっていう意識があって。だから、親にもねだれなかったんです。大学生になって、自分でアルバイトをしてお金を稼げるようになってから、リサイクル着物やポリエステル製の比較的安い着物を買うようになって、着物を楽しむようになりました」
こうして本格的に着物に向き合い始めたみさまるさん。おばあさんから譲り受けた着物を使って着物のアレンジをするようになったそうです。
「祖母に着物をもらった時は、和洋折衷コーディネートを試していた時期だったので、祖母の着物もスカートやブーツとあわせたりして自分らしくアレンジして着こなしを楽しみたいと思って始めました。昔から、祖母に着付けてもらったり、母が着せてくれたりしていたので要領を覚えていたのか、着付け自体は難しくなく、自分で着ることができました」
「でも着物は着こなしのハードルが高いかもと思っていました。というのも、揃えなくてはならないアイテムが、結構多いんですね。そのアイテムの名称も聞き馴染みがなく、私には少し難しそう、大変そうなのではないかと感じていました。それならば、手軽な自分が既に持っているスカートと合わせたり、靴も、草履ではなくスニーカーと合わせたりしてみるのはどうかなと思いアレンジをはじめました」
「着物を着ている時は、着物からパワーをもらえるんです。着物かわいいな!と思うだけで元気が出ますよね。それから、今日はいつもより襟の具合がうまく整えられた”とか”背中のシワがちゃんと取れた”とか、ちょっとずつ自分の成長を着付けの中で感じられるのが楽しいなぁと思います」
おばあさんの着物を着ると、世代を超えて同じものを身に纏っている嬉しさがあるのだとか。
「祖母の着物を着ていると、祖母の好みが着物に入っているので、それを受け継げたことが嬉しいなと思います。そこに自分らしいアイテムを取り入れてさらにアレンジすることで、その時代に合った着こなしや自分らしい着こなしができることが楽しいんです」
今回みさまるさんが選んでくださったのは、ご自身で制作されたというアイヌ紋様の着物。制作されたきっかけはなんだったのでしょうか。
「以前大阪で開催された“アイヌ文化フェスティバル”でアイヌ民族の方達とお話させていただいたのですが、そのときに見せていただいた着物が本当に素晴らしくて。皆さん一人一人、自分の着物の刺繍を手縫いされたというんです。その手作業の細かさに大変感銘を受けました。それで、私も真似したい!と思って作ったのがこの1着なんです」
そのアイヌ紋様の着物は、制作に2ヶ月をつぎ込んだそうです。
「自ら手作業で制作する過程において、手作業でしか出せない作品のオーラがあると実感しました。手作業で制作した着物の素晴らしさもですが、こうして長い時間をかけて作ったということも、大切に着て次の世代に受け継ぎたい理由のひとつですね」
この珍しい紋様にはちゃんと意味があるそうです。
「この模様は”アイウシ”という紋様で”とげ”を表しています。アイヌの方達は、体の外側から病気や悪いものが入ってくるというイメージを持っていて、それを防ぐための魔除の紋様がこのアイウシなんです。このアイウシを、外側と襟につけたのがこだわりです」
メインのハートのクローバーにもみさまるさんの想いが込められているそう。
「この波模様は、日本の古典的な青海波(セイガイハ)という模様で、”生活がおだやかになりますように”という意味の模様なんです。それを聞いて、すごく素敵な意味がある模様だなと思ったので取り入れました。四つ葉のクローバーは、みんなが幸せになったらいいなと思っていれました」
着物を着るハードルの一つに洗たくをはじめとしたメンテナンスの大変さもあるように思いますが、みさまるさんはどうされているのでしょうか。
「基本的には専門店でクリーニングしてもらうのが良いといわれてはいますが、なかには洗えるものもあり、私は自分でおしゃれ着洗剤と柔軟剤を使い洗っています。それくらい気楽に着てメンテナンスしていくことも、着物を楽しむコツの一つだと思っています」
“着物は着るもの、自由に楽しむもの“を信条に、日常で楽しめる着物のコーディネートをSNSにてシェア。着物オフ会も主催している。帯を巻かない室町時代コーデや、自ら文様を施した着物、正統派な着付けからゴスロリやパンクコーデなど幅広い着こなしが特徴。