達人コラム

スタイリスト 地曳いく子さん
グレイヘアにするなら、メイクや服選びも変えて

2019.11.19

大人の女性にとって、白髪との付き合い方は大きな問題。最近は「グレイヘア」という言葉も浸透し始め、「おしゃれなグレイヘア」も選択肢の一つとなってきました。ご自身も「白髪染めではない方法を模索中」というスタイリストの地曳いく子さんに、髪色との付き合い方についてアドバイスをいただきました。

グレイヘアへの移行期を、どうするか

私自身は今年、還暦を迎えました。映画もシニア料金になったので、一度グレイヘアを目指してみるのも面白いかなと思って、現在、白髪染めを使わない方法を模索中です。

まだ50代のときは体や雰囲気が若いし、心が髪色の変化についていかず、黒髪への未練もありましたが、今から10年後の70代なら開き直って年齢相応の美しさを目指せそうです。くらしの現場レポート『隠さずに、白髪を活かす選択 グレイヘアだからこそ大切にしたいこと』でもお手本にしたい素敵な70代の方がいましたね。問題なのは、染めていた髪をグレイヘアまでにもっていく移行期。まさに今、そこで試行錯誤しているところです。

特に60代は、物理的、経済的、肉体的に大きな変化が押し寄せてくる年齢です。今までのお仕事を辞めたり、親の介護が始まったり、孫の面倒をみることになったり。同時に、体力が落ち、太りやすくなり、体が重力に負けて、顔も胸も下がってきちゃう。その上、グレイヘアにすると、年齢より老けて見えてしまいがちです。

美しさを維持するには、手間をかけるしかありません。グレイヘアを目指すことで、現状維持へのハードルが上がるということを認識しておく必要はあるでしょう。
 
グレイヘアへの移行期は、年齢相応よりも年上の扱いを受ける覚悟もしておきましょう。私もグレイヘアを目指すようになったら、電車で席を譲られたり、今までため口だった人から敬語で話しかけられるようになったり(笑)という変化がありました。

美しい髪。最大のポイントは「艶」

大人の女性の髪を素敵に見せるには、ヘアスタイルやコシ、ボリュームも大切ですが、もっとも重要なのは「髪の艶」だと実感しています。毛髪が黒色・茶色のときはそこまで目立ちませんが、白髪が目立ち始めたら、艶がない髪は貧相に見えてしまいます。グレイヘアを目指すなら、艶を出すことが重要課題なので、いざ「グレイヘアでいこう」と思ったときには、髪が傷んでいたり切れ毛がひどくなっていたり、とならないようにヘアケアをしておくことが大切だと思います。

「白髪になじむ髪色」も選択肢の一つ

私の場合は美容師さんに相談しながら、第一段階としてハイライトのメッシュを入れて、白髪と他の髪色がなじむようにしてみました。その後、白髪染めではないヘアカラーを上に乗せているのが今の状態。これだと、「それ白髪なの?ハイライトなの?」と、わからないでしょ(笑)。
 
今は、カラーリンスやカラートリートメントなど、手軽に使える商品も充実しているので、しっかり染めているわけでもなく、白髪のままでもない髪色にすることが容易にできます。グレイヘアへの移行期は、「白髪はあるんだけれど、なじんで見えるような髪色」というのも、選択肢に加えてみてはどうでしょう?

<グレイヘア変遷>

1.白髪染めで完全に染めていた頃。

2.白髪染めを使うことをやめて、染め色が抜けてきた頃。

3.ハイライトを入れ、白髪をなじませた頃。

4.現在、白髪はあるもののなじんで見える髪色に。

髪色が変わると、似合うメイクや服も変わる

グレイヘアはもちろんのこと、髪色が変わると似合うメイクや服も変わります。メイクに関しては、まずはアイブロウカラー。私の場合、かなり髪の色を薄くしているので、薄いブラウン系でも、実際に眉を描くと濃く感じてしまいます。それで、海外に行ったときに、日本で売られていないような明るい色のアイブロウを買ってきたりします。海外では金髪の人もいるので、薄い色が充実しているんです。後は、きちんと眉を描いてアイラインを引かないと、顔がぼけてしまうので要注意です。
 
服に関しては、黒髪のときは全身黒でコーディネートするとロックっぽかったのに、グレイヘアで黒い服だとへんな風格が出ちゃったり(笑)。それまでおしゃれに見えたベージュ系やカーキ色が、グレイヘアで着ると老けて見えてしまう、という発見もありました。これまでの髪色と違った印象に見えることがあるので、「今まで通りにはいかないぞ」と覚悟しておいた方がいいですね。

おしゃれも美容も、余力を残すことがコツ

さらに言えば、完全なグレイヘアになった場合、自分が30代の頃に着ていたような若作り服は確実に似合わなくなります。20代30代は、若いというだけでファッションもある程度ごまかせるのですが、40代を過ぎると性格もファッションもアクが強くなってしまいがち。まずはそれを認めることが大切です。

大人の女性が陥りやすい罠は、自分が全盛期頃のファッションスタイルを目指して、同じ服やヘアメイクにした結果、かえって古く見えてしまうこと。好きなスタイルを貫くのはいいのですが、今の時代に沿った自分好みのスタイルを目指しましょう。
「若作りではなく、気持ちが若い」ということが素敵の秘訣。今はテクノロジーもどんどん進化している時代です。新しいものに興味を持って、今どきのスタイルをうまく取り入れて。ヘアメイクでも洋服でも、こうした進化を味方にしている人がかっこいいと思うんです。

「進化を味方に付ける」といっても、自分ができる範囲でアップデートすればいいんです。そのためにも、余力を残しておくことが大切。今までやっていたけれど、やらなくていいことはやめて、今やらなきゃいけないことだけをする。おしゃれも10割を目指そうとすると余裕がなくなるので、アップデートできなくなります。
 
今の時代は完璧を目指すのではなくて、2~3割余力を残して次に行く。それが、おしゃれでも美容でも、素敵に見せるコツだと思っています。

Profile

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スタイリスト
地曳いく子(じびきいくこ)さん

1959年東京生まれ。数々のファッション誌で30年以上のキャリアを誇り、数多くの女優のスタイリングも手がける、‟大人の女性”の服選びの第一人者。スタイリングのみならず、洋服のプロデュースからTV、ラジオ、講演など幅広く活躍中。主な著書に『買う幸福 おしゃれ人生見直し!捨てるためにひとつ買う』『おしゃれは7,8割でいい』『ババア上等! 大人のオシャレ DO! & DON’T!』 ほか。

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