
この記事の監修者
花王株式会社
石井 駿介さん

花王株式会社に入社後、肥満や脂質代謝に関する基盤研究を担当した後、機能性食品・飲料の商品開発研究に従事。現在は血流・睡眠・自律神経など生体の恒常性に関わるヘルスケア製品開発を行う。

寝つきが悪いとは、眠ろうとして横になっているが、頭が冴えてしまいなかなか眠れない状態のこと。ベッドに入ってから眠るまでにかかる時間が長くなるほど、寝つきにくさを実感しやすくなる。布団に入るたびに「今日もなかなか眠れない」と感じる日が続くと、不安も強まりやすい。
寝つきにくい夜は誰にでも起こり得るが、「日中に強い眠気が出る」「集中しづらい」「やる気がわきにくい」といった影響が続く場合は、不眠症の可能性も考えられる。
一時的な寝つきの悪さは、ストレスや生活リズムの乱れなどがきっかけとなり、環境が整うと落ち着くケースも多い。一方で、毎日のように寝つきの悪い日が続く場合は、早めに原因を整理して、睡眠の質を上げる習慣に取り組むことが大切。
寝つきの悪さは、「入眠困難」と呼ばれる不眠症の1つの症状。
不眠症は、「入眠困難」「中途覚醒」「早期覚醒」などの症状があり、それにより日中に不調が出現して日常生活に支障が出る疾患のこと。症状の現れ方は人それぞれで、寝つきが悪く、夜中に何度も目が覚めるなど、複数の症状が重なることもある。

単に夜眠れないことそのものよりも、その影響で日中の活動に支障が出るかどうかが重要。さらに、不眠の症状は常に一定ではなく、タイミングによって起こったり起こらなかったりするなど、個人ごとの傾向がみられるのも特徴。
寝つきが悪い状態が続くと、体内時計が少しずつ乱れる。夜になっても眠気が来なくなり、就寝時刻が遅くなる一方で、朝は強い眠気が残りやすい。
結果として起床がつらくなり、朝に起きられず遅刻が増えたり、強い疲労感から欠勤につながる場合もある。このような状態が続くと、周囲との約束や業務への影響も出てしまう。

寝つきが悪い日が続くと、身体の疲れがしっかり取れないまま朝を迎える日が増えていく。その結果、日中に強い眠気や身体のだるさを感じたり、頭がぼんやりして集中しづらくなったりする。
多くの社会人は朝の出勤時間が決まっているので、就寝が遅くなっても起床時刻を大きく変えられない。そうして睡眠不足が続き、疲労が少しずつ積み重なると、休日に長く眠って取り戻そうとしがちだが、そうすると体内時計がさらに乱れてしまう。
また、睡眠不足は自律神経やホルモンのリズムにも影響し、日中のパフォーマンスや免疫力の低下をもたらす。
寝室環境の中で優先して見直したいのは「光」。就寝前に強い光を浴びると、脳が活動モードに切り替わりやすくなり、眠気を促すホルモンであるメラトニンの分泌が抑えられ、眠気が起きにくくなる。夕方以降は間接照明に切り替えたり、照明を少し暗くしたりするのがおすすめ。

就寝前のスマートフォンも注意が必要。画面からの光に加えて、動画やSNSなどの情報の刺激も加わる。使用時間を決める、寝室に持ち込まないなど、ルールを決めよう。
睡眠のリズムの乱れも、寝つきの悪さにつながりやすい。仕事や予定で寝る時間や起きる時間が日によって変わると、体内時計がずれ、夜になっても眠気が生じづらくなる。まずは起きる時間を一定にし、睡眠のリズムを整える土台を作ろう。
睡眠のリズムを整える第一歩として取り入れやすいのが、起床後に朝日を浴びる習慣。朝の光は体内時計の基準点となり、夜に眠気が訪れやすくなる。

食生活の乱れも見直したいポイント。夕食が遅い時間になると、消化活動が続いたままになり、身体が休息モードへ切り替わりにくい。帰宅が遅くなる場合は、夕方に軽く食べておき、夜は量を控えめにする「分食」という方法もある。カフェインやニコチンの摂取も覚醒を続けやすくなるため、寝る直前での摂取は控えたい。

身体の不調も寝つきの悪さにつながる。肩こりや腰痛などの慢性的な痛み、体調不良や病気があると、横になっても違和感や不快感が続き、心身が緊張した状態になりやすい。
寝具を見直して身体への負担を軽減する、軽いストレッチで筋肉をほぐすなどの工夫をしよう。

ストレス・悩みなどのメンタルの不調も寝つきに関係する。
不安や緊張が強いと脳が興奮状態になり、布団に入っても考え事が止まらなくなる。さらに「眠れない」という意識そのものが不安を強め、悪循環に陥ることも。
対策としては、寝る前に刺激の強い情報や集中して頭を使う作業を避け、脳を徐々にクールダウンさせること。音楽やアロマ、深呼吸など自分に合ったリラックス法を習慣化し、寝る前のルーティンを整えることがおすすめ。

寝つきの悪化は、複数の要因が重なって起こることが多い。全てを改善しようと完璧を目指すより、できるところから整えていきましょう。特に光の調整は取り入れやすいためおすすめです。

夜にすっと眠るためには、寝る時間よりも毎日起きる時間を同じにすることが大切。
寝不足の日や休日もいつもと同じ時間に起きる習慣をつけると、体内時計が安定し、夜になると自然に眠気が起こりやすくなる。朝の習慣を整えることで、夜スムーズに眠れるようになる。

朝起きたら、まず光を浴びよう。日光を浴びると体内時計がリセットされ、日中は活動しやすくなり、夜は休息モードに入りやすくなる。
起床後に屋外へ出て、散歩をしながら自然光を浴びるのが理想的だが、カーテンを開けて室内に光を入れるだけでも良い。暗いままで過ごさないことが大切で、蛍光灯などの室内照明をつけた明るい部屋で過ごすだけでもリズムを整えやすい。
在宅勤務などで日中を室内で過ごす場合も、できるだけカーテンを開けて光を浴びる意識を持ちたい。また、朝だけでなく、日中も日光を浴びる時間が多いほど、夜に眠りやすくなる。

日中に適度に身体を動かすと、眠りにつきやすくなる。ウォーキングや軽い筋トレ、ストレッチなどで身体を動かすと、心と身体の緊張がやわらぎ、夜には自然な眠気を感じやすくなる。活動と休息のメリハリがつき、生活リズムも整いやすい。
ただし、就寝直前の激しい運動は要注意。身体が興奮状態になり、かえって目がさえてしまう場合がある。運動は夕方までに終え、夜に行う場合は軽いストレッチ程度にとどめるなど、時間帯を意識して取り入れたい。

カフェインには覚醒作用があり、夕方以降にコーヒーやエナジードリンク、濃いお茶を飲むと、夜になっても頭がさえやすくなる。寝つきを良くしたい場合は、昼過ぎまでの摂取にとどめたい。
アルコールは飲んだ直後に眠気を感じやすいが、夜中に目が覚めやすくなったり、眠りが浅くなったりするので、睡眠の質が下がりやすい。寝酒の習慣が続くと、自然な眠気が起きにくくなる可能性もある。

寝つきを良くするには、寝る1.5〜2時間前に入浴するのが効果的。
たとえば、22時にベッドに入る予定であれば、20〜21時頃までに入浴を終えておくのが理想的。このタイミングでお風呂に入ると、入浴によって一時的に上がった体温が就寝前にゆるやかに下がり、自然と眠りに入りやすくなる。
寝る前にやることをルーティン化すると、脳が「今から眠るぞ」といったような眠りに向けたスイッチが入りやすくなる。人間は同じ行動を同じ順番で繰り返すことで、何も考えずに身体が勝手に動くような状態になる。

たとえば、寝る前に歯磨きをする・照明を暗くする・深呼吸をするといった短時間でできることを就寝前の「儀式」として定着させることで、気持ちがふっとゆるみ、リラックスしやすくなる。また、毎晩同じ流れをくり返すほど、「これから眠る」という合図が脳へ伝わりやすくもなる。

寝室を「眠る場所」として脳に学習させることも重要です。ベッドの上で仕事や長時間の考えごとを続けると、「ベッド=眠れない場所」と脳が錯覚してしまいます。寝室では眠りにつながる行動だけを取るようにしましょう。

寝つけない時は、目もとを蒸気でじんわり温めるのがおすすめ。あたたかさが伝わると心と身体の緊張がゆるみ、自然な眠気を感じやすくなる。
蒸気温熱は、乾いた熱よりも肌を広く深く温めることができる。約40℃前後の温度で目もとを温めると、副交感神経の活動が優位になり、身体が休息モードへ切り替わりやすい。

蒸気温熱で目もとを温めることは血行のサポートにもつながる。血の巡りが良くなると手足の先の皮膚温度が上がり、身体の熱が外へ逃げやすくなる。体内の深い部分の温度がゆるやかに下がり始めると、眠気が起こりやすくなる。

就寝前に蒸気で目もとを温めた場合、入眠までの時間が短くなったという報告もある。数週間続けた試験では、寝つきや睡眠の質の向上に加え、朝のすっきり感や日中の気分の改善がみられたというデータも示されている。

首の後ろや手足を温めるのも効果的ですが、アイマスクなどで目もとをやさしく覆うことは、光が入りにくくなり、視覚から入る刺激が減ることもメリットです。脳が受け取る情報量が少なくなり、考えごとが落ち着くことで、眠りやすくなります。